2016年12月26日月曜日

選挙の行方はSNSが左右し、SNSで予測できる?



https://www.donaldjtrump.com/

2016年、アメリカ大統領選挙の結果予測を大手メディアがことごとく外したことが話題になりました。日本では通常メディアは候補者や政党に肩入れしていないことが建前ですから、支持を表明したりしません。
先の東京都知事選では、メディアの不偏不党ぶりの報道、そして与党の支持とは対照的にに、ネットやSNSでは小池百合子さんの話題が圧倒していたので、私は「都知事選をソーシャルメディアやネットから見た風景は、圧倒的に小池百合子さんだった」を書きました。


アメリカ大統領選挙で、世論調査や統計学が敗北したのか?


今回の大統領選挙ではアメリカのメディアのみならず、天才統計学者と呼ばれるネイト・シルバー氏も外してしまいました。ネイト・シルバーは、2018年の大統領選では50州中49州を、2012年の大統領選では50州すべての結果を的中させました。
それが2016年の予測では、大ハズレだったのです。


得票数ではクリントン氏がトランプ氏を、290万票も上回りました。ところがアメリカ大統領選挙の選挙人という仕組みで、ヒラリー氏が破れたのです。
クリントン氏、史上最も得票した敗戦候補に 290万リード
ただもちろんネイト・シルバー氏や大手メディア、世論調査会社は、そんな選挙制度を踏まえた上での予測です。

このことをエコノミストの伊藤洋一氏は、こう書かれています。

恐らく今回の米大統領選挙でクリントン氏以上に負けを認めなければならないのは、投票当日の朝まで「クリントン氏の圧倒的勝利」を予測し続けた、米国のマスコミそして世論調査会社だ。人材、装置などで十二分な情報収集能力とインフラを持ち、圧倒的な世論形成力を持つと思われていた三大テレビネットワーク、CNN、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの既存メディアが、これほど惨めな負けを経験したのは、米国の歴史上これまでなかったことだ。

金融そもそも講座 


トランプ氏本人は、勝因をソーシャルメディアの活用だと語る


こちらの記事では、ソーシャルメディアのエンゲージメント比較すると、トランプ氏はヒラリー氏を圧倒していた。その大きさは、映画「君の名は。」や「シン・ゴジラ」の数百倍の規模だといいます。
【検証】本当にトランプは、SNSで選挙に勝ったのか?

しかし話題になったから、それがどう投票行動に結びつくのか。選挙権を持たない人もいるだろうし、ネガティブな反応も少なくない。トランプ氏のTwitterでの炎上ぶりは、目を見張るものでした。賛否が拮抗するテーマでは炎上が起こりやすいものです。
炎上マーケティングといわれるものは、ECサイトへのアクセスを激増させると、“買う”人も増えるというもの。手軽な価格のものなら、そういう方程式も成り立つと思いますが、ことは選挙です。どれほど結びつくのでしょうか。

同じことを、先の都知事選でも思いました。「都知事選をソーシャルメディアやネットから見た風景は、圧倒的に小池百合子さんだった」でも書きましたが、「ポジティブ/ネガティブに関係なく、ツイート数の多さと支持の大きさは連動する傾向にあることが、弊社の過去の分析経験から分かっています」と言っている会社があるのです。

そう言われても半信半疑。ただYahoo!リアルタイム検索などを見ても、ネガポジ判定はいい加減なものです。そもそもアルゴリズムでポジティブ/ネガティブをきちんと解析できないなら、エンゲージメントか言及数、つまりは話題の大きさで判断するしかないはずです。

世論調査が外れたのは、トランプ支持をおおっぴらに表明できないものだ。隠れトランプが大勢いたという分析も少なくありません。
しかしSNSでも誰もが正直だとは限りません。やっていない人だっているのですから、ソーシャルメディアを調べたとしても、最初から大きなバイアスがかかっています。



事前に大統領選結果を的中させたのは、AIによるSNSスキャン


世論調査や統計学が敗北したといわれる今回の大統領選で、的中させたとされる予測を出したのは、私が探せた範囲では南アとインドのAIでした。

ひとつは公的機関やピザハット、ウーバーなどから依頼を受け、ソーシャルメディアに表れる市民感情をリアルタイムに追跡している南ア・ケープタウンのソフト会社「ブランズアイ」。この会社はAIを駆使してソーシャルメディアを追跡。
分析は人間の手で進めたということなので、ネガポジ判定はかなり正確かもしれません。CNNに書かれています。

ツイッターを中心に400万人からの投稿3700万件を収集した。分析の結果、クリントン氏への反感とトランプ氏への強い支持が多数を占めていることが分かったという。
大統領選の集計と照らし合わせると、11カ所の激戦州のうち9カ所で予想が的中した。

トランプ勝利的中、予測の鍵はSNS上の感情 南ア企業


もうひとつは、インドのジェニック・エーアイ社が開発した人工知能「MogIA」。グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブといったプラットフォームから2000万以上のデータポイントを分析。今回の共和党と民主党の各大統領選候補者を選ぶ予備選挙の結果を含め、大統領選関連の過去4回の選挙で、MogIAは結果を正確に予測していたそうです。

トランプ氏勝利を示すデータの一例として、ネットユーザーのエンゲージメント(トピックに対する関わり)の比較で、バラク・オバマ氏が初当選した2008年のピーク時より、今回のトランプ氏が25%も上回っていたとのこと。

インド発のAI、トランプ勝利を10日前に予測

上の引用はNewsweekからですが、こちらでは「(MogIAは)候補者について投稿した人々の感情を理解することはできません。人が候補者を支持するか反対するかはわかりません」とあります。ジェニック・エーアイ社のCEOの言葉からすると、トレンド性が鍵のようです。

MogIAの分析が当たったのなら、ソーシャルメディアでのエンゲージメント。ブランズアイの分析が正しいのであれば、ソーシャルメディア、特にTwitterでの感情表出と選挙結果には、偶然ではなく正の相関関係があると言えそうですね。



反応がある前提として、まず注目。注目とは焚き火であるという本「ATTENTION」。
トランプ氏はこの本でいうところの即時と短期の注目には成功しました。






2016年12月14日水曜日

DeNAキュレーションメディアの問題は、Googleの敗北でもあるんじゃないのと





10月の末、SEOの専門家が「死のうとしている人から搾り取るなよ」とツイートしたことから、DeNAキュレーションメディアの問題点が次々に表面化しました。
[死 にたい]でSEOされたwelq(運営:DeNA)の大きな問題

WELQ(ウェルク)とは、DeNAが運営していた「ココロとカラダの教科書」というサイト。ところがその内容は、普通の医療関係者なら怒るぜと、美容皮膚科の院長が告発するレベル。

WELQは医療関係者に監修されていないばかりか、引用やパクリを元にしていたことも指摘されました。他のサイトからの転用を指示するマニュアルがあったり、WELQ以外のサイトでは記事量産の手法も暴露されています。

