2014年9月4日木曜日

炎上する構造とダメージについて考えてみました


画像:炎上のイメージ


バズる方法は、あちこちで書かれています。反対に炎上論みたいなことも、あちこちで書かれています。
少し前に仕事の打ち合わせで、「Facebookは、炎上しないでしょう」みたいなことを聞かれました。実名制だから炎上しないという趣旨なんですが、実名制だって炎上しますよと説明しました。企業のFacebookページが炎上してないように見えるのは、単純にコメントを削除しているからではないでしょうか。


考えてみると私は、このところ年に数回ほど「そんなことすると炎上しますよ」と言っています。
ソーシャルメディアでは、炎上が可視化されやすい。でも私が言っているのは、ソーシャルメディア上だけじゃなくて、発言せず見ている人もいくらでもいますし、リアルなクチコミが広がったり、マスメディアも取り上げたり、現実的なダメージが出ますよという意味なんです。



◎炎上は必ずしも避けなきゃいけないことではない? 



ある外国の政府機関の人たちの前で、「そんなメッセージは、炎上しますよ」と言ったことがあります。最終的にメッセージの根本は変更されずに、ニュアンスだけ変えることになりました。
ソーシャルメディア上では、炎上とまでは行かないですが、ボヤってました。後日聞いたのは、「そんなことは折り込み済み」。つまりは選挙と同じで、反対意見が出ようと、多く票を獲得できれば当選する。当選することがゴールだということです。
そう聞くと確かに反対意見のないメッセージなんて、あるわけがない。ただ反射的にネガティブな反応が出て、それが連鎖して出てしまうようなアプローチがいいかというと、そうでもない。


ECの普及段階から、炎上マーケティングをしている企業もあります。ECサイトなら、どこで炎上しようと売上は伸びる。炎上させるのはタダだと言っている経営者もいますから(笑)
ブランドイメージはどうであれ、瞬間的に売上が向上すればいいとというモデル。これはいいとこ取りでパクリ合い、つぶし合いのバイラルメディアと似ています。PVを最大化して、広告収入を得られればいいという仕組み。



前置きが長くなりましたが、炎上って、そんなに単純ではないですよ。ソーシャルメディア上のことだけではないですし、ということを書いておきたかったんです。
それでは、この夏の炎上から。




LINEの乗っ取りは、どうして炎上しないのか




どんなに対策をしていても、LINEの乗っ取りが止まらないようです。[LINE 乗っ取り]でYahoo!のリアルタイム検索をしてみました。

画像:line乗っ取りのリアルタイム検索

8月1日には8000件に迫る勢い。その後、急落して落ち着いていますが継続して2000件前後ありますから、かなりの関心事です。ただ、感情分析はネガティブ・ポジティブがほぼ同じ。運営側の責任を問うもの、乗っ取られて落ち込んだ、腹が立つという投稿がネガティブ。ではポジティブはなんでしょう。おいしい、楽しいと書かれています。


もうすでに、多くのユーザーに[LINEは乗っ取られるもの]だと認識されているのでしょう。著名な人たちも、乗っ取られたとツイートしたり、ブログに書いていますから。そして今は、乗っ取り犯に対してどうやって遊ぶか。ネタにするかという段階に。
以前は「天安門」と返せば撃退できるということでしたが、すでに面白対処法が、あちこちでまとめられています。撃退じゃなくて、遊ぶ。

あるミュージシャンの人が乗っ取りにあって、落ち込んでいました。ところが友人のミュージシャンが、その乗っ取り犯と遊んでる様子が面白くて、「笑いにしてくれて、ありがとう。サイコー」だとツイートされています。

画像:line乗っ取り犯と遊んで笑いにしてくれたことを感謝するツイート

「愛で応えるという戦法」で遊んだ方が、以降の拡散の様子を書かれています。

まとめサイトや掲示板に書かれたのは、Yahoo!のリアルタイム検索では出てきません。リアルタイム検索やGoogleトレンドで調べられる何倍も何十倍も拡散していると考えていいのではないでしょうか。


一般的には[LINE 乗っ取り]は、とんでもない炎上をしているレベル。だけど、それを上回るほどの遊んでいる面白さの拡散があるし、訴求力がある。なので炎上しているようには、見えない。楽しいなら炎上ではなく、バズってる(笑)
たぶんユーザー数の増減という意味でも、トータルではダメージはない。と私は想像しています。




