2013年10月24日木曜日

『USERS』を読んで、ユーザーってなんだと考えてみた

最近読んで、一番興味深かったのは『USERS』という本。日本では翻訳本がこの9月に出て、原書は2011年に出ている。
だからといって古い感じがするかというとそんなことはなくて、多くの示唆に富んでいると私は思います。帯には[デジタル時代を生き抜くための最も重要なコンセプト]だと書かれています。
原題は、こういうもの。カスタマーじゃないんだ。ユーザーなんだと。


カスタマーって、日本語だと顧客。じゃあ『USERS』がいうところのユーザーって?
でもその前に、書いておきたいことが。この本では言及されてませんが、私は顧客という概念変わらなきゃおかしいでしょうと思っています。「購買の意思と能力のある人」と書いている辞書もありますけど、それってどうなんでしょう。まず顧客は「買ってくれた人」だし、「個人情報と結びついている人」だと考えなければ、少なくともこの本ではおかしくなってしまうでしょう。
デジタル社会の中で、誰ということがわからなければ、通りすがりに買ってくれた人というだけにしかなりません。


『USERS』が定義するユーザーとは


顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々(インフルエンサー)だと定義している。デジタル・メデイアとテクノロジーを通して企業と交流する人々を指す。
このような交流は、イントラネットやモバイル・アプリ、オンラインの求職フォーム、ウェブサイト、CRMのソフトウェア、フェイスブックページ。ツイッターのアカウントなど、企業内外で、デジタルな足跡が少しでも辿れるところならどこからでも行なわれる。つまり、デジタル・メディアやテクノロジーを通じて企業と交流する人はみんな、ユーザーなのだ。

ちょっとデジタル一辺倒になり過ぎだという気はする。この考え方だと、問い合わせやクレームの電話を入れてきた人、出資者や株主だって「ユーザー」として捉えないとおかしいです。
とりあえず細かいことは置いておいて、デジタルなつながりということだけにして進めます。 著者の概念は図になっているのですが、描き起しました。



これからは顧客よりはるかに大きなユーザー層を相手にしていかなきゃいけない。ユーザー・ファーストにならなきゃいけないことの重要性や、実際のボリュームを円の大きさで伝えたいんだと思います。
顧客の円が半分ほど外に出ていますが、これはデジタルでつながっていない購入者の存在を表現しているんでしょう。デジタル時代以前の顧客とは、まさにこの部分。顔なじみ、顔パスとか、そんなところ。


どうして、ユーザーじゃなきゃいけないのか


実際に買ってくれたお客さん=顧客だけじゃなくて、デジタルでつながる人すべて=ユーザーを相手にしなきゃいけないのか。
今でも、SNSの何が面白いのかわからない。何の役に立つのか。とか、おっしゃる方はけっこういらっしゃいます。そんな方はもう、ここでは面倒くさいので放っておきます(笑) 

そういう方にもわかる話をちょっとだけ。かつてはよく、うちは住友系だからビールはアサヒじゃなきゃいけないとか、そんな話を聞きました。強制されてるわけでもないのに、集団でも個人でも会社が属する、あるいは関係する財閥グループ企業がつくっているビールを飲む。
それって従業員やパートナー(取引関係)も、銘柄を支えてくれていた、ということですよね。


逆に従業員やパートナーにそっぽを向かれたら、どうなるでしょう。ウェブサイトで応募してきた求職者にひどい扱いをしたら、どうなるでしょう。
かつて人気企業は、新卒採用で対象にしている大学学部の学生には詳細な情報を。対象外の学生にはおざなりのものを渡していたりしましたが、今どきそんなことは、すぐにバレます。
下請け企業を、コストや納期でしばり、酷い扱いをしたらどうなるでしょう。従業員にブラック企業的な扱いをしたらどうでしょう。退社した人に、どこかの掲示板で暴露されるかもしれません。
暴露ではないですが、バイトテロによって営業停止になったというのも、似たようなもの。ネットワークされている世の中だからこそ、とんでもない破壊的なパワーを生む。


若者に急増中!"バイトテロ"の実態とは?

破壊的なところだけじゃなくて、浜田ブリトニーさんの見解が見事です



ところがデジタルでつながる多くの人が、好印象を持ってくれている企業やブランドだと、圧倒的に有利です。ポジティブな情報は、ネガティブなものほど拡散する力はありませんが、リアルなつながりだけじゃなく、ネットワークされたところで味方や応援団が多ければ、好循環が起こるはずではないでしょうか。
どうすれば、味方になってくれるのか。この本の中には、好循環バイラルした実例が、いくつか出ています。


ユーザーの中に、[ブランドのファン]が入っているのが面白い。そのブランドが好きなんだけど、地理的な条件や金銭的な理由で購入経験がない人たちもいる。
実店舗しかなかった時代、この人たちがカスタマーになってくれる確率は低かった。通販の時代になって、やや高くなり、ECの時代になると、もっと高くなった。いつ何時、買ってくれる状況になるかわからない。結果を左右するのは、ネット上のあちこちに存在があって、カートまでの導線がシンプルに用意されているかどうかになってしまった。


どうして、カスタマーだけじゃダメなのか


サブタイトルに「顧客主義の終焉」とあるのに、この理由は書かれていない。あえていえば、書いてあることのすべてが理由とも言えるけど。

規模が小さければ、現在の顧客を維持するだけで十分だ。顧客に注力しようという考え方も、根強くある。注力するのは当たり前ですけど、たぶんそれだけじゃ不十分。
たとえば新聞を自宅で購読しているのは、50代以上だと言われる。新聞各社はこの2、3年、相次いで電子版をつくり、有料化に力を入れている。成功しているかどうかは別にして、顧客だけを相手にしているとじり貧。だから顧客以外の声を聞き、デジタルでつながるカスタマーを取り込もうとしている、と言えるでしょう。ただ報道機関としての仕組みそのものが、今後どうなのかは別ですが。


本書には「なぜユーザーは買うのか」という見出しで、こんなことが書いてあります。

ユーザーの行動は率直だ。彼らは買い物をレジャー(この場合は楽しさや面白さが重要となる)を考えていない限り、最も安いところ、最も便利なところから買う。なにか買おうとする時、ユーザーはどこで買うかを決める際  ------  信用(Trust)、利便性(Convenience)、価格(Price)、そして楽しさ(Fun)=(TCPP)のバランスを考えている  ------  これらが瞬時に頭の中をよぎっている。
TCPPの考え方は人によってさまざまだ。ある人は便利なものにより多く払うだろうし、ある人はお買い得であれば信用できないところからでも買うだろう。これらは個人の考え方に左右されるものだ。利便性が最も重要に思えたとしても、別の時には自由な時間があり買い物を楽しみたいと思うかもしれない。

もっともな内容ですけど、この考えの前提になっているのは、いつでもどこでも買えるようになったということ。ユーザーには選択肢がいくらでもあり、それは顧客にとっても同様で、乗り換えが簡単に起こってしまう。ということだと思います。
しかも、従来のものを陳腐化する製品やサービスが登場するスピードも速い。顧客も浮気したくなる環境に置かれているということですね。


より優れたユーザー体験を提供できるものが最終的に勝つ


最終章に、そう書かれているのですがどうでしょう。優れたユーザー体験は重要ですけど、それがどれぐらい続くでしょう。新しく、優れたユーザー体験を提供する製品やサービスが登場するスピードも速いですよね。








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