2013年12月6日金曜日

『アンバサダー・マーケティング』を読んで、推奨してくれる顧客ってなんだと考えてみた

前に、「〜ってなんだと考えてみた」と書いたのは『USERS』。なんか節操ないみたいですけど、今回取り上げる『アンバサダー・マーケティング』という本も、とても納得できる内容でした。私は『USERS』と『アンバサダー・マーケティング』を、結びつけて考えました。

画像:アンバサダーマーケティング表紙


『USERS』は、実際に買ってくれたお客さん(=顧客)だけじゃなくて、デジタルでつながる人すべて(=ユーザー)を対象にしなきゃいけない。というのが基本的な考え方。


画像:『USERS』の対象とする概念図
『USERS』の考え方


核になっているのは、ユーザーは気まぐれだという視点。買い物をレジャーと考えていない限り、最も安いところ、最も便利なところから買う。なにか買おうとする時、ユーザーはどこで買うかを決める際  ------  信用(Trust)、利便性(Convenience)、価格(Price)、そして楽しさ(Fun)=(TCPP)のバランスを考えている  ------  これらが瞬時に頭の中をよぎっている。と書いています。


一方『アンバサダー・マーケティング』では、もう広告は効かない。最近の先進企業が頼っているのは、「アンバサダー」と呼ばれる人たちを味方につけて、熱烈なクチコミをしてもらうことだ、と書いています。
ということは、『USERS』では実際に買ってくれたお客さん(=顧客)だって気まぐれなんだから、もっと広く、デジタルでつながる人すべて(=ユーザー)にアプローチしなきゃという考え方と対立するような立場のマーケティングなの? 
たぶんそんなことは、ないと思います。

両書とも、ネットの登場によって主導権が生活者に移った。それが今日の、目まぐるしく移り変わる市場を作っているという認識は同じなんでしょう。ただ『USERS』は、“気まぐれだから広く訴求しましょう”と考えている。
『アンバサダー・マーケティング』のベースにあるのは、そうは言っても、大切なのはすでに買ってくれた顧客。その中でも、周囲に推奨してくれるファンは最も重要ですと考えているんだろう。
『アンバサダー・マーケティング』の構造を、『USERS』的な図にすると、こういうことだと思います。

画像:『アンバサダー・マーケティング』の概念図

『アンバサダー・マーケティング』の考え方

『USERS』の図では、右下に小さく[顧客]がありました。『アンバサダー・マーケティング』では、その小さな顧客の中に、さらに熱烈に周囲に推奨してくれる[アンバサダー]がいるということですね。
[ファン]は、私の考えでは買ったことのないファンも存在するので、概念的に別にしました。ソーシャルメディア・マーケティングでは、買ったことのないファンだって重要です。

私の感想では、『USERS』は汎用性のある考え方。どんな企業だって取り入れるべき。『アンバサダー・マーケティング』は、すでに、それなりのブランド力がないと無理だという気がします。私がここでいうブランド力とは、大げさなことじゃなくて、面白いサービスだ、信頼できる製品、コスパに優れている、ユニークだ、便利だ、などというプラスの評判。プラスの評判がまったくないのに、アンバサダーが存在するわけもない。
というのも今のマーケティングでは、割引や誇大な表現やポイントなど、刹那的なものが主流です。今までの記事でもポイントプログラムなどを書いていますが、それは関係を結ぶキッカケであって、そればかりになると、ブランド的なバリューを感じて買っている人は誰ひとりとしていないということになりかねません。

だから『アンバサダー・マーケティング』は、顧客と信頼関係を結ぶことがベースになっているので、『USERS』よりも、より本質的なマーケティングを提唱しているのだと思います。
ただ上に掲載した『アンバサダー・マーケティング』の図の矢印は、行き先の多くはデジタルですから、結局は『USERS』の図のピンクの大きな円になるというのが私の解釈です。つまり「デジタルでつながるすべての人」が、メインの対象になり、手段はアンバサダーによるクチコミだということです。



勝手にオススメしてくれる熱いアンバサダーを捜し出せ


『アンバサダー・マーケティング』には、スターバックスに関するブログを運営し、ツイッターでも情報発信をしている人が紹介されています。こういう人は、けっこういますよね。ところがところが、そんなもんじゃありませんでした。
筋金入りのアップルファンとして、周囲にアップル製品をオススメし続ける元IBM社員。これまでに4台のレクサスを所有し、友人に自分の車を試乗させてあげたり、ディーラーを紹介したりすることで、14人の友人にレクサスを買わせてしまった人までが登場します。
ちょっと唖然としますが、日本でもいなくはなさそうです。

でも、そんなアンバサダーをどうやって見つけて、どうやって動いてもらうんでしょう。見つける方法については、これも唖然とするような、簡単なことが書いてありました。

方法は3つ。ひとつは、1.直接聞く
「製品やサービスを知人や友人に薦めたいと思いますか」という簡単で、しかも究極の質問をすること。解答は、推奨の強さを「薦めない」から「強く薦める」までの11段階から選ぶ仕組み。最も「強く薦める」とそのひとつ下を選んだ人たちを「アンバサダー」として考える。
画像:究極の質問画面



2.傾聴する 基本はソーシャルメディアでの発言をモニタリングして、発掘する。
3.観察する 実際に見込み客を紹介してくれたり、自社に関するサイトや動画を作ってくれているなど、行動している人を探す。