期限切れ鶏肉問題で、マクドナルドのダメージは



上海福喜食品の問題は、中国のテレビ局が潜入し告発報道したことから、ブルームバークやウォールストリートジャーナルなどがアメリカの経済メディアが先行して取り上げ、それを日本のマスメディアが追従したという流れのようです。
そんな中、日本のマクドナルドではFacebookでユーザーが書き込んだ不都合なコメントを削除していたように見受けられます。
マクドナルドは、どうしてソーシャルメディアで叩かれるのか

上に書いたように、報道後もなんの変化もなく発信されていましたし、テレビCMも流れていました。ところがテレビでの報道を見て、知る人が激増してくると非難するコメントは止まりませんし、Twitterなどでも非難がどんどん増えて行きます。私は初期の対応を、完全に間違っていたと思います。


その後です。7月29日になってカサノバ社長が記者会見し陳謝。
ところが陳謝のタイミングが遅過ぎることや、日本に入ってきたという証拠がないから返金は考えていない。マクドナルドも騙された。という発言などが反感を招き、あちこちのまとめサイトでまとめられ、謝罪会見の模様がYoutubeにあげられ、さらに非難の声を集めます。
タイミングに関しては、ロイターによるとアメリカでは22日に謝罪が行なわれたということですし、21日には日本でもナゲットの販売を中止していたそうですから、かなり不思議です。
カサノバ社長の発言内容は、法的には責任がない、法的瑕疵はないという立場から出たものだと思いますが、日本では逆PRにしかならない気がします。


Yahoo!のリアルタイム検索で、8月に入ってからの注目度を調べてみました。

画像:マクドナルドのリアルタイム検索結果

ポジティブな発言が65%! 凄いです。事件の影響なんて、まったくなさそうです。
しかし1ヵ月で消えるものでしょうか。
仮説として、どんなことが考えられるでしょうか。
・そもそもネガティブに騒いでいたのは、マックに行かない人たちだった
・日本人は忘れっぽい
・変わらぬキャンペーン攻勢。そして大量の広告宣伝、PRが功を奏している
そのすべてかもしれません。


日本フードサービス協会が8月25日に発表した外食産業214社の7月の売上は、前年同月比2.5%減と2カ月連続のマイナス。梅雨明けの遅れや台風による客足減などが原因だということですが、日本マクドナルドは18%減少。
マクドナルドの発表としては「今期の業績予想未定」だとしたそうです。

7月29日(ブルームバーグ):日本マクドナルドホールディングスは2014年12月期の業績予想を未定にすると発表した。取引先だった中国の上海福喜食品が使用期限切れの鶏肉を使用していた問題で、業績への影響が見通せないため。
(中略)
会見に同席した今村朗執行役員は「日々の売り上げ予測の15-20%くらい」を鶏肉問題の影響で失っていると述べた。

今後、輸入食品のトラブルが出たら、何年もの間、テレビでは上海福喜食品の映像が使われることでしょう。マクドナルドを連想する人も、確実にいる。ボディブローのように、マクドナルドの業績に影響はすると思います。
ただリアルタイム検索の感情分析によれば急回復していますから、従来からのファン層には、それほど影響がなさそうです。年間を通しての売上は、15%から20%減という現在の数字と比較すれば、もっと軽いダメージになるのではないでしょうか。




ランサーズのキャンセル提案が無断使用されていた件の炎上度



8月19日、沖縄のホームページ制作会社が「ランサーズで提案し、キャンセルになったデザインが無断で使われている」とブログで告発。
8月20日、ランサーズは自社のインフォメーションページに「ランサーズにおけるキャンセル時の提案の不正利用に関しまして」とのお知らせを掲載。とても素早い対応ですが、ツイッターを中心に炎上します。

画像:ランサーズのリアルタイム検索結果

20日終日のツイッターやフェイスブックの投稿件数は、1700件ほどになっていました。その後、続々とまとめサイトやブログなどで不正使用問題が取り上げられています。
ところが、Yahoo!のリアルタイム検索上では終息しているような、ほぼ通常の注目度に戻りました。これはいったいどういうことでしょうか。

ランサーズのお知らせには、以降の経緯、対応等がまとめられていますし、被害にあった沖縄のホームページ制作会社のブログでも、22日には和解に向かっていることが書かれ、無断使用した不動産会社の名前も出ています。
沖縄ホームページ制作工房「株式会社wEVA」社長日誌