DeNAがやっていたことは、ココロとカラダに関する有益な情報を広めて行こうとしたのではなく、検索されたときに上位に来ることで、広告収入を得ようとしていただけなのは明らかです。その手法があまりにも度を超したもので、しかも健康や命にかかわるものだから、多くの人の怒りを買い炎上し続けています。

医学部卒のライター朽木誠一郎さんは2015年4月に、今回の問題を予言するようにこんな記事を書かれています。

しかし、どうしてこんなキュレーションメディアが検索上位に来てしまうのでしょうか。Googleはユーザーにとって役に立つサイトを検索上位にするために、これまで様々な施策を実施し、アルゴリズムを進化させてきたはずです。
DeNAのキュレーションサイトが大きな騒動になったのは、医療情報やセンシティブな問題を扱ったからだけでしょうか。
DeNA的なSEO手法が通用するなら、医療やセンシティブなジャンルを扱わずに手法をマネればいいと考える人は少なくないでしょう。それがまかり通れば、Google検索の信頼性は急速に失われてしまうかもしれません。


貼り合わせたり、パクった文章をGoogleは見抜けない?


かつてブラックSEOとしてワードサラダという言葉が、一部で流行しました。それほどワードサラダを使ったブログやサイトがあふれたのです。
nikkeiBPnetの時代を読む新語辞典には、2007年に「ワードサラダ」について書かれています。プログラムで自動生成される文章で、人間が読むと支離滅裂。でもロボット型検索エンジンには見抜けないことが多いと書かれています。もちろんGoogleは、品質に関するガイドラインとして「自動的に生成されたコンテンツ」という項目をもうけています。

自動生成コンテンツの例としては、次のようなものが挙げられます:
  • 自動化されたツールで翻訳されたテキストが人間によるチェックや編集を経ず公開されたもの
  • マルコフ連鎖などの自動化されたプロセスを通じて生成されたテキスト
  • 自動化された類義語生成や難読化の手法を使用して生成されたテキスト
  • Atom/RSS フィードや検索結果からの無断複製によって生成されたテキスト
  • 複数のウェブページからのコンテンツに十分な付加価値を加えることなくそれらをつなぎ合わせたり組み合わせたりしたもの
今回のDeNA的な手法は、人間の手が入ったものだから自動生成ではないです。この中に「翻訳されたテキスト」と出てきますが、Google翻訳もかつては支離滅裂でした。ところが最近ニューラル機械翻訳になって、従来のパーツごとから文章全体を一気に翻訳するようになって、人間のような自然さに近づいたと言われています。
今回の騒動では、投資家・山本一郎さんのちょっと思わせぶりなツイートもあります。



低品質なサイトも、Googleは見抜けない?


自動生成がガイドラインに抵触するだけではなく、日本では2012年からパンダアップデートが行われています。Googleのウェブマスター向け公式ブログには、2012年に「良質なサイトをつくるためのアドバイス」が書かれています。
そこには「Googleが実際にアルゴリズムで使用しているランキング シグナルは公開できません。検索結果が操作されるような事態を防ぐためです。代わりに以下の項目をご覧頂くことで、Googleがこの件をどうとらえているのか、ご理解頂けるのではないかと思います」とあり、24項目の質問が書かれています。
そして「これらの質問から、Googleが良質なサイトと低品質なサイトとを見分けるアルゴリズムをいかにして書こうとしているのか、ご推察頂ければ幸いです」とあります。
そこからいくつかピックアップしてみます。

  • あなたはこの記事に書かれている情報を信頼するか?
  • この記事は専門家またはトピックについて熟知している人物が書いたものか? それとも素人によるものか?
  • サイト内に同一または類似のトピックについて、キーワードがわずかに異なるだけの類似の記事や完全に重複する記事が存在しないか 
  • この記事は独自のコンテンツや情報、レポート、研究、分析などを提供しているか?
  • 同じ検索結果で表示される他のページと比較して、はっきりした価値を持っているか?
  • コンテンツはきちんと品質管理されているか?
  • 次のような理由で個々のページやサイトに対してしっかりと手がかけられていない状態ではないか?
     コンテンツが外注などにより量産されている
     多くのサイトにコンテンツが分散されている

  • 記事はしっかりと編集されているか? それとも急いで雑に作成されたものではないか? 
  • 健康についての検索に関し、あなたはこのサイトの情報を信頼できるか? 

抜粋した質問からすれば、DeNAのキュレーションメディアが検索上位に来るわけがないですよね。確実に、引っかかって低品質サイトと判断されると思うのですが。
Googleを揶揄するために書いているわけじゃありませんが、生真面目にGoogle対策していた人たちからすれば、なんだよ。まったくチェックされていないじゃん、となりませんか。

DeNAの問題が大騒動になって、他の大手キュレーションメディアなどでも閲覧できなくなったものがあります。それはGoogleによるペナルティではなく、社会的な問題化を避けるためだと思います。


NEVERまとめの作成者に「オーサーランク」を適用するLINE


著作権問題でずっと以前から問題になっていた、元祖キュレーションメディアNEVERまとめ。運営するLINEの上級役員が、12月5日に質の向上を目指す新方針を発表したそうです。

これによると、新方針は2つ。ひとつは「まとめの作成者にオーサーランクを適用」、もうひとつは「一次情報発信者の権利保護」。読むと、ほぼ不可能なんじゃないかという気がします。
オーサーランクとは、著者への評価。誰が書いているのか、どれほどの専門性を持っているかというところを問います。そのやり方は、◯LINE IDでの認証 ◯作成者の経歴、背景などを審査し ◯ランクに応じて上位表示、高インセンティブレートというのですが、そのそもLINEがLINE IDに紐づけされる作成者の情報なんて持っているのでしょうか。

一次情報発信者の権利保護というのも、「サイト単位で一次コンテンツのオーサー登録」ということで、詳しくわかりませんが、権利者がオーサー登録する必要があるということでしょうか。


誰が記事を書いたのか、わかっていないGoogle


オーサーランクは、2012年にGoogleが本導入したGoogle+と紐づいた作成者情報です。検索結果に作成者の名前や顔写真などを表示するとともに、検索ランキングにも影響を与える評価要因だとしていました。
ところがもう「記事がだれによって書かれたかをGoogleは認識しておらず、コンテンツ品質の評価要因にもしていない」というのです。

作成者情報プログラムも廃止されたということですが、現時点でGoogleにログインして検索すると、Google+のサークルに入れている人の作成者情報は出てきます。
ともあれ、そんなことよりも誰によって書かれたかを認識していないというのは、驚きです。だとすれば、パクられたのかオリジナルなのかは判定できないのでしょうか。

