2016年1月7日木曜日

リアルな口コミだけだった「水沢ダウン」が、2016年ネットでもブレイク確定?


1月5日、Twitterのトレンドに[水沢ダウン]が出ていて、驚きました。
私は仕事上で知っていましたが、まだ水沢ダウンと聞いてピンと来る人は、そう多くなさそうです。何があったのかと思って調べてみると、それは「東洋経済ONLINE」の記事でした。





8万円超の「水沢ダウン」がバカ売れする理由

その記事がYahoo!ニュースに配信され、一気にTwitterで広がったのです。バカ売れというタイトルになっていますが、本格的なダウン市場がどれほどあるのかわかりません。
東洋経済ONLINEではこう書かれています。

セレクトショップでの取扱量は2014年比で3倍になった。
直営店でも反響は大きい。原宿駅前の「デサントショップ東京」での10~12月期の売り上げは、2013年から2014年が2倍弱、2014年から2015年が1.5倍と年々拡大。

本格的なダウンは、カナダグースやザ・ノース・フェイス、それにモンクレールなどの海外勢が有名です。着ている人を見かけることも少なくないですが、私にはタウンユースでどうして必要なのか、ほとんど理解できません。
ザ・ノース・フェイスは元々、登山用具や登山用のウェアが専門のメーカー。アウトドアや寒冷地で、本格的なダウンが求められるのは理解できます。


たぶん水沢ダウンもファッション性で受けているのではなく、本格的な高機能ウェアだという価値。
きっとリアルな口コミ/評判で広がっていたと思うのですが、でもGoogleトレンドなどで調べてみると、ネット上では、それほど話題になっていなかったようです。デサントは、ソーシャルメディアなどでは何もやっていないようですし。

それが今年、ネットでも話題になるでしょうか。私はなりそうだと思います。
突然Twitterのトレンドになる下地は、数年前からできていました。




厳冬のバンクーバーに耐える保温性と耐水性を追求した日の丸ダウン


Cultivate Meistersというサイトに、デサントのデザインディレクターと水沢工場の製品開発部長にインタビューした記事が掲載されています。

「匠なる者たち」第16回

2010年、バンクーバー冬季オリンピック。日本代表選手団のために、前例のない革命的なウェアが開発された。日本発のスポーツウェアブランド「デサント」が、岩手県・水沢工場の職人たちと作り上げた「水沢ダウン」。優れた保温性を誇るダウンジャケットの特徴である、羽毛を詰めるためのキルティング加工。その縫い目をなくすという前代未聞の発想によって、水に弱いというダウンジャケットの最大の弱点を見事克服。そして生み出された“究極の1着”が、栄光の舞台に輝いた瞬間だった。

この前書きを読むと、まるでかつてのNHK『プロジェクトX』のよう(笑) パーツ数だけでも通常の数倍で、すべて手作業で縫い合わせているそうです。
でも実際の機能性は、「匠なる者たち」のインタビュー以上。保温性、耐水性以外にも、本来のアスリート向けらしく、動きやすさを追求した仕様になっています。
当初、バンクーバーオリンピックなどで「水沢ダウン」の存在を知って、機能性の高さや製品の背景にあるストーリーに惹かれた人たちがが買い始めていたのでしょう。




東日本大震災以降の、made in JAPANという価値へ向かうトレンドともつながっているでしょう。
「匠なる者たち」には、糸井重里さんの話が出てきます。




ほぼ日刊イトイ新聞で別注「水沢ダウン」を販売している理由


丸若:糸井重里さんがこのダウンに惚れ込んだことから、『ほぼ日刊イトイ新聞』でも水沢ダウンの別注バージョンを展開していて、受注会ではすぐに売り切れる程の反響だと聞きました。
山田:糸井さんが東日本大震災後に東北を訪問するべく、防寒着を探しに訪れたお店で「一番暖かいダウンをください」と言って試着したのが水沢ダウンだった。それで「これはすごい!」と、大変気に入ってくださったそうです。それまでの着実な進化があってこそ、評価していただけたのだと思いますね。

丸若とは、Cultivate Meistersの主宰者でインタビュアーの丸若裕俊さん。山田とは、デサントのデザインディレクター山田満さんです。

『ほぼ日刊イトイ新聞』でも糸井重里さんは、こう語っています。
ほぼ日の水沢ダウン2015
こりゃいいと思って気仙沼に持っていって着てみたら、いままでの「これを着ていればだいじょうぶ」っていうレベルの、さらに一段上だった。
ずっと「オレ、ぜんぜん寒くないよ」って言ってたんで、 みんなにうらやましがられたんですよ。

