うちの奥様はテニスをしていますが、WOWOWには加入していません。うちも入ろうか、たぶん入れないだろうと、なんとなく見送っていたのですが、WOWOWの受付回線がパンクしたとかしないとか。
テニス友だちは、皆さんWOWOWに加入していて、録画せず深夜や早朝に見ていたそうです。
錦織圭選手の活躍は、テニスをしない私でも地上波で流された部分だけで十分に興奮させられました。
WOWOWは、ウハウハですね。
いや、それ以上にウハウハなのは、なんと言ってもユニクロでしょう。近所のおじさんから「ユニクロのテニスウェア持ってる? 中高と軟式テニスしてたんだけど、また始めたくなった。硬式テニスできるかな?」と話しかけられたそうです。ユニクロのテニス向けモデルに、そもそもレディスはないようですが(笑)
私はユニクロのウェブでの展開を、継続的にチェックしていました。もう大企業とは思えない速さです。
ウェブサイトやソーシャルメディアで展開するスピードがすごい!
8月24日のツイートです。
ジョコビッチ、錦織、国枝各選手モデルの、8月25日からの販売を告知しています。もちろん先に生産し、販売できる体制を整えていたところが並じゃないですし、国枝選手モデルまで揃えているところが素晴らしいです。(国枝選手は車いすの部シングルスとダブルスで優勝!)
ただリツイート数は27、お気に入りに入れられたのが17ですから、拡散度合いとしては、寂しい限りです。
9月3日のツイートです。ジョコビッチ vs 錦織の準決勝は日本時間で7日です。
このあたりからがソーシャルメディアでも、凄まじいことになってきます。
自ら「ユニクロ対決!」というフレーズを作って煽っていますし、ハッシュタグまで作っています。8月24日のツイートと比べると30倍近くバズっています。
同様の投稿がFacebookページでも行なわれていて、4,351人が[いいね!]して、シェアが207件という爆発ぶり。Facebookはそれだけじゃないんです。そのあともプロモーション的投稿はありますが、三選手の試合の写真をアルバムに投稿しています。
これがまたベストショットばかりで。買ったのかもしれません。新聞各社が一面や号外に使っている写真よりも、臨場感があります。しかも[いいね!]もシェアも、ユニクロ対決を上回ります。
9月8日国枝選手優勝おめでとう、そして錦織圭選手準優勝おめでとうのFacebookでの投稿です。
国枝選手のものが、5,700人が[いいね!]でシェアが211件。錦織選手のものが14,722人の[いいね!]でシェアが271件。もう連続で大爆発しています。
選手のファンの人たち、そして試合に熱狂した人たちをソーシャルメディアでここまで惹き付ける展開は見事です。テレビなら世界大会で日本人が活躍すると、キラーコンテンツになりますが、ソーシャルメディアでこれだけの熱狂は、今までに例がないのではないでしょうか。
しかもマスメディア、特にテレビではほとんど取り上げられていない国枝選手をキチンと追っていますし、エンゲージメントしています。
ジョコビッチ、錦織、国枝各選手と契約したのは、いつ?
ユニクロは機能性ウェアに力を入れていますので、スポーツに目を付けるのは当然だと思いますが、三選手と契約したのはいつなんでしょうか。
三選手の活躍がなければ、ユニクロが何を投稿しようが、ここまでの爆発はあり得ないでしょう。
ノバク・ジョコビッチ
世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ選手との契約は、2012年の5月。
当時、話題にしていたのはテニス関連の情報サイト。ジョコビッチ選手の日本での知名度は、一般的には低いでしょう。
テニスファンの間では話題になっていましたが、それまでがセルジオ・タッキーニというイタリアのスポーツウェアブランドと契約していたので、ユニクロになったことは衝撃的だったと思います。
他では、経済系としての話題ぐらいでしょうか。
きっとユニクロとしては日本国内ではテニスをする人たち以外への広がりは、それほど期待していなかったでしょう。それよりも世界戦略として、ということでしょうね。
錦織圭
錦織選手との契約は、その1年以上前。2011年1月。テニスファンの間では大きな話題になりましたが、一般的にはどうでしょうか。
2011年10月には、世界ランク30位になり、それまで日本人最高位の松岡修造さんの46位を抜き去ります。しかし契約の前年は、年初、怪我の影響でランキングを失います。復帰後は2010年の56位を回復したようです。
Googleトレンドで調べてみました。検索ボリュームがそのまま話題の大きさではありませんが。
2014年9月11日現在で9月の検索数を100とすると、2011年の1月は7しかありません。
このタイミングで錦織圭選手と契約を結ぶのは、ファストファッションとしてはかなり大胆です。
「これから世界に打って出るブランドのアンバサダーとして期待した」(柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長)というユニクロは、錦織のためだけの特別チームを編成。契約金も「それなりに圭を評価してくれるだけのものを用意してくれた」と錦織の所属事務所のIMGは話す。日本経済新聞
やはり日本国内でどうかということよりも、世界戦略としてということですね。テニス人口の多いヨーロッパで活躍が期待でき、好感度の高い日本人の錦織選手がアンバサダーということになれば、そのままユニクロのポジションとイメージ的にオーバラップさせられるということでしょう。
国枝慎吾
国枝選手は、世界ランキング1位。パラリンピックでもシングルスで2度ダブルスで1度、金メダルを獲得した超強豪選手です。
ユニクロと契約を結んだのは、2009年8月。同じアンバサダーという名称が使われていますが、国枝選手は所属契約。詳しい内容は明かされていませんが、一般的にはスポンサー契約より手厚いと考えて良さそうです(ちなみに錦織選手は、日清食品の所属)。
