2016年4月26日火曜日

熊本地震支援で見えてきた、ソーシャルメディアとGoogle クライシスレスポンス連携のチカラ



先週、渋谷の駅前では熊本地震に関する募金活動が、あちこちで行われていました。皆、支援を叫んでいます。どのグループも学生や20代に見えます。
しかし渋谷駅周辺は、絶え間なく偽募金が横行しています。私は訝しんでいたのですが、近づいてみると、どうも本当の支援活動のようです。

ネットになると、詐欺募金の方が多いぐらいです。東日本大震災のときには公的な機関に届く募金でさえ、なかなか被災地に届かないという事態があり、非難を浴びました。





被災地支援に役立つ情報という視点でも同じです。ソーシャルメディアによって、救助されたケースもある一方で、偽の救助要請やデマも飛び交っているといいます。
支援活動に関しても投稿した本人の意図とは別に、有益な情報と間違った情報が入り交じっています。被災して困っている人たちに、的確な情報が届くかどうかは、誰かが、どれが正確で有益な情報かを担保する必要があります。



東京の学生が一晩で地図を作ったと伝えた朝日新聞


4月23日の朝日新聞デジタルには、こう書かれています。
熊本県で最初の大地震が発生した2分後、東京・慶応大の学生が友人にメッセージを送った。「拓、動こう」。支援の呼びかけは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で一気に拡散。顔も知らない学生たちも加わり、一晩でインターネット上に、避難者や炊き出し場所などを落とし込んだ災害情報マップができあがった。
熊本地震支援、SNSの機動力 東京の学生、発生2分後始動→一晩で地図

Facebookにページを作り、約100人ほどがやりとりをして、避難所や炊き出し場所、支援物資の集積地点などを収集してGoogleマップに落とし込んだそうです。
情報源は自治体のホームページや報道機関のTwitter。そしてSNSで拡散された被災者の生の声を拾ったといいます。
一晩でというタイトルですが、朝までにそれなりに落とし込めるは避難場所だけだろうと思います。それでもとにかく生の声を拾って整理するのは、大変な労力であることは間違いないでしょう。
行政や既存の組織では、とてもできないスピードだと思いますし、またソーシャルメディアがあればこそ可能になったのだと思います。


そのFacebookのページとは、こちら。正確にはFacebookページではなく、公開グループです。
Youth Action for Kumamoto ~熊本大分支援コミュニティ~

しかしここに投稿されているから、正しい情報だとは限りません。また支援を求めている人が、ピンポイントで必要としている情報を探すのには手間がかかります。


コミュニティ主宰者がやられたことは、Googleマイマップへの落とし込み。4月15日の明け方には公開されています。
Googleマイマップは公開し、共有することができます。主宰者・塚田さんの投稿を読むと、「Google Japanさんのクライシスチームとの連携し、クライシスレスポンスの災害情報マップにも、一部掲載をしていただいています」と出てきます。
Google側からアプローチしたのか、塚田さんからアプローチしたのか、いずれにせよ凄いことです。

Googleはどうやって、信頼できるマイマップだと判断したのでしょうか。
以前も書いていますが、はっきりしているところもあることはあります。
Googleが、ソーシャルメディアを捨てさる日

しかしGoogle クライシスレスポンスに関しては、さっぱり情報がありません。



Google クライシスレスポンスの情報提供者は誰なのか?


Google クライシスレスポンスとは、細かなことを抜きにすると自然災害に関する災害情報や安否確認、ライフライン情報などを提供する、まとめマップと周辺サービスです。
いま、Googleのトップページにアクセスすると、下に「熊本と大分の地震に関連する情報はこちら」というリンクが出ています。クリックするとGoogle クライシスレスポンスのページに飛びます。



そこには「熊本・大分リソースマップ」として以下の7つのリンクがあります。
・避難所
・スーパー営業情報
・炊き出し&支援物資集積地点
・給水所
・給油可能ガソリンスタンド
・営業中の銭湯・温泉
・利用可能トイレ
クリックするとCrisis Mapに飛ぶのですが、なんとこれらリソースマップの情報のすべてがYouth action for Kumamotoの提供なのです。ものすごい信用の仕方です。