22日には、こんな記事もバズっていました。
ランサーズ編集部がまるで仕事をしていない事が判明

ランサーズ広報の方へのインタビュー記事も出ています。これも偶然だと思いますが、22日です。

仕事はクラウドソーシングでどう変わりつつあるのか



3つのリンクを読めば、ランサーズ/クラウドソーソングの構造や問題点もだいたい理解できると思います。ランサーズは「時間と場所にとらわれない新しい働き方」だとしていますが、そうでしょうか。


仕事を出す側は、どんな企業なのでしょう。利用規約を読んでも、公序良俗に反する行為などが禁止されていますが、公序良俗に反する企業だって仕事の依頼を出せてしまいます。ランサーズも直接訪問して確認しているわけではないですから。
また契約違反があっても、トラブルの解決は当事者間で。ランサーズに損害を与えた場合は、賠償しなければならないとあるだけです。
これだと「新しい働き方」というよりも、悪意を持った発注者を引き寄せやすい仕組みだという気がします。2つめのリンクにあるような画像20本~30本集めて文章書いて記事作って100円という仕事は、パクってこいと言っているようなものですし。

と書いても、そもそもクラウドソーシングってどんなものかというイメージが湧きにくいでしょう。そうなんです。実際の利用者や、関連するような業種の人じゃないと、実感がない。関係もない。今回の炎上も、利用者以外には共有されにくい。だからすぐに沈静化しているように見える。でも、どこか目立たないところに潜行して、燃え続けているかもしれません。


ランサーズでは仕事の発注者にくらべて、圧倒的に供給過剰に思えますので、仕事をしてくれる人の動きは、業績的にはほとんど関係なさそうです。売上の増減は、発注者数とその単価。今回のような炎上は、グレーもしくはブラックな発注方法を広めているだけかもしれません。

いまや非正規雇用が4割近いと言いますし、デザイン関連の職種はそもそもフリーランスが多いですから、デザイン系クラウドソーソングはこの先も拡大すると思います。ただ法的・社会的なペナルティのないマッチングのプラットフォームは、どんなジャンルであっても基本的に出会い系の仕組みと同じですから、健全化は運営者次第で出来るはずです。




◎コントロールできないのが炎上




炎上マーケティングといわれるものは、花火大会で屋台の焼きそばが売れるのと同じです。人出が増えれば、焼きそばの売れ行きも増える。でもどの屋台か憶えているわけじゃないから、来年の花火大会でもやはり人出だけが頼り。
どれぐらいお客さんが来るかをコントロールしようとしても、なかなか難しい。天候にも左右されますし、仮に来場者数が倍増したとしても、屋台の前を通るお客さんが立ち止まれなくなるかもしれませんし。

炎上した後、さまざまな不自然な対応が目につくことがあります。IR/投資家対策なのか、特に経済メディアで、この取り上げ方は裏が透けて見えると思えるストーリーに仕上がっていることがあります。ソーシャルメディアでは、削除やステルス的なやらせが対応策だと考えているような企業もありそうです。初期対応さえすれば、延焼は防げると考えている専門の会社もあるそうです。


一番の誤解は、可視化できるところだけを問題だと考えていることではないでしょうか。潜行して、どこかで燃え続けているかもしれません。
投資家がユーザーであったり、発信や反応をせず観察しているだけの人だって少なくありません。ユーザーや顧客じゃなくても、就職したい、アルバイトしたいと考えて見ている人だっているはずです。


どうしたって炎上する場合はある。LINEのケースのように勝手に遊びに変えてくれればいいけれど、そうじゃなければどうするか。姿勢としては企業であっても、個人の人柄が見えるような対応をするしかないと私は思っています。





人と人がいつでも、瞬時に、地球上のどことでもつながり合う能力「ラディカル・コネクティビティ」が、世の中を劇的に変えている。テクノロジーによってパワーが個人化したことでBIGが崩壊し、小さな者同士がつながると言っている『ビッグの終焉』という本があります。

『ビッグの終焉』のラディカル・コネクティビティまで意味的に過激ではなくても、Google会長初の著書と言われる『第五の権力』でも「インターネットでつながった市民」に権力が移ったとしているのですから、同じですね。



炎上についてこの二冊を出すのはチグハグですが、炎上を一過性のものだと侮っている企業もあるので、あえて取り上げておきます。
ベースにあるのがマスマーケティング的な発想だと、どうにもならないですよね。







バナー:ウェブ、グラフィック、そしてソーシャルなつながりをデザインする制作会社です

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