「世界中のあらゆる人々の生活をより良い方向に変えていく」という共通の価値観に基づき、ウェアの提供や共同開発にとどまらず、環境問題や教育問題、貧困などの社会的課題の解決に向けた活動を共同で推進しています。ユニクロでは、今後も高品質なウェアの提供を通じて、国枝選手をサポートするとともに、国枝選手と連携して、より良い社会の実現に向けた活動に取り組んでまいります。ユニクロ プレスリリース
なるほど、ユニクロの理念/社会的使命を体現する選手ということですね。
スポーツウェアとカジュアルな機能性ウェアの違い
今のところユニクロは、テニスウェアを販売しているのではなく、選手が着用したレプリカモデルを販売しているようです。ウェブサイトでも、錦織・国枝選手モデル、ジョコビッチ選手モデルの特集ページで、同じドライ機能を持ったウェアを販売しています。
「シーンを問わず着用していただける」と書かれているように、カジュアルウェアとしてきてもらえればいいというスタンスでしょう。それは成功しているように思えます。
そもそもレプリカモデルじゃなくても、機能性の高いウェアを作っているという評価が得られれば大成功ではないでしょうか。
スポーツ新聞のウェブ版に、ユニクロ担当者への取材が掲載されています。
最大のこだわりはウエアの重さにある。錦織の場合は「ほかの選手より上半身をひねるので軽すぎると体に巻きついちゃう」傾向があった。そこで最軽量化したウエアよりもやや重いものを着用。襟の部分で重さを調整したという。
錦織にウエアを選んでもらう際、複数のサンプルを用意するが「本当にグラムの違いが分かるんです。私たちは持っただけじゃ、どちらが重いか分からない。タグを見ながら説明していた。でも、本人は着ただけで分かる。体が繊細で(感覚が)研ぎ澄まされているんです」。数グラムのズレも錦織は見逃さなかった。続いての特徴は足元にあった。「滑るので、踏ん張るためにも靴下はしっかり作ってほしいと言われています」東スポweb
信頼性の低い東スポですけど(笑) それでもこういう要求に応えたウェアを提供していることは、信頼度が高いですよね。ノウハウを、カジュアルウェアにフィードバックできますし。
ナイキやアディダスなど専門メーカーは、イメージは高いですが、ユニクロには届かないスポーツウェアを作っているかというと、たぶんそんなことはないと私は思っています。シューズは別として、これはスポーツ用じゃないと思えるアイテムも数多くあります。個人的にタオル類などは、ナイキもアディダスもスポーツシーンで使うことを考えているのかと腹立たしくなるほどです。
デサントなど日本のメーカーの方が、相対的に良く出来ている気がします。でもユニクロが目指しているのは、そんなスポーツゴリゴリのシーンのウケではないでしょう。
他のスポンサーより、速くて巧みだったユニクロ
錦織圭選手のスポンサーは、Wikipediaによるとこうなっているそうです。
- 日清食品(所属契約)
- ウイルソン(ラケット)
- アディダス(シューズ)
- ユニクロ(ウェア)
- ウイダーinゼリー(トレーニング・栄養)
- カップヌードル(パッチスポンサー)
- タグ・ホイヤー(時計)
- ジャックス(クレジットカード)
- デルタ航空(航空)
日清食品は、2008年9月にスポンサー契約を結び、2012年4月に所属契約に変更したそうです。ですが、ソーシャルメディアではカップヌードルでしか関連の投稿を行なっていないようです。
カップヌードルのFacebookページも、多くの[いいね!]を集め、シェアされていますが、ユニクロの1/3程度でしょうか。コメントも少なく、商品に直結するわけでもないので、なかなか辛いところです。ツイッターは、どうもないようですね。
ただ錦織選手が自主的に使っているというチキンラーメンのひよこちゃんバッグが、ツイッターでバズっています(笑)
日清食品はボーナスについて公表しませんでした。ユニクロは会長のポケットマネーと会社から1億円出すと発表し、NHKまで取り上げたほどです。
タグ・ホイヤーは、読売新聞の出した号外に全5段の広告を出稿、それをツイートしていました。また急遽「錦織圭選手 応援キャンペーン」を開催。ハッシュタグを付け、応援メッセージをツイートしてくれた人へ抽選で5名様へ、錦織圭選手のサイン入りポスターをプレゼントとするというものなのですが、これがもう悲惨な結果のようでした。
Facebookページでは、カップヌードルと同等の反応を得るのですが… Facebookとツイッターを行き来させようとする試みは、内容的に無理があったように思えます。
またウェブサイトのトップでは、これを書いている時点で「決勝戦へ」となっていますので、ユニクロのような素早さはありません。
アディダスは、ツイッターの「アディダステニス」のアカウントでツイートした、これが最高の反応だったようです。
今後スポンサー各社ではCM出演などが計画されていると思いますが、ソーシャルメディアを中心としたウェブ戦略、そして広報戦略としてもユニクロが際立って優れていたと私は思います。
最後にYahoo!のリアルタイム検索で、[錦織]を調べた結果です。錦織圭とか錦織選手と書いてる人もいるので、[錦織]にしました。
試合のあった日に集中していますね。それにしても決勝戦が終わった後は、なんと76,000件です!
[ユニクロ 錦織]では、どうでしょうか。錦織選手の100分の1ほどの注目度ですが、けっこう持続しています。ユニクロの店舗やオンラインショップでの対応、ソーシャルメディアでの発信やその他でバズっていたり、様々なメディアで取り上げられていることが効いたのではないでしょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