地図上の目印をクリックすると右上の情報が[詳細]に代わり、細かな情報が出てきます。下の画像では出典に熊本市のホームページが出てきます。炊き出し情報では、Twitterのアカウント(@voice21japan)などが出典として出てきます。





Googleが信用するのは、どんな仕組みなのでしょう


想像すると絶対的に信頼度が高いのは、役所のウェブサイトなどの情報ですが、それではアクセスしても分かりづらいとか、働く人たちも被災しているのですから更新も遅い。
Youth action for Kumamotoはネット上に公開されているメディアや役所、支援団体、支援アカウントや企業アカウント、そして被災者の投稿から信頼度の高そうなものをマイマップへの落とし込み、それを信頼してGoogleがCrisis Mapに反映させているということなのではないでしょうか。

たぶん慎重に裏取りをして確実性の高い情報を遅く出すよりも、とりあえず確度の高い情報だと判断できればいち早く出した方が困っている人に役立つ。Google クライシスレスポンスに集積できれば、より役立つ情報源になる。修正や追加など、更新し続けるという発想でしょう。なんといっても早く出さないと、デマや間違った情報の方が拡散しやすいのですから。
ソーシャルメディア時代の情報の出し方としては、間違いなく正しいと私は思います。

ログインしていてもしていなくても、Googleは個人のネット上での振る舞いを追跡しています。もし虚偽の情報を出そうものなら、以降の信用度は下がるでしょう。少なくともクライシスレスポンスには使ってもらえなさそうな気がします。

ただGoogleがいくら人工知能で先行し、優れたアルゴリズムを持っていたとしても、ユーザーを与信するような判断力は、実用レベルとはほど遠いと思います。G-mailのスパム判定は優れていても、Google + のスパムコメント判定は間違いだらけ。このBloggerのサービスも、穴だらけです。
案外、クライシスチームが人的に判断して提携するかどうかを決めているのかもしれません。

ちなみにGoogle クライシスレスポンスの自動車通行実績マップは、前にも書いているようにホンダの提供ですから間違いなさそうです。
熊本地震が発生してから、中の人たちは何をツイートしたか



認知度と、対応するのは被災地の人だという問題


残念ながらGoogle クライシスレスポンスの認知度は、それほど高くなさそうです。Google検索するときに、パソコンからでしかもトップページにアクセスする人は少ないでしょう。
また利用する側が、上の画像のように、欲しいもの・足りているものなどを入力できなければ、支援する側にとっての有益さは限定的になってしまいます。避難所にいるのは被災者か支援団体などのボランティア、あるいは行政の人たち。
避難所内の現状把握するまでにも時間がかかるでしょうし、Google のフォーマットから入力しろと求められても、厳しいものがあるでしょう。


また被災者に向けたスーパーの営業情報だけではなく、観光客向けに向けた旅館やホテル、商店や観光施設などの営業再開情報もあれば復興にも役立ちそうです。これも最初に発信する人の問題があります。チェーン店のスーパーなら本部がウェブサイトで明記できますが、自営だとなかなか難しそうです。
アンドロイドによる音声対応など、発信者を特定しながら、なにかしらショートカットする方法を見つけられたら、飛躍的に利便性が向上しそうです。
※東日本大震災のときには、Googleは店情報を場所ごとにまとめ「Google プレイス」をベースに作られた「ビジネスファインダー」や「YouTubeビジネス支援チャンネル」などを開設していました。




これからどうなるのか何ともわかりませんが、ともあれYouth action for Kumamotoのような迅速な動きは、いままでになかったこと。
AmazonのたすけあおうNippon「欲しいものリスト」では、避難所になっている公立中学校がテレビやカメラなどを複数台のせて、疑問視されています。Googleなら避難所などの欲しいものリストと、個人ではなく、支援したい企業とのマッチングさせるのは難しくないはず。Googleがさらに積極的に災害支援のプラットフォーム化に取り組むなら、とても有益なインフラになりそうです。


スマホでブックマークして、備えておく価値はありますよ。

Google クライシスレスポンス




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