https://www.donaldjtrump.com/
2016年、アメリカ大統領選挙の結果予測を大手メディアがことごとく外したことが話題になりました。日本では通常メディアは候補者や政党に肩入れしていないことが建前ですから、支持を表明したりしません。
先の東京都知事選では、メディアの不偏不党ぶりの報道、そして与党の支持とは対照的にに、ネットやSNSでは小池百合子さんの話題が圧倒していたので、私は「都知事選をソーシャルメディアやネットから見た風景は、圧倒的に小池百合子さんだった」を書きました。
アメリカ大統領選挙で、世論調査や統計学が敗北したのか?
今回の大統領選挙ではアメリカのメディアのみならず、天才統計学者と呼ばれるネイト・シルバー氏も外してしまいました。ネイト・シルバーは、2018年の大統領選では50州中49州を、2012年の大統領選では50州すべての結果を的中させました。
それが2016年の予測では、大ハズレだったのです。
米大統領選。クリントン71対トランプ29。ネイトシルバーの予想 https://t.co/So5TkzmXIN— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) 2016年11月2日
得票数ではクリントン氏がトランプ氏を、290万票も上回りました。ところがアメリカ大統領選挙の選挙人という仕組みで、ヒラリー氏が破れたのです。
クリントン氏、史上最も得票した敗戦候補に 290万リード
ただもちろんネイト・シルバー氏や大手メディア、世論調査会社は、そんな選挙制度を踏まえた上での予測です。
このことをエコノミストの伊藤洋一氏は、こう書かれています。
恐らく今回の米大統領選挙でクリントン氏以上に負けを認めなければならないのは、投票当日の朝まで「クリントン氏の圧倒的勝利」を予測し続けた、米国のマスコミそして世論調査会社だ。人材、装置などで十二分な情報収集能力とインフラを持ち、圧倒的な世論形成力を持つと思われていた三大テレビネットワーク、CNN、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの既存メディアが、これほど惨めな負けを経験したのは、米国の歴史上これまでなかったことだ。
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トランプ氏本人は、勝因をソーシャルメディアの活用だと語る
こちらの記事では、ソーシャルメディアのエンゲージメント比較すると、トランプ氏はヒラリー氏を圧倒していた。その大きさは、映画「君の名は。」や「シン・ゴジラ」の数百倍の規模だといいます。
【検証】本当にトランプは、SNSで選挙に勝ったのか?
しかし話題になったから、それがどう投票行動に結びつくのか。選挙権を持たない人もいるだろうし、ネガティブな反応も少なくない。トランプ氏のTwitterでの炎上ぶりは、目を見張るものでした。賛否が拮抗するテーマでは炎上が起こりやすいものです。
炎上マーケティングといわれるものは、ECサイトへのアクセスを激増させると、“買う”人も増えるというもの。手軽な価格のものなら、そういう方程式も成り立つと思いますが、ことは選挙です。どれほど結びつくのでしょうか。
同じことを、先の都知事選でも思いました。「都知事選をソーシャルメディアやネットから見た風景は、圧倒的に小池百合子さんだった」でも書きましたが、「ポジティブ/ネガティブに関係なく、ツイート数の多さと支持の大きさは連動する傾向にあることが、弊社の過去の分析経験から分かっています」と言っている会社があるのです。
そう言われても半信半疑。ただYahoo!リアルタイム検索などを見ても、ネガポジ判定はいい加減なものです。そもそもアルゴリズムでポジティブ/ネガティブをきちんと解析できないなら、エンゲージメントか言及数、つまりは話題の大きさで判断するしかないはずです。
世論調査が外れたのは、トランプ支持をおおっぴらに表明できないものだ。隠れトランプが大勢いたという分析も少なくありません。
しかしSNSでも誰もが正直だとは限りません。やっていない人だっているのですから、ソーシャルメディアを調べたとしても、最初から大きなバイアスがかかっています。
事前に大統領選結果を的中させたのは、AIによるSNSスキャン
世論調査や統計学が敗北したといわれる今回の大統領選で、的中させたとされる予測を出したのは、私が探せた範囲では南アとインドのAIでした。
ひとつは公的機関やピザハット、ウーバーなどから依頼を受け、ソーシャルメディアに表れる市民感情をリアルタイムに追跡している南ア・ケープタウンのソフト会社「ブランズアイ」。この会社はAIを駆使してソーシャルメディアを追跡。
分析は人間の手で進めたということなので、ネガポジ判定はかなり正確かもしれません。CNNに書かれています。
ツイッターを中心に400万人からの投稿3700万件を収集した。分析の結果、クリントン氏への反感とトランプ氏への強い支持が多数を占めていることが分かったという。
大統領選の集計と照らし合わせると、11カ所の激戦州のうち9カ所で予想が的中した。
トランプ勝利的中、予測の鍵はSNS上の感情 南ア企業
もうひとつは、インドのジェニック・エーアイ社が開発した人工知能「MogIA」。グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブといったプラットフォームから2000万以上のデータポイントを分析。今回の共和党と民主党の各大統領選候補者を選ぶ予備選挙の結果を含め、大統領選関連の過去4回の選挙で、MogIAは結果を正確に予測していたそうです。
トランプ氏勝利を示すデータの一例として、ネットユーザーのエンゲージメント(トピックに対する関わり)の比較で、バラク・オバマ氏が初当選した2008年のピーク時より、今回のトランプ氏が25%も上回っていたとのこと。
インド発のAI、トランプ勝利を10日前に予測
上の引用はNewsweekからですが、こちらでは「(MogIAは)候補者について投稿した人々の感情を理解することはできません。人が候補者を支持するか反対するかはわかりません」とあります。ジェニック・エーアイ社のCEOの言葉からすると、トレンド性が鍵のようです。
MogIAの分析が当たったのなら、ソーシャルメディアでのエンゲージメント。ブランズアイの分析が正しいのであれば、ソーシャルメディア、特にTwitterでの感情表出と選挙結果には、偶然ではなく正の相関関係があると言えそうですね。
反応がある前提として、まず注目。注目とは焚き火であるという本「ATTENTION」。
トランプ氏はこの本でいうところの即時と短期の注目には成功しました。
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