同じ海外SEO情報ブログで鈴木謙一さんは、上の記事の前に「誰が書いたかをGoogleは認識できているふうではなさそうです」と書かれています。

Googleジョン・ミューラー氏からの回答として、こうあるのですが。
どの人がどの記事を書いているかをわかっているということでもない。
しかしウェブの複数の場所で同じ記事をもし発見したなら、どこで初めに投稿されたのかを上手に判断できる。
つまりどちらが先か、タイミングは把握しているということですね。
以前にも書きましたが、記事を丸ごとパクられたことがあり、そのサービスを運営する大手企業に連絡を入れたのですが、返信すらありません。Googleで検索すると、下位ですが出てきます。
私の想像では、同じ記事が出ている。Googleは両方把握しているが、同じ著者が両方に書いたものか、それとも一方はパクったものなのか判断できていない。のだと思います。

つまりはパクられるのを防ぐことはできない。パクられたら著作権を侵害するものだと、自分でGoogleに申請する必要がある。そのためには想定されるキーワードで検索し続ける必要があるということ、ですよね。そんなバカな。


このことがやっかいなのは、たとえば企業がコンテンツマーケティングをする。パクられたり、引用されたりして、そのブラックなサイトが自社サイトよりも上位に来るを阻止するには、常に発見することを行って、Googleに申請しなきゃいけない。
そして、もしかすると設定したキーワードを使い、DeNAの手法に学びコンテンツを量産しなきゃいけないのではないだろうかと、バカバカしい想像をしてしまいます。
もちろんドメインのパワーがあるはずですが、Googleのアルゴリズムが飛躍的に進化しないかぎり、従来の検索結果はあてにならなくなるかもしれません。


Google検索は、大きな岐路に立たされている?


Googleの苦悩を推測できるような新機能を提供し始めたようです。アメリカのみ英語表記のみ、iPhoneとAndroidアプリのみということです。

ハーバード大学医学大学院やメイヨークリニックと連携して症状検索カードを作成し、通常の検索結果の上に表示するようです。
権威ある機関と連携してということですから、オーサーランクの進化した形と言えなくもないと思いますが、結局は作成者を特定することが、有意義な検索にする早道なのではないでしょうか。カードがまず出てくるなら、ネット検索ではなく医療辞書検索ですよね。ネット社会以前、ほとんどの人は気になる症状があると家庭の医学的な本をめくっていました。

アメリカでの評価だと考えていいと思いますが、症状検索を始めた背景は、こういうことのようです。
グーグルは、「健康問題」を抱えている。医学的症状に関する検索結果はお世辞にも「とても便利」とは言えず、多くの場合で不安になるほど的外れで、患者や医師にフラストレーションを与えてきた。
アルファベッド傘下のグーグルはその治療法を開発したと述べた。同社は20日、「症状検索」と名付けた新機能の提供を開始した。

遅かれ早かれ、医療情報以外でも必要になりそうです。






2016年11月30日水曜日

ソーシャルメディアが加速させる、ファッション業界のシステム崩壊


TOM FORD


9月7日(日本時間では9月8日)トム・フォードは、2016-17年秋冬コレクションをライブストリーミングでニューヨークから世界に向けて配信。そして配信終了後にショップに行くと、見たばかりのコレクションが販売されているという“SEE NOW,BUY NOW”をやったというのです。

トム・フォードは、サンローランおよびグッチグループ全体のクリエイティブ・ディレクターを歴任したハイファッションの代名詞的デザイナー。ラグジュアリーファッションすぎて、あまり一般的ななじみはありませんが、六本木など一部地域や芸能人には高い人気があります。またパクリまくられることでも有名です。


トム・フォードは、どうして“SEE NOW,BUY NOW”に行ったのか


その動機はAFPによると、「世界は”immediate-即座“という考えが増えました。現在のコレクションの発表方法は、発表してから実際に入手できるまで約4カ月の期間が必要で、それは時代に沿った考えとして理解ができない状況になっていると思う」とのことです。
「トム フォード」コレクション発表後すぐ発売スタート


いろいろ書くよりも、この動画を見てください。ショーの前日、VOGUEのインタビューに答えています。See Now Buy Nowだけではなく、ソーシャルメディアの影響やインターネット後の世界についても率直に語られています。

トム・フォードが語った、最新See Now Buy Nowコレクション。





「業界のイベント」から「消費者志向のショー」に変更したいCFDA


今年の1月、WWDにこんな記事が出ていました。アメリカファッション協議会(CFDA)は「シーズンの半年前に、エディターやリテーラーなど限られた観客を対象にランウエイショーを行い、消費者がそのアイテムを手にするのは半年後、という現行のファッションシステムはもう崩壊している」と考えているというのです。


ダイアン・フォン・ファステンバーグCFDA会長は、「デザイナーからリテーラーまで、あらゆる人たちが、ショーについての苦情を申し立てている。ソーシャルメディアが発達したため、人々は混乱しており、現行システムがどうにも機能しないようになった」と述べる。「消費者がインスタグラムやウェブサイトで見た服を買いにショップに行っても、6カ月待ってくださいと言われてしまう。もうこれからは消費者優先のショーにした方がいいと、誰もが考えているのではないかしら」。


CFDAはボストン・コンサルティング・グループに、将来のファッションショーの在り方を明確にするための調査を依頼したとも書かれています。
未来のファッション・ウイークは「業界のイベント」から「消費者のイベント」に!?


その調査結果や提案が、BCGから行われる前に、トム・フォードは先駆けてやってしまったというわけですね。
ただWWDの記事にもあるように、システムは崩壊していないと考える人も少なからずいるようです。ラグジュアリー顧客は「待つことを楽しむ人もいれば、先行プレビューを見て、先に手に入れる特権を欲しがる人もいる。誰もが春の服のランウエイショーを2月に見て、それを2月に買いたいと思うかというと、それは疑問だ」という意見も。

どうなんでしょうか。日本ではラグジュアリーブランドではなくても、先行予約会なんてことを多くのセレクトショップなどでもやっています。母集団が少なくても、人とは違うものを買いたいというクラスターには、有効な方法だという気がします。数量限定発売などで行列ができる現象も、同じことだと思います。

もうひとつ、トム・フォードに限らずラグジュアリーブランドがショーを行うと、必ず模倣される。ハイファッションの傾向がトレンドの幹をつくるのですから、当然パクられてしまいます。ディテールレベルだと、すぐにファストファッション化されてしまいます。できるだけ回避するためにも、デザイナーの側からすればSEE NOW,BUY NOWでやりたいと考えるのが自然な流れではないでしょうか。



「消費者志向」とは、タイミングを合わせることだとしたら


「業界のイベント」とは、バイヤー、プレス、ショップなど関連業界に向けたプレゼンテーションで、受注・生産のためのお披露目会のようなもの。それが「消費者志向のショー」になるとどうなるでしょうか。