2と3は『アンバサダー・マーケティング』を取り入れなくても、日常的にやっていて当然だと思いますが、偉い人ほど、疎かったり、あまりに影響が小さいと過小評価する傾向があるように感じます。



広い意味でのアンバサダーは、いくらでも存在する


先日、ソーシャルメディアの運用をさせていただいているクライアントから、こんなことを聞かれました。「どうしてツイッターのフォロワーがこんなにいるんだろう。具体的なメリットがないのに」というものでした。会員割引などがあるネット会員の仕組みがあって、そこには会員割引など具体的なメリットがあります。その会員数の2倍近いツイッターフォロワーのいることが、不思議だという疑問なんですが。

私は「そんなこと当然で、アプローチしてくる人全員の相手をしてるじゃないですか」と答えました。割引というベネフィットが、たとえば9割引なら誰もが会員登録するでしょう。でも、そうではないですから。
ソーシャルメディアをやっている人の多くが、情報収集とか友だちとのコミュニケーションと言いますが、実際は暇つぶしですよね。お酒好きの中高年が、飲みニケーションだ!と言ったところで、時間がなければ飲んでもいられないですから。それと似たようなものかと。
ちょっと検索すれば出てくるような情報でも、無視するか、丁寧に答えるかで、ぜんぜん違ってきます。

「批判とか苦情も含めて」「その人の過去のツイートまで遡って読んで、どう対応するか変えている」みたいなこともお話ししたのですが、丁寧に対応すれば、それこそアンバサダーのように味方になってくれることも少なくありません。


ソーシャルメディアでリツイートやRTしてくれたり共有してくれる人だって、アンバサダーだと、私は思います。
『アンバサダー・マーケティング』では顧客の中で、勝手に周囲にオススメしてくれる人がアンバサダーですが、ソーシャルメディアの時代だと考えるなら、ソーシャルメディアの中での存在感や評判が、もっとも重要ではないでしょうか。

画像:行列している様子

ターミナル駅から出て、すぐに目に入る建物やお店は「存在感がある」ということです。裏に入った通りなんだけど、人が行列しているお店は「評判がいい」ということだと思います。
ソーシャルメディアでは、発信しなきゃ始まらないといわれますが、発信だけで「存在感」や「評判」を作るのは、至難の業。たぶん、ウザがられるだけですね(笑)
だから『USERS』のところでも書きましたが、味方になってくれる人をどれだけ増やせるかが重要で、顧客かどうか以前に、味方かどうかでアンバサダーを考えた方がいいと思います。

だから世界的なブランドで、すでに大勢のアンバサダーがいるのであれば、発掘して、より味方になってもらえばいい。でもそれ以外の企業は、アンバサダーを育成するという考え方に立った方が良さそうですよ。


ステマやストーカー的な広告は、そろそろ逆効果


少し前にステマという言葉が流行語大賞になってもおかしくないぐらいに流行しましたが、ステルスマーケティング的な手法は考え方として広告の延長です。テレビCMを見て、「キムタクが、こんなクルマに乗ってるかよ」と、つっこむ人はいても、けしからんと批判する人はほとんどいないでしょう。
それなのになぜ、芸能人が使ってもいないオークションサイトのことを、ブログで良く書くと批判が殺到するのでしょう。オークションサイト自体がインチキだったということが問題だったわけですが、それ以上に芸能人とはいえ、ブログはマスメディアではない、個人的な姿が出ているものだと、大勢の人が考えているからですよね。

クチコミグルメサイトの評価がお金で左右されているというのも、同じ構造。いや、一般の人たちが評価していることになっているのだから、さらに問題でしょう。
こういうステマ的、やらせ的な手法は、巧妙になるだけで消えはしないと思いますが、そんなこと分かっている、見破っている、疑っている人の方が多くなっているのではないでしょうか。

大勢の人が知りたいのは、リアルな評判。これを作ってくれるのは、広義のアンバサダーしかいません。
『アンバサダー・マーケティング』のいいところは、アンバサダーに対価を支払ってはいけないと断言しているところ。熱烈なアンバサダーだと、お金を支払うと怒ってしまうかもしれません。なぜってきっと、アンバサダーが周囲に推奨するエンジンは、純粋に良さを知っている利用者であることの誇りだという気がします。



またネット広告の手法は、どんどん「このユーザーは何を検索したか」「どんな人か」「どのサイトを見たか」など、ビッグデータを活用したものになっています。ただその多くは、ストーカー的に、どこに行ってもついてきます。

ある化粧品会社の仕事で白班事件のことをチェックしていたのですが、見事に白班事件のことを書いたブログやまとめサイトに、カネボウ化粧品のバナー広告が出てきました。悪い冗談にしか思えませんが、被害者が見たら激怒しそうです。
食材偽装の時でも同じでした。ネット広告の仕組みは賢そうなことを言っても、こういうことになっています。数値化されたデータとして、クリックする人、買う人が多ければ正解。不快に思う人、クリックしない人のことは何の対象にもされませんし、考慮もされません。味方をつくるという考え方とは、真逆ですね。
『アンバサダー・マーケティング』には悪評がたった時の、売上的なマイナスも出ていますよ。






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