2016年4月8日金曜日

人工知能は、クリエイティブを進化させる? それとも滅ぼす?



Googleの人工知能ソフト「AlphaGo」が囲碁の世界最強棋士に4勝1敗で勝利し、世界を驚かせたのは3月15日。日本では同じ3月24日に、マイクロソフトが開発した人工知能Bot「Tay」がTwitterで公開されたものの、差別発言を繰り返し、その日のうちに公開停止になりました。Tayは、Twitterユーザーからやり取りから自動学習するようになっていたようです。





このふたつの人工知能による“事件”から、なんとなく理解できそうなのは、厳格なルールのある世界では、AIが人間の能力を凌駕しはじめている。でもルールが複雑で曖昧な領域では、まだまだ判断ができないということではないでしょうか。
Tayの暴走は、何が適切で何が不適切か、判断するための対策がなされていなかったといわれています。だから悪意あるユーザーから、不適切語や間違った知識を学んでしまったといことのようです。

Appleは世界中の野球のデータや雑学知識を、Siriに教え込んだそうです。となると、どんな野球解説者より、知識では上回りそうです。でも、ただ知識があるだけで、知能と呼べるでしょうか?

人間がプログラムしなくても勝手に学習する機械学習やディープラーニングと呼ばれるものが、「人工知能、なんかヤバそうだ」となっているのだと思います。
ヤバそうなイメージが漂っていますが、今のところ、コミュニケーションや表現の領域では、どうも人間が教えているようですよ。




エキスパートが人工知能に関与しないと、センスは学べない?


ソフトバンクのPepperは、吉本興業のよしもとロボット研究所が芸人を育成するノウハウで、キャラクターの設定やワードセンスを教え込んだもの。ソフトバンクのPepperは、吉本興業のよしもとロボット研究所が芸人を育成するノウハウで、キャラクターの設定やワードセンスを教え込んだもの。Pepperにして欲しい動きも、エンタメの人が行って映像にし、それをベースにソフトを開発していったそうです。
だからあの愛らしいキャラクターになったのですね。いわば、ロボット芸人でしょう。
ディープラーニングしているわけではなさそうです。言葉としては、FAQ的なテンプレート対応なのかもしれないですね。



昨日(4月7日)、Twitterで面白いことをやっていました。暴走してしまったTayと同じマイクロソフトの開発した女子高生AI「りんな」が、シャープ株式会社@SHARP_JPに、1日限定でインターンしていたのです。
「りんな」は検索エンジンBingのディープラーニング技術と、機械学習クラウドサービス「Azure Machine Learning」を組み合わせて生まれた人工知能だそうです。最初はLINEのアカウントでやっていたのですが、昨年12月にTwitterに登場(@ms_rinna)。
それがどういうことだか、1日だけとはいえシャープのアカウントを担当したのです。


「りんな」を話題にするための、コラボだったかもしれません。もしかすると「Tay」も「りんな」も、Twitter全体から機械学習しているわけではなく、ユーザーとのやりとりのみで学んでいるのかもしれません。
それなら「Tay」の二の舞にならないよう、ゆるいキャラクターで人気、そして企業アカウントと頻繁にやり取りのあるシャープアカウントになることで、ぎりぎりのところを学んだのかもしれないです。

シャープ公式Twitterに女子高生AI「りんな」がインターン中



人工知能がコピーを書いて、コンバージョン率を上昇させる


しかしTwitterならTwitterの中だけだとしても、空気を読むこと。炎上させないこと。話題を作ること。拡散させることを人工知能ができるでしょうか。
「りんな」はほぼ写真やイラストを使っていませんが、使っているのは人間が用意したものでしょう。いずれにせよ、ほぼテキストだけですから、逆に難しいはずです。

私はソーシャルメディアでは写真や動画がメインだと思っていて、テキストはどちらかといえばサブ。伝えたいことをすべて文章にしていたら、このブログみたいになってしまいます(笑) ソーシャルメディアでは、そんなの誰も読んでくれません。
Twitterなら少しだけのテキストの方がいいですし、ひとつのツイートだけで完結する必要もありません。ベースは経験則ですが、反応を見ながら調整していきます。

人間のように、人工知能が文章を書くことは可能でしょうか?
私はTechcrunchの、この記事を読んで、これはヤバそうだと思いました。
Persadoという文言を書くソフトウェアは、読者のエンゲージメントを得ることを目的としているそうです。

