2013年10月30日水曜日

Googleハミングバード導入で、誰も言っていないこと

画像:ハミングバードイラスト

もしかしたら、どなたかが言っているかもしれません(笑) 
ただ「ハミングバードの導入は、9月26日にGoogleが発表した」「導入は、その1ヵ月前」「検索結果の90%に影響を与えるそうだ」「根本的なアルゴリズムの変更」「会話型検索に強い」「SEO専門家たちは、Googleの発表まで誰も気がついていなかった」「これからもそんなに変わらないかもしれない」「従来通り、いいコンテンツを作っていけばいい」「コンテンツ イズ キング」というのが、大方の解釈と流れ。

専門家でもなんでもないので、そこにケチをつけるつもりはありませんが、単純に利用者としたら、どんな風に便利になるの? というところが興味の対象ですし。企業の担当者やウェブ制作サイドとすれば、どこに向けてサイトづくりをすればいいのということですよね。

私はハミングバードのことを最初に知った時、ざっくりと、スマホのなどのモバイルデバイス対応、音声入力対応だろうなと社内で言っていました。


キチンとしたハミングバードの概要を知りたい方は、こちらを。たぶん最も速く記事にされたブログだと思います。
海外SEO情報ブログ-ハミングバード(Hummingbird)、Googleが新しい検索アルゴリズムを導入



▷本当にハミングバードは会話型検索に強いのか


Googleから発表されている例だけを鵜呑みにするわけにはいかないので、実際にいろいろとやってみました。その中のひとつを動画にしています。
Webデザイナーが「鼻血が出た」が適切なんじゃないかと言い出しました。単純だけど、ありそうでしょう(笑) 




鼻血が出てどうして止めるのがいいのか、注意することはないのか、なにかの病気だったりしないのか、という複数の目的で検索してみました。
トップは、薬剤師の方のサイト。止め方 →血液検査が必要な場合 →治療ということが端的にまとめられていて役立ちそうです。二番目に表示されたのは、goo ヘルスケアですが、簡単すぎて困ります。
ところが三番目の日本成人病予防協会のサイト。脱脂綿の詰め方が詳しく書いてあったり、出血しているときに頭を低くするのは間違いだと書いてあったりして、こちらの方が役立ちそうです。さらにそこから下位は、まとめサイトが出てきたりして、“ネタとしての鼻血”になっていました(笑) 
この順位は、どうなんでしょう。Google検索の目標が役立つことなら、順位自体が疑問なところです。スマホでなら、そんなに何ページも移動するでしょうか。


ハミングバードの導入で、順位が変わったのかどうかはわかりません。ただ「鼻血」というキーワードだけで検索した場合、1位はWikiでしたので、会話型で検索した方が少しは役立つ結果が出たと言えるのかもしれません。



じゃあ、止め方はわかりました。とりあえず脱脂綿が必要です。買いに行きましょう。

Googleマップで「近くのドラッグストア」と音声入力しました。位置情報が必要なので、ログインしての使用です。するとなんと位置情報は正しく表示されているのに、cicagoのdrug storeがズラッと出てきました(笑) 
しょうがないので、Googleで音声入力でやってみました。その結果は、これ。私がやるとこんなのが出てきました。Youtubeに使っているのは、Webデザイナーがやった検索結果です。

画像:スマホで音声入力「近くのドラッグストア」の結果画面


一位はアインズ&トルペ原宿クエスト店。調べたら、Perfect Beautyがお店のコンセプトでした(笑) それでも脱脂綿は売ってるかもしれません。
二位はコンドマニア原宿店。見たとたん、もう爆笑で。脱脂綿は扱ってないと思います(笑) それにしても私の検索結果は、どうしてこんなことになっているのでしょう。何か私がいけないことでもしているような(笑) 
あ、もしかしてコンドマニアをご存じないですか。じゃあ、リンクさせておきます。

そもそも原宿、表参道の店を表示するのが不思議です。


試しにSiriで、同じようにやってみました。

画像:siriで音声入力「近くのドラッグストア」の結果画面


Siriの方が頭いい! まともな検索結果です。あれ、場所の表記が宇田川町36-1のすぐそばになっている。この検索をしたのが25日の台風の時だったのですが、影響あるのでしょうか。

結局は渋谷駅前になるのですが、渋谷駅周辺のドラッグストアも、コスメに特化しているようなお店が多いです。そうすると脱脂綿があるのかどうか…
ハミングバード以前の課題として、役に立つ検索結果を得るためには、何度も検索していく必要があります。


もしかすると地域の医療情報を扱うサイトや医療機関なら、それぞれに対応するリンクを貼っておくと実際に便利ですし、順位が上がるかもしれません。検証してみないと、なんとも言えませんが。それぐらいがヒントかもしれません。