CFDAの会長はアポイントメント制プレゼンテーションなどで、リテーラーやプレスには半年前にコレクションを披露し、受注するというやり方もありで、「そしてオン・シーズンになってから、消費者を招いたランウエイショーを大々的に開催してショップに並んでいる商品を披露すれば、ソーシャルメディア現象の恩恵を丸ごといただけるわ。現行システムで得をしているのはコピー業者だけよ」と考えているようです。

情報の流れ・拡散のピークだけで考えれば、ラグジュアリーブランドなら私は順番が逆のような気がします。熱心なファンとプレスを招いた小規模なショー。それからリテーラーを招いた受注会の順ではないでしょうか。
同時に見せても、プレスより先に熱心なファンがソーシャルメディアで拡散してくれます。ネットメディアでも、ニュース系はスピーディに発信しますが、マガジン的なところはそうでもありません。
ともかく熱心なファンが気になったアイテムを発信し、拡散される。リテーラーは勘や今までの傾向よりも、ソーシャルメディアの評判を見ながら発注する方が確実に思えます。


そしてその先には、もちろんブランドの投稿からそのまま買えるリアルなSEE NOW,BUY NOWがあり、中飛ばしがあるのかもしれません。
ラグジュアリーブランドにとっては、先行市場を確実に、ダイレクトに手中にすることが最優先ではないでしょうか。ファッションに特徴的にお金を使うのは、どんな調査でもごく一部です。


渋谷の街頭で行われているイベントを見ていると、「撮影禁止」の札を掲げているものも半数近くあります。後日、公式の動画やメディアに加工されたもので出て来るのですが、拡散度合いはやはり低い。一般の人のソーシャルメディアでの発信のピークは、とっくに終わっているのです。



トム・フォードがVOGUEに語っている言葉が印象的です。

だってもう、そんな世界は存在しないんだから。
もう存在しないことを考えることはできない。



 株式会社イグジィット ウェブサイト

2016年11月7日月曜日

ソーシャルメディアに対応する組織と、対応しない組織




ひとり遅い昼を食べていたら、すぐ目の前でノートパソコンやタブレットを使いながら新商品のマーケティングについて語っている人たちがいました。渋谷周辺のカフェやファミリーレストランでは、こんな場面に遭遇することが珍しくありません。


実感がないのに、日経新聞的なとらえ方をする人たち


ユニークな商品だな。ネットで完結するし売れそうだと思いながら、聞くとはなしに聞いていたのですが、経営者らしき人が、広告はしない。ソーシャルメディアだけで売ろうと思うと発言していました。今どきです。
ところが「ユーザーの属性データなんかをグラフにして、毎日インスタに投稿するのをルーティンにするとか」と続けました。まわりの人もうなずいているのです。私は思わず顔をあげて、どんな人たちなのかじっくり見てしまいました。
インスタグラムを、自分自身ではやっていない人たちなのでしょうか。そのあと社内で、実際にインスタグラムを使っている人たちが意見するとは思いますが。

インスタグラムでも、たとえば文字中心で動画にしている「広告」はあります。でもよほどキャラクター化するならまだしも、グラフを「投稿する」のはないでしょう。しかも毎日だなんて。
日本経済新聞に恨みはありませんが、私は仕事でこういう話をされると「日経新聞の読者にアピールするのですか?」と、言ってしまいます。


投稿するものがない、何を投稿すればいいのかという依頼


先日、ソーシャルメディアで投稿するネタがない。何を投稿したらいいか、御社に運用を任せた場合の見積もりも欲しいという依頼がありました。
少しだけ取引させていただいている企業なので、おおよそは理解しているつもりです。BtoCだし、商品としてもSNS向きです。爆発的な効果をあげることは可能だと思います。ただ…

担当者の方にお会いし、提案をしました。現状では広告に使った写真とコピーを、FacebookやTwitter向けのサイズの画像にして投稿されています。これはもちろん必要なのですが、SNSでは公式発表を知りたがる見たがる人は、ほぼいません。中の人の個人的な実感や、個人的な視点のある写真の方がアピールできます。
なんども書いていますが、タレントの宣材写真よりも生写真、オンステージよりもオフステージ、日常のシーンの方が拡散します。
広告では伝えられない細かな情報、ニッチな視点だって好む人がいますし、アピールできるかもしれません。ファンならなおさらです。
アジアの四大妖術と、すっぴんブームの交錯する関係

またフォローしてくれている人とのコミュニケーションや、アクティブサポートもあります。具体的にその企業に商品について書いている人のツイートをお見せし、こういう情報を教えてあげることだって出来るじゃないですかと説明しました。


投稿するネタがないのではなく、組織が対応していないだけ


この企業では担当者のほか、各部署から代表が出て、SNSで何を投稿するかのミーティングがあるそうです。広告に使ったものを使うのはすぐ決済が出るけれども、それ以外は決済がなかなか出ない。というより何も返ってこないとおっしゃるのです。
ですよね。私も、知っているだけにたぶんそうだろうなと予想していました。
それだと何を提案しても、誰が運用しても、投稿できません。

SNSを仕事をしている会社に依頼しても、何も投稿できません。お金の無駄です。
多くの会社でSNSといえばFacebookが好まれますが、それは経営層の知るSNSがFacebookだからです。ところが企業や団体のFacebookページの投稿は、軒並みリーチを減らしています。簡単には個人のタイムラインに出て行かないのです。表示させることができる有利な投稿タイプは動画。
フェイスブックは動画を優遇してる! そう考えたのは妄想じゃなかった?

しかも今ならライブ動画を露骨に優遇しています。ところが動画の絵コンテを作って会議にかけ、修正・変更をし、決済をもらう。ライブじゃないなら、撮影し、編集して、また会議にかけ、修正・変更をし、決済をもらう。そんなプロセスに何日もかけるなら、CM並みの制作費がかかるかもしれません。

かなりのプロセスと費用をかけたのではと想像されるものも、あることはあります。
ウェンディーズ、Twitter「ライブ配信」で30万ビュー達成



話題やアルゴリズムが変化するスピードは、肌で知る


成功例はあるものの、ほとんどのSNSのアルゴリズムは頻繁に変わっています。またその日、その時の話題の流れで、拡散され方は大きく変化します。
拡散する大きさもスピードもだんとつのTwitterでは、まずその日の流れを考慮しないと、炎上のリスクさえあります。災害や事件などが発生した場合を考えれば、分かりやすいでしょう。その日その時のプラスの流れにうまく乗ることができれば、成果は莫大になります。
今日は新商品の発売日だ。社会的に大きな関心になっている出来事が発生しているけれども、どうしても投稿する必要があるのなら広告に使った写真とコピーをリメイクしたものでいいのです。後日、生写真的な、ニッチな、パーソナリティの見える投稿を追加し続けて行くのが効果的だと、私は考えます。ただ、その決定は即座にやらないと何も出来なくなってしまいます。