そして、やはりmade in JAPAN
海外のブランドに負けてない、「made in JAPAN」のすごみが伝わってくるし、
震災のあった東北発のものだし、
なんか、いまうれしい感じが全部入ってるんで、
ぼくとしては、このよさを
ぜひわかってほしいっていう気持ちがあります。

YouTubeでも、こんな動画を公開されています。




コラボやセレクトした、伝わりやすい理由がある


ほぼ日のほかにも機能性の魅力に、ファッション性を加えたコラボがあります。



その他、ユナイテッドアローズやトゥモローランド、ジャーナルスタンダード、シップス、ナノ・ユニバースなど、セレクトショップでも別注モデルがあったそうです。デサントからアプローチなのか、セレクトショップ側からのアプローチなのかはわかりませんが、“別注した物語”を販売の場で語りやすそうです。機能に関する蘊蓄がセレクトした一番の理由ですから、伝わりやすいですね。




2013年から連続で、世界最大級のスポーツ事業イベントISPOアワードを受賞


デサントのウェブサイトによると、ISPOアワードは「3大陸の各国から選出されたジュリーという審査員によって厳正に審査され、コンセプト、デザイン、技術的に優れた製品に授与される非常に名誉ある賞です」とのことです。

2013年ISPOアワードのパフォーマンス部門アパレルカテゴリーで水沢ダウン「マウンテニア」が受賞
2014年ISPOアワードのアウトドア部門での受賞に加え、GOOD DESIGN賞BEST100を受賞した水沢ダウンの中でも軽量モデルの「シャトル」
2015年「水沢ダウンジャケット ストーム」がISPOアワード金賞


日本ではそれほど知られていないイベントだと思いますが、いわばお墨付きをもらった事実は大きい。スペックが響く人たちに、強力にアピールするはずです。





それほどメジャーではない話題の積み重ねが、急激にピークを迎えそう


震災、復興、made in JAPAN、高機能、匠、国産、手作業。糸井さんの言葉だと「いまうれしい感じが全部入ってる」ですが、まさにそこ。セレクトショップで語っても説得力のある物語。語ろうとすればいくらでも語れるキーワード群です。
さらに世界的なお墨付きまでもらったハイスペックさ。蘊蓄となると中高年だと思われやすいですが、モノマガジン的なアピールなら、むしろ20代30代に響きやすそうです。


Googleトレンドを見ると、冬季オリンピックに採用された2010年は検索されていません。それがわずかずつ増えてきて、2015年末から急増し、この1月はさらに急激に増加中です。





これは絶対的な検索数ではなく、検索ボリュームの推移。
では競合するブランドと比較してみましょう。




今月の急上昇ぶりは、カナダグースやモンクレールに迫る勢いです。
検索数で肉薄したからといってイコール売れるわけではありませんが、これからネット上で話題になることは間違いなさそうですよ。
ちなみに本題ではないので簡単に書きますが、モンクレールはなだらかに話題が消えていくでしょう。関連検索キーワードでは、「モンクレール アウトレット」など安く買うための検索が増えています。
またモンクレールは東京、兵庫、大阪、愛知、神奈川、福岡、京都で多く検索され、東北三県や四国では少なくなっています。たぶん比較的都市部で、ファッションとしてのダウンとして調べられているのでしょう。それが2013年にピークを迎え、ファッションのトレンドとしては、そろそろ終わっているようです。

カナダグースは2011年頃から右肩上がり。神奈川、東京、大阪、宮城、北海道、埼玉で多く検索されていますが、ファッションと現実的な防寒着として求められているようです。

水沢ダウンは、神奈川、愛知、大阪、東京で多く検索されています。デサントやレディースなどが関連キーワードに上がっています。とりあえず調べている人が増えているだけなので、実際に売れるかどうかはわかりませんが、都市部で詳しく知っている人は急増しているのでしょう。
寒冷地でアピールした方が需要は大きいし、長続きするのではと思いますが、ネックは価格。現実に買っているのは、オーロラを見に行く富裕層の奥様とか、蘊蓄好きのおじさんなどに象徴されるそうです。ロシアなどでは、富裕層ほど高機能アウターの下はTシャツ1枚などの薄着スタイルが多いそうですから、そんなニーズも増えるかもしれません。


というかネット上の話題性はともかく、高価格商品が売れるのは、高付加価値になる背景のストーリーしかないでしょうね。水沢ダウンは、それがすべてあるというわけです。



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