あと5km走るためのモチベーションが欲しい時。誰かとデートする時も、成功チャンスを最大化することに活用できるでしょう。これらはコグニティブ・コンテンツが役に立つ分野の例です。
Persadoはマーケッターがコピーで使用する100万の単語とフレーズを蓄積し、それぞれにユーザーに与える印象の分析、そしてメッセージ形式、文章の構造、詳細、感情的な言葉、コールトゥアクションに基づくマーケティングの訴求の構造に基いてスコアを付けている。

Techcrunch AIがコピーライティングする「Persado」


要するにユーザーが、好ましい反応をしてくれる単語とフレーズ、そして構造についての情報を蓄積し続け、キャンペーンに合わせて文章を生成するということでしょう。

私がこのブログを書いていても、どんな単語が好ましい反応をしてくれるかなんて考えてもいませんし、知りません。Twitterならダイレクトに反応が返ってくるので、日々経験則が更新されています。でもブログだと、Googleアナリティクスで滞在時間などもわかったりしますが、単語はまだしも、フレーズや文章構造となるとさっぱりです。

著名なブロガーは、煽りをちりばめていてアクセス数を上げ、アフェリエイトなどの売上げが向上するという手法が多いと思います。
でも同じ文章でも企業のコピーとなると、そんな風にはできません。売上げに貢献することは当然ですが、好ましい反応だけではなく、ネガティブな反応も意識する必要があります。短期的にはプラスでも、中長期的にはそれ以上のマイナスになるケースは、少なくないですよね。
もしかするとPersadoがコンバージョン重視したものだと、そのへんが課題かもしれません。

もう10年以上も前に、ある大手広告代理店がキャッチフレーズを書くソフトを作りましたが、なんの話題にもなりませんでした。キャッチフレーズを書くだけなら、順列組み合わせで膨大な量が出来てしまいます。結局、そこから人間が選び、調整するのですから、下作業程度にしかなりません。
Persadoが、人間の反応した情報を機械学習しベースにしているなら、近い将来脅威になりそうです。




レンブラントの作品を機械学習して〝芸術〟を描いてしまった人工知能


昨日はもうひとつ、衝撃的なニュースが出ていました。
マイクロソフトとオランダのING グループ、レンブラント博物館、デルフト工科大学などによる、バロック絵画を代表する画家のひとりレンブラントの作風をコンピューターで再現しようとするプロジェクト「The Next Rembrandt」。
このプロジェクトが、まるでレンブラントの作品にしか見えない作品を、つい先日発表したというのです。

機械学習したAIがレンブラントの"新作"を出力。



見事です。「実物の絵画から取得した3Dデータを分析し、画像のテクスチャーの下に油絵具の塗り重ねによる隆起を再現した3Dデータを作成」したということで、専門家が見てもレンブラントの作品にしか思えないでしょう。

346あるレンブラントの絵画すべてをデジタルスキャンし、そのタッチや色使い、レイアウトの特徴などをディープラーニングアルゴリズムを用いてコンピューターに叩き込みました。また、絵画はすべて3Dスキャナーを使って、絵具の凹凸に至るまでを完全にデータ化
最もレンブラントらしく見える絵画のモチーフを検討した結果、肖像画が選ばれました。向かって右側を向いた30~40代の白人男性で、襟のある黒い服、帽子といった条件を決定、さらに条件を満たす主題をレンブラントの作風でコンピューターに描き出させるため、顔の各パーツのレイアウト比率や服、その他描き方の特徴などを再現するアルゴリズムも開発しました。

ここまで表現できるんだと驚きますが、これって考えてみると、贋作作家の方法そのもの。贋作作家がやっているプロセスを、AIがなぞり、3Dプリントで再現したというのですから、創作ではなく、完璧ともいえる贋作だと言えそうです。

ディープラーニングしたということですが、膨大な知識から推論エンジンで答えを導き出したと考えるほうがいいかもしれません。言い方が難しいですが、過去を再現しているだけです。たとえばレンブラントが現代に生きていたら、という設定で描く。たとえば死の間際まで絵画に対する探究心を持っていたレンブラント、という設定でエッチングを描く。そんなことなら、新作とだって言えなくないかもしれません。

もっと端的に言えば、レンブラントをパクっただけ。ただ、再現のレベルはとんでもないところまで来ている。
人間のように思考する知能、とはまだまだ言えなさそうですが、プロジェクト「The Next Rembrandt」で実現した様子を見ていると、デザインや写真、イラストレーションだって簡単にパクって、再現できそうです。



デザインや写真は、人工知能が進化させる?