つまりはあらかじめ、オープンにできる範囲が明確になっていること。意思決定のプロセスを、出来る限り短すること。観察しているだけではなく、実感でSNSの面白さや反応を感じている人が担当者になることが必要不可欠です。
それが無理なら、SNSでは広告を使うしかないでしょう。
もっともその広告表現だって、SNS的でなければ効果がないのですが。


ちなみに、PPAP ペンパイナッポーアッポーペン/ 死神リュークfeat.ピコ太郎の動画、11月1日の公開ですから、決断から公開までのプロセスが速いですよね。
内容も面白いですが、PPAPカバーのキモはスピード。もし公開が1ヶ月先だったらどうでしょうか。11月7日の時点で再生1000万回突破してます。







2016年10月26日水曜日

Apple Payは、どうしてTwitterで爆発したのか






10月25日、日本でもApple Payのサービスが開始されました。Twitterでは朝からトレンドになっていましたし、大手メディアから個人のブログまで、午前中から取り上げていて、それぞれが引用したツイートも数多く出回っていました。
Yahoo!リアルタイム検索で調べると、25日中のツイート数は約26000件といったところでしょうか。



リツイートや会話が発生しているものも多く、Apple Pay関連の拡散は少なくともその数十倍になるんじゃないかと私は想像しています。


最大のピークは、25日朝の10時。5150件のツイートです。追っていくと、多様な角度からの話題が、Apple Payで起こっていることがわかります。
[ビジネス][初体験][障害][笑い][使ってみたい][使い方/裏技]ぐらいに分けられるかと思いますが、[ビジネス]はカード会社やキャリア各社が宣伝・サービス合戦を繰り広げていますのでご存知でしょう。また一部の銀行はキャッシュカードなしに、Apple PayでATMから現金が引き出せるようになると発表するなど、関連の話題も続いています。


[障害]はモバイルSuicaが25日朝7時半ごろから、ログインができなくなったというのです。原因は通常の10倍ものアクセス。チャージやグリーン券・特急券の購入ができないのですから、大きな障害です。
「モバイルSuica」障害、約3時間半で復旧


「iPhoneでSuicaが利用できるようになったことが影響した可能性がある」としていますが、ほかに理由は見つからないですよね。
じゃあ、朝7時半からApple Payを使いたいとアクセスした人がそんなにいたんでしょうか。



iPhoneユーザーは、無類の新しもの好き?


以前、あるクライアントが日本初の機能を使ったアプリをiPhoneとAndroid両方でリリースしました。半年後ぐらいにお聞きしたところ、ダウンロード数と利用率ともに10倍以上の差があるとおっしゃっていました。
iPhoneユーザーは、とにかく新しいもの使ってみたいのですね。あ、でも私はiPhoneユーザーですが6sですし、新しい機能やサービスをすぐに使ってみたいなんて思いません。

しかしすでにiPhone7を購入した人なら、新しもの好きでしょうし、Apple Payを使いたいと考える比率は高いでしょう。
使ったら、「使った」とSNSで、特にTwitterで[初体験]ツイートする確率は高いと想像できます。なぜなら反応の大きさが違います。
朝の10時前後から使ったというツイートが出始めて、それを見た人たちが反応したりニュースなどを引用してツイートしたので激増したのではないでしょうか。



[初体験]ツイートの最強は、Apple PayとApple Wachの組み合わせ


私はツイートを見て、驚きました。なんとApple PayはApple Wachでも使えるそうです。iPhone7じゃなくても、Apple Wachと同期すれば使えるとか!?



それほどリツイートされているわけではありませんが、こういうツイートを見て、調べた人も少なくないはず。
拡散しているのは、初体験の喜び。





だんぜん強いのは、もちろん[笑い]のツイート


使えなかったとかネガティブなものもあるものの、面白いのは笑いに持っていったツイート。Apple Payが話題になっているからこそパロディにもできるのですが、テキストだけではなく写真まで撮っているのですから、競い合いになるネタかもしれません。


アップルパイとアップルペイのダジャレものは数多くあるものの、写真にしてしまえば、一目瞭然です。

さらにこれから広がりそうなのは、なんとPPAPもの。PPAPを持ってきたツイートは、10月1日にロシアでも出ているので、マッシュアップ動画を作れば世界的に拡散する?



と思いきや現在のところ、 こちらがリツイート6021回で最強の拡散ツイートのようです。わざわざ、よくまあ(笑)



日経新聞的な興味や拡散も大きいですが、金融関係がしゃかりきになっているのはiPhoneが参入してきたことによってスマホ決済が一気に広がり、Apple Payがプラットフォームになってしまうかもしれない。先に対応しておかないとまずいということでしょう。Paypalもそうですが、大きく普及すれば個別クレジットカード会社の存在は希薄になってしまいます。iTunesでレコード会社を意識することは、とても少なくなったのではないでしょうか。ああいう感じですよね。


でもプラットフォームになるかどうかは、一般の人たちがどれだけ利用するかにかかっているのですから、笑いまで取り込まれているのは大きいです。まず認知度から。
Twitter方面から見ても、Apple Payは強力です。





 株式会社イグジィット ウェブサイト


2016年9月30日金曜日

聖地巡礼は、場所のコンテンツ化と考えればいいんじゃないかと





先日、Twitterでこんなツイートがリツイートされて来て、誰なんだろうとプロフィールを見たら、岐阜県飛騨市の市長だったので、対応早いなぁ、本気だな。聖地巡礼ブームは、それほどなんだと改めて思いました。
調べて見ると、Facebookでも「君の名は。」関連の対応を、何度も投稿されています。



映画「君の名は。」 は、興行収入100億円を突破。『シン・ゴジラ』を上回る大ヒットだといいます。それだけではなく、岐阜県飛騨市など、背景となったと思われる場所に【聖地巡礼】でファンが殺到しているというのです。飛騨古川駅は、テレビでもさかんに取り上げられていました。




聖地巡礼は、どうして拡大したのか


宗教行為の聖地巡礼になぞらえて、映画やアニメに関連した場所をファンが訪れることを【聖地巡礼】と呼びます。2012年にはNHKが番組で「アニメを旅する若者たち “聖地巡礼”の舞台裏」が特集されるほど。
NHK クローズアップ現代

番組によると、作り手の事情として、制作費をかけられなくなった。「背景をゼロから想像して作るのと違い、近くの町をモデルにして描けば手間暇かけず、コストも抑えてリアルな背景を作ることができます。」
ファンサイドからは、「虚構であることを分かったうえで、どのぐらい作りこまれているか、どういうふうに緻密に作られているかということを、そこを楽しむ見方」があり、「謎解きゲーム」「ファンの間でそれを意見交換するっていう楽しみ」がネットによって飛躍的に簡単になったといいます。また地域密着アニメは、「等身大のドラマのほうが、実感とか共感を持ちやすい」、それが聖地巡礼と結びついたのではと語られています。

「等身大」をのぞけば、2004年の冬ソナブームでは、旅行会社がこぞって聖地巡礼ツアーを企画し、中高年女性が韓国に殺到したといいますから、実感したい、その世界に没入したいというニーズは、根強くあるのだと思います。
2004年なら、聖地巡礼して写真を撮っても、身近かな知人に見せるぐらいしかありません。でも今ならSNSで知らないファンとも交流でき、それがまた聖地巡礼熱を拡散させます。


NHKの番組のページには「聖地を作れ 狙う自治体」という見出しまでありますが、まさに今はその競争。
国内ばかりではなく、海外からの観光客も聖地巡礼に興味を持ちます。以前に書きましたが2003年のソフィア・コッポラ「ロスト・イン・トランスレーション」。この映画によって、渋谷に行きたい、スクランブル交差点を渡ってみたい。カラオケに行きたいという外国人が増えたそうです。
渋谷スクランブル交差点の何に、外国人は興奮するのでしょう


今月16日、KADOKAWAやJTB、JALなどが「アニメツーリズム協会」を設立したそうです。一般公募で88ヵ所を「アニメ聖地」として選定、2020年には国内外から年400万人の観光客をアニメの聖地に送り込むことを目指す。協会設立は、訪日外国人観光客数の目標達成の強力な後押しとなりそうだと、投資関連のサイトに、鼻息の荒く書かれています。
「聖地巡礼」400万人へ、カドカワらアニメツーリズム協会設立 <株探トップ特集>



何の意味も付加されない場所が、忘れ去られるのは当たり前


インバウンドまで考えると、聖地巡礼ブームはまだまだ拡大しそうですね。しかし、観光とか旅は、その体験自体に意味があるのだから、それぞれの価値観に沿った“聖地”を訪れるのは、当たり前じゃないですか。

日常生活なら、たとえば意味なく駅近や安い店でお昼を食べるということがあるでしょう。でもわざわざ出かけるなら、その人にとってなにかしら格別の意味があるところに行くのではないでしょうか。
観光になれば、利便性とか価格ではない価値観の比率が高まってくる。それを与えるのがアニメや映画などのエンターテイメントだったり、あるいは史実や希少性、世界遺産などの権威付けだという気がします。



出かけるという行為は、あたらしいコンテンツを求めている?


ただ少し考えてみると、たいていのことはネットで疑似体験できてしまう。VRもそうですよね。もしかすると、観光じゃなくても、ごく日常的な出かける、食事するという行為でさえ、あたらしい意味が求められているのかもしれません。
街を歩けば、情報という刺激があふれています。


アニメでは、2007年に大ヒットしたテレビアニメ『らき☆すた』が、聖地巡礼のきっかけだと書いている記事もあります。作中に登場する鷹宮神社のモデルとなった、埼玉県の鷲宮神社にファンが殺到し、初詣客も2007年の7万人から2010年には45万人と激増したそうです。
『君の名は。』でも…聖地巡礼トラブルはなくならないのか

埼玉県の鷲宮神社は「関東最古の大社」だとうたっていますが、それよりも『らき☆すた』の舞台という意味が上回ったということですよね。




昨年ヒットした映画「バケモノの子」は、渋谷駅通路内で大々的な宣伝活動を行っていたので驚いたのですが、それ以上に渋谷区観光協会が今年DVD&Blu-ray発売を記念して「バケモノの子×渋谷ロケMAP」を配っていたことにビックリしました。

そこには、主人公の九太と師匠・熊徹が出会ったJR高架下なんてことが書いてあるのです。JR高架下といっても、246号線横の通路。自転車置き場になっていて、放置自転車もどっさりある狭く短く、暗い場所です。たぶん渋谷を訪れた人が通ったとしても、誰の記憶にも残らないでしょう。


ところが、九太と熊徹が出会った場所がここだよと聞くと、映画を観た人には特別な意味を持ちます。九太と熊徹のコスプレをして写真を撮る人だって、出てくるかもしれません。

なんの変哲もない場所に、意味が付加されました。


「バケモノの子」は人間界に生きる少年とバケモノ界に生きる熊獣人が、弟子と師匠として交わる物語。レイヤーのように重なる世界に生きるふたり。その出会いが、JR高架下なのですから、特別な場所です。

これって、ポケモンGOと構造は同じに思えます。モンスターの巣の配置換えが行われたというツイートが拡散すれば、人が押し寄せます。現実の世界には何もない公園にだって、スマホというレイヤー上のモンスターを求めて、人が移動します。
ポケモンGOだって、いわば「場所のコンテンツ化」です。

コンテンツとは「ネタだ」とする人もいますし、日本の知的財産基本法では「人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するもの」と定義されているようです。
私がここで書いている「コンテンツ化」は、興味を持たれる文脈が付加される、ぐらいのニュアンスです。人に伝えるときには、その文脈が使われるから、伝わりやすいし、共感や共有もされやすいのだと思います。キャッチフレーズではなく、文脈。


何もない場所だって、コンテンツ化すると人が殺到する時代ですから、逆にコンテンツ化されない場所には、誰もやってこないということですよね。





私は「バケモノの子」を、これは渋谷の街をよく知っていると面白さは倍増するなと思いながら観ていました。ストーリーも感動的ですが、さらに理解が膨らむ感覚を味わいました。聖地巡礼って、こういう感覚を味わいながら、追体験できるってことかもしれません。




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2016年8月19日金曜日

あっという間にチャットサポートが当たり前になったのは、きっとメリットしかないから



このところ、チャットサポートを受けまくっています。昨年「これからのユーザーサポートは、チャットになる予感」を書いたときには、まだまだ少なかったのと、自分自身チャットに抵抗があったからです。

でも今は、チャットによるサポートが大好きです。一瞬で解決しますし、たぶんオペレーターの方の負担も少ないのでは、という気持ちがあるからです。


2016年8月4日木曜日

都知事選をソーシャルメディアやネットから見た風景は、圧倒的に小池百合子さんだった



組織をもたず立候補された小池百合子さん。見事に新都知事になられましたが、私がソーシャルメディアやネットから眺めていると、圧倒的に小池氏有利に見えていました。
投票日に即日開票され、当確が出た後、テレビなどでは石原親子のオウンゴールや保守分裂、野党統一候補の調整の不備など、さまざまな解説がなされていますが、私は違う視点で見ていました。もちろんネット上で有利に思えても、それが投票行動にそのまま結びつくわけではありません。

すでにSNSからの視点や分析を元に、公表されているふたつの記事をご紹介しながら書いてみます。


2016年7月29日金曜日

『侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生』動画は、本当にBUZZあるあるなのか?