レイアウトということなら、グラフィックでもウェブでも、かなりテンプレート化が進んでいます。文章を作る選択肢の多さと比較すると、レイアウトのバリエーションはないに等しいかもかもしれません。
でもデザイン全体となると、テイストによって、印象がかなり変わってきます。書体・フォントをどうするか、配色は、写真は・イラストはどうするかで、無限の選択肢があります。
写真に関しては、フリー素材が数多く出回っていますから、それを使えばオリジナリティはなくても高品質な印象を作ることは可能です。実際に撮影したものは、いくらでも合成や加工ができますから、これも無限に選択肢があります。
デザインや写真の膨大なデータベースがあれば、パラメーターで調整したり、テイストを変え、決済者がチョイスするということなら、今までも似たような作業が行われています。
2020年の東京オリンピックのエンブレム問題で総叩きになった著名なアートディレクターは、イラストなどをPinterestからパクって、そのまま使っていたことも暴露されてしまいました。ただ選ぶ、セレクトするという行為は、膨大な時間がかかりますし、センスが必要です。はたして、決済者がチョイスできるでしょうか。
パクらなくても、レンブラントそっくりの作品を作れる、再現できるのだから、技術的には可能です。


これらの作業を、人工知能で手をつけられるでしょうか。誰かそっくりのセンスと技術で作品化することは可能です。オリジナルかどうかを別にしても、はたして世の中にアピールできたり、特定のイメージを作ることができるでしょうか。

グラフィックでもウェブでも、アイトラッキング調査(視標追跡)などによって、改善点を可視化する手法は行われてきました。ただ費用面や、可視化から改善までに時間がかかりました。また視線が集中したから、視線の流れがこうなっているから、どういう効果があるのかが、あいまいだったかもしれません。
AIが特にオンラインなら、その反応を含めて情報を蓄積できそうです。蓄積だけではなく、反応によってレイアウトを組み直す。画像を加工するなんてことは、そう遠くない将来に費用面でも可能になるのではと思います。


膨大なデザインデータを機械学習していれば、文字にダメージ加工することがトレンドなんだな。こういう印象なんだなという情報だって持っています。人間のように「なぜ汚すんだ?」みたいな反応は、出てこないでしょう(笑)
なぜ流行しているのかという理由がわからなくても、どういう人が、どういう反応引き起こしているのかさえ判断できれば効果的です。



人工知能に、クリエイティブジャンプは起こせるか?


私が書いていることが、技術的にいつぐらいに可能になるのかは、わかりません。出来そうだよね、ぐらいの感想です。だいたい囲碁のプロ棋士にAIが勝つのだって、10年以上かかるだろうと言われていたぐらいですから、私の想像なんて根拠があるわけありません。

でもクリエーターたちがやっている方法がわかれば、人工知能に置き換えることは出来なくないでしょう。過去の膨大なデータと最新のトレンドで、効果的なクリエイティブができそうです。
もちろんどれだけリアルタイムのデータを持っていても、過去をベースにした確率論。高い確率を求めれば求めるほど、世の中には似たようなクリエイティブが出回り、思ったような効果が出なくなるかもしれません。
パクっただけのやり方は人間だっていっぱいやっていますが、それでもかつては物量で圧倒すれば通用しました。ところがだんだん物量で凌駕しても、見ている人はどんどん少なくなっているのではないでしょうか。


金融取引などで、プログラムによる自動売買は災害やテロなどの際の、相場の急激な変化に対応できないと聞きます。また人間があらかじめルールを決めておくことが必要です。
人工知能Bot「Tay」に、あらかじめNGワードを数多く登録していたり、テレビ局が持っているような倫理規定を教え込ませていたとしたら、どうでしょうか。きっと安全なツイートばかりで、そのうち見向きもされなくなりそうです。
刺激的なことの多くは、ぎりぎりのところ。

世の中に受け入れられるかどうか、面白がられるかどうかは、日々変わっています。
まじめなAIは堅苦しすぎ、ガードのあまいAIは暴走する。そのどこにポジショニングするかは、かなり難しいはずです。だって人間があらかじめルールを作って、プログラムするのですから。


間違いなくいえることは、クリエーターにとってパクリやテンプレート的対応だと、人工知能やIT技術によって凌駕されてしまう。今はまだ、人間の方が安いけどね。
という段階のようですよ。



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人工知能は人間を超えるか -ディープラーニングの先にあるもの




人間の1000倍も賢いASI(人工超知能)になり、人類を滅ぼすかもしれないと警鐘を鳴らす本
人工知能 -人類最悪にして最後の発明







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