日清のチキンラーメンが、ウェブムービー『侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生』を公開した。このあざといタイトル。内容はタイトル通りで、こういうテーマの動画はバズってるよねというのを全部詰め込んでいます。
最初、それってきっと内輪ウケというか、動画制作者が喜ぶような自虐的か、アイロニカルな見せ方でしょ、と思っていたら、これがどうしてどうして。良く出来た教科書的なCMのセオリー通りでした。メッセージも、ちゃんと広告です。

それはさておき、YouTubeで字幕をオンにすると、BUZZ POINT1から20まで出てくるのですが、本当にこのテーマでやると、今ウケてバズるんでしょうか。

まず、なにはともあれそのカオスなWEBムービーを見てみてください。

2016年7月7日木曜日

自撮り/セルフィーのあたらしいトレンドと、これからも拡大する理由




今年の1月、森美術館「村上隆の五百羅漢図展」で外国人観光客の多くが、作品をバックに自撮りしていると書きました。撮影がOKなので、ほぼすべての人がパシャパシャ撮っているのですが、日本人の多くは作品や空間が対象です。 ところが6月に渋谷パルコミュージアムで蜷川実花展に行くと、やはり撮影がほぼOKなのですが、日本人もかなりの割合で自撮りをしているのです。

展示されているのが、プライベートモードの“旬なオトコたち”なので、お目当ての俳優とツーショットみたいなことはあるにせよ、日本人も変わってきているのかもねと思いました。
SNSに投稿するには、格好の“ネタ”です。


2016年6月24日金曜日

IoTですぐに来る未来は、クルマになりそうな予感【 Apple vs Google 】


IoTという言葉を聞かない日はないぐらい、なんだかIoT(モノのインターネット化)が盛り上がっていますが、なにがどうなるのかよくわからない。

Internet of Thingsによって医薬品や食品のトレーサビリティがぁーと言われますが、それはタグを付けて追いかけるということだから、なにか違う気がします。農業のIoT化も確かにあると思いますが、それも農業という産業の中でのことで、従事している人以外にはそれほど関係なさそうです。


2016年6月17日金曜日

フェイスブックは動画を優遇してる! そう考えたのは妄想じゃなかった?


かなり以前から、動画が来る。スマホシフトでさらに動画の役割が増すはず。そう思っていました。会社でもそう言ってたし、クライアントにもそう提案していましたが、企業もので増えてきたのは、広告的なムービーをYouTubeにあげるようなこと。
や、ちょっと違ってて、YouTube以外のSNSで見るのはもっと短くないと… もっとカジュアルなものじゃないと…


2016年6月13日月曜日

スタバのピンクドリンクや萌え断、インスタグラムから生まれる食のトレンド


今までソーシャルメディアでの食は、「飯テロ」や「肉の日」など、食欲をそそるものが話題の中心でした。写真も照りが中心の、シズル感にあふれたものがウケていたように思います。TwitterやFacebookでは、今でもそれほど変わりないようです。

ところがインスタグラムの人気が高まるにつれ、食のジャンルでもシズル感よりも、食器や背景などセッティングに凝った、グラフィック的なオシャレな写真があふれるようになりました。
そしてさらに、こんなムーブメントまで生み出すようになっています。


2016年6月3日金曜日

Googleの新しいモバイルフレンドリーテストとパフォーマンステストを使っておこう




先月、Googleの新しいモバイルフレンドリーテストがリリースされました。 urlを入力すると分析してくれるのですが、自社サイトでやってみると以前にはなかった[ブロックされたリソースがあります]という通知がありました。


2016年5月17日火曜日

インスタグラムのアイコン変更は、世界的にそれほど評判悪いのか




10日、インスタグラムはアプリのアイコンとインターフェイスデザインの変更を発表しました。
10日の夜から、TwitterやFacebookでは賛否両論。Twitterでは11日もトレンドになっていました。またブログやネットメディアでも取り上げられていますが、多くは否定的なもののようです。


2016年4月26日火曜日

熊本地震支援で見えてきた、ソーシャルメディアとGoogle クライシスレスポンス連携のチカラ



先週、渋谷の駅前では熊本地震に関する募金活動が、あちこちで行われていました。皆、支援を叫んでいます。どのグループも学生や20代に見えます。
しかし渋谷駅周辺は、絶え間なく偽募金が横行しています。私は訝しんでいたのですが、近づいてみると、どうも本当の支援活動のようです。

ネットになると、詐欺募金の方が多いぐらいです。東日本大震災のときには公的な機関に届く募金でさえ、なかなか被災地に届かないという事態があり、非難を浴びました。


2016年4月15日金曜日

熊本地震が発生してから、中の人たちは何をツイートしたか


今回の地震で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
この文章は4月15日夜に公開したものです。14日夜の地震発生時から翌15日午前中までの様子を書いています。








4月14日21時26分ごろ、熊本県で震度7という強い地震が発生。余震も15日朝までに116回、正午までに125回に達したそうです。
詳しい情報を知ろうと、テレビをつけ、いち早く状況が出回るTwitterを調べました。3.11のとき、電話はつながらないのに、Twitterは家族や友人知人が連絡を取るライフラインとして役立ったといいます。確かにそうだと思いますが、悪意のないデマが多数出回っていました。

ところが昨日は、かなり様相が違っていました。


2016年4月8日金曜日

人工知能は、クリエイティブを進化させる? それとも滅ぼす?



Googleの人工知能ソフト「AlphaGo」が囲碁の世界最強棋士に4勝1敗で勝利し、世界を驚かせたのは3月15日。日本では同じ3月24日に、マイクロソフトが開発した人工知能Bot「Tay」がTwitterで公開されたものの、差別発言を繰り返し、その日のうちに公開停止になりました。Tayは、Twitterユーザーからやり取りから自動学習するようになっていたようです。


2016年4月4日月曜日

Googleの#HappyBackToWorkに学ぶ、動画の使い方




Googleが復職するママを応援するプロモーションを3月中旬から、行っています。
「保育園落ちた日本死ね」と書かれたブログが国会で取り上げられて以降、とてもホットな話題ですが、Googleは急に始めたわけではありません。2014年の10月にWomen Will #HappyBackToWorkというを作り、働く女性をハッピーにするアイデアを募集していました。その中で、復職するママを応援するというテーマでこの3月4月に行っているのが「#HappyBackToWork WEEKS」です。


2016年3月25日金曜日

『鬼トレ』が、どこかで流行しはじめてるだろうか



3月8日にテレビ東京のワールドビジネスサテライトという番組を見ていたら、「限界に挑戦 鬼トレ時代が到来か!?」という特集をやっていました。




2016年3月17日木曜日

Underworld/TOMATOが、ソーシャルメディアで渋谷を占拠した


2月の下旬から、音楽系サイトを中心に「アンダーワールドが地上波初パフォーマンス披露」というニュースが、6年ぶりに発売される最新アルバムやその他いろいろな情報とともに出回っていました。
地上波とは、3月11日放送のテレビ朝日系「ミュージックステーション(Mステ)」のこと。日本の歌番組に出るんだという驚きとともに、今回はいろいろプロモーションをするんだな。6年前とは情報の流通も音楽の状況もずいぶん違うし、発表されていたことを読むと、どういう風に拡散し話題になって行くんだろうと興味津々でした。


2016年3月3日木曜日

かつて働いていた人たちの“評判”が、最も強い評判なのに




こんなことがありました。
あるクライアントで打ち合わせ中、私が本題ではないことで「それ、ソーシャルメディアで出しませんか?」と言い出しました。私は確実に拡散する。ただ拡散するだけじゃなく、親近感を持ってくれる人が増えるはず、という確信がありました。


2016年2月23日火曜日

2月22日「猫の日」に、企業アカウントはどう乗っかったのか



ネコノミクス効果2兆3162億円なんて言われ、猫が主役のCMを見ない日はないぐらいの猫ブーム。過疎っているといわれるGoogle+でも「猫の集会」というコミュニティーの参加者は4万人を超え、ほぼ24時間猫の写真や動画が投稿され大変な盛り上がりです。

そして昨日、2月22日は「猫の日」。さまざまな企業が乗っかるだろうなと見ていました。Twitterではずっとトレンドになるお祭り騒ぎ。意外にもGoogle+やFacebookでは、ほとんど動きがありませんでした。
 私は個人では「猫の日だ」と投稿しましたが、仕事上は何も便乗しませんでした。猫と関連のあるアカウントは、まったくありません。 ところが関係ないはずなのに、Twitterでは、がっつり乗っかった企業アカウントもあるのです。


有名アカウントたちは、名前まで猫に絡めて


シャープは、「ニャープ」に。キングジムは、「キングにゃム」に。井村屋は、「いむニャや」に。パインアメは、「パインニャメ」に。東急ハンズのメインアカウントは、「東急にゃンズ」に変えていました。


このへんのアカウントの凄いところは、自社の商品に絡めてしまうところです。無理があるものものは笑いで、少しでも関係があれば機能を強調します。パインは、とにかく絵に商品を使うのがセオリーのようです。
トヨタやキリンビールなど、ビジュアルを作って猫の日に絡めた大手アカウントもありましたが、笑いに変えないとソーシャルメディア上では厳しいかもしれません。


東急ハンズは、新宿店が来月からやるイベントの告知みたいです。



GoogleやWindowsなど、外資系IT企業も「猫の日」に参戦


外資系でしかもIT企業となると、まったく興味なさそうですが、さすがに押さえるところは押さえてます。







猫を飼っているところは、もちろん


動物園なら、もちろん猫の日に出すだろうなと予想していたら、なんと水族館まで。こんなの知りませんでした。








猫を切り口に自社のサービスを編集して見せる


こんな切り口があったんだと感心したのがエールフランス。これを見て、エールフランスを選ぶ猫好きの人もいるはずです。HISはGoogleのストリートビューと似た切り口ですが、ランキングでやっているところが面白いです。日本でもウサギの島に外国人観光客が来るといいますから、やれそうですね。




素材がないから、募集してしまう方法


カタログ通販のニッセンは、特設の猫用品サイト「ニャッセン」 を開設。フォトコンテストを実施、TwitterかInstagramでの投稿で応募という方法。
#ニャッセンには、続々写真が集まっています。

ユニークなのは、タニタ。こんなツイートをしています。
集まった写真は50以上。なんてお手軽なんだと思いますが、普段から面白アカウントだと知られているからできることでしょう。集まった写真は、上のツイートに返信されていますので、Twitterに飛べば見ることができますよ。
うちでも猫は、なぜだか体重計に乗りたがります。そこを写真に撮ってる人は、きっと多いでしょう。猫を飼っている人の発想ですね。



日産は#猫バンバン啓蒙プロジェクトとリンク


以前からあるムーブメントで、日産がプロジェクトとしてやっている猫バンバン運動。猫が冬場に寒さをしのぐため、車のボンネットに忍び込んでしまい、気づかないで発車し起こる事故を防ごうというプロジェクトなのですが、猫の日、こんなツイートをされていました。


その1週間前には、YouTubeで動画も公開しています。この動画の素材は、一般の人たちがソーシャルメディアで投稿したものです。私はGoogle+の猫のコミュニティの人が投稿されていたので、それを知りました。
猫の日を機に、さらに輪を広げようとしたのだと思いますが、猫好きの間で日産のイメージは急上昇しているはずです。



この動画、海外でも人気なんだそうです。
#猫バンバンプロジェクト


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2016年2月22日月曜日

【Twitter】届かなかった人に届けたかったら、ハッシュタグを使う



Twitterが発表したところによると、2015年末時点での日本国内の月間アクティブユーザー数は3500万人で、Facebookを上回るとのことです。
ウォールストリートジャーナル「ツイッター利用者、日本でフェイスブック上回る」


2016年2月13日土曜日

どこでも広告。もう当たり前の場所には、視線が動かない?



以前から増えていましたが、特に今年に入ってからは、通常の場所ではないスペースに掲出された広告を見かけることが多くなりました。
年初に驚いたのは、1月9日から始まった日本テレビのドラマ『怪盗山猫』のポスター。放送開始後は通常の駅張りスペースにも出ていましたが、放送開始前は、ここって貼っていいの?と、一瞬戸惑ってしまう場所に掲出されていました。


2016年1月29日金曜日

「村上隆の五百羅漢図展」森美術館のソーシャルメディア運用が、カンペキすぎて困る




昨年末、六本木ヒルズにある森美術館の「村上隆の五百羅漢図展」に行ってきました。それまでハイソそうな森美術館に、興味はありませんでした。村上隆さんの作風も、好きではありませんでした。著書は読んでいて、発想やスケールが凄いとは思っていました。


2016年1月25日月曜日

過疎っている年末年始に、ソーシャルメディアで成果をあげるには


これまで何度もこのブログに、ソーシャルメディアの運用は過疎っているときがチャンスだと書いていますが、この年末年始はどうだったでしょうか。
実際にやってみたことをご紹介する前に、わかりやすい例があります。それはテレビドラマ『孤独のグルメ』です。


2016年1月14日木曜日

【インバウンド】渋谷周辺の訪日外国人向けマーケティングが街ぐるみになってきた



昨年の1月、このブログで『今年は、Japan Tax-free Shopの動向が注目されそうです』を書いたときには、Japan Tax-free Shopの表記が数えるほど。免税事業者になっているのに、表には出していないショップが数多くありました。ところが半年ほどで、めぼしいところはみんなTax-freeを打ち出すようになりました。


2016年1月7日木曜日

リアルな口コミだけだった「水沢ダウン」が、2016年ネットでもブレイク確定?


1月5日、Twitterのトレンドに[水沢ダウン]が出ていて、驚きました。
私は仕事上で知っていましたが、まだ水沢ダウンと聞いてピンと来る人は、そう多くなさそうです。何があったのかと思って調べてみると、それは「東洋経済ONLINE」の記事でした。