▷進んでいく方向は、メタ認知能力の獲得


「鼻血が出た」と検索しているのがお母さんで、鼻血を出しているのが子供ならどうでしょうか。Googleにはわかりませんけど、薬局や病院なら、対応した人が見るだけで、すぐにわかります。
鼻血が出ているのが大人で、顔のあちこちに擦り傷があったり、内出血があったらどうでしょう。事故にあったか、殴られたか。もしかしたら骨折しているかもしれない。破傷風に感染してるかもしれないから、検査も必要だ。人間ならそう考えて、適切な振り分けなり対応するかもしれません。

目を中心に、語感で感じるさまざまな情報があるからだし、メタ認知能力があるからです。メタ認知能力って、思考することを思考するというような、ややこしい説明がされますが、たとえばこういうことです。

熱があってお腹が痛いから、病院に行きました。医者は、症状を聞き、データベースを検索しました。すると熱がある時の風邪に対応した薬のセットがいくつか出てきました。このところ風邪が流行ってるし症状は軽そうなので、その中でもっとも効き目が穏やかな、Aセットを処方しました。
流れ作業的な、まさに単純な検索です。

一方別の医者は、お腹が痛いと言っているけれども、痛そうな顔をしていない。どこがお腹のどこが痛いのかと聞くと、動かなければ痛くない。歩いたりして足を動かすと痛いということを、患者本人も聞かれて初めて認識。医者はいくつかの仮説を元にCTを撮ることに。すると病名は、なんと結核。病巣が脊髄の周囲に入り込んでいたために神経を圧迫して腹痛として症状が出ていたということがわかった。
症状の形容詞だけで判断せず、メタ認知があったということですね。


学校の先生が、2ヵ月間も結核だとわからず、周囲にうつしていたというニュースが最近ありましたね。医者にかかっても、医者たちは結核自体が少なく、まさかと思ったということでした。
メタ認知のメタとは、高次のという意味。メタ認知の構成要素は独立したものではなく、相互に関係し合って働いているそうです。


画像:脳のイラスト


後者の医者の方が優秀なのは当然ですが、果たしてハミングバードはどうなんでしょう。Googleは日々の膨大な検索結果を蓄積しているのですから、他にはないレベルのビッグデータを持っています。会話型検索に強い、文脈を理解した検索を志向しているということは、メタ認知能力を獲得したいということ。



ハミングバードが、それほど賢くない理由


メタ認知能力の獲得が可能なのかどうか、そんなこと私にはわかりません(笑) 
今のところハミングバードの結果に、大した変化がないと思えるのは、きっと進化の途中だから。

ひとつ前の記事、『USERS』を読んで、ユーザーってなんだと考えてみたを書いていて、たしか電子版を最初にやった新聞は、日経だよなと思って、確認のために検索しました。
「日本経済新聞が電子版を出した日」で検索してみると、これがもう、まったく役に立ちません。トップは、日本経済新聞利用案内です。以下ずーっと日経の関連するサイトです。
検索した文脈どころか、こんな単純な文章を端折って解釈しています。

画像:「日本経済新聞が電子版を出した日」の検索結果

8番目にやっと関連するニュースが並びますが、これもまた関係ありません。
その次に出てきた、料金設定をなげくブログに創刊日が出ていました。でもこれが正しい日なのかどうか。スマホだったら、このページまで行っていたかどうかも怪しいです。
実は最初からそうしていたのですが、Wikiで「日本経済新聞電子版」を検索しました。そしたら、1発です。もちろんWikiが正しいかという疑いもありますが、ネット上の情報では日本経済新聞の公式発表の次ぐらいの信憑性があるでしょう。

人間は、今までの経験から検索方法を思いついて、それでほとんど満足できる結果が返ってきます。だけどWiki内で検索されてしまうと、Googleとしては困りますよね。


単純に考えれば、今のところハミングバードも賢くないけれども、利用する側も文章や音声入力で会話的な検索をそんなに検索していない。だからケーススタディの総数が少なく、まだまだ学べていないので、賢くないということではないでしょうか。


▷モバイルデバイスのその先へ


Google Glassは来年発売予定だそうです。Google Glassってなんだって? じゃあ、動画を見てください。


検索の様子が出ています。
ok glassで起動して、take pictureで写真を撮り、Googleと言えば検索ができるそうです。そう、ほとんどが音声。ただネットとはテザリングで通信するから、スマホが必要だそうです。だけど、この動画のシチュエーション、私にとっては検索が必要な場面だと思えませんし、Google Glassを欲しいとも思いません。
どうせスマホを持っているのなら、検索が必要になればスマホでいいですよね。


WIREDに、こんな記事がありました。
Mercedes-Benz社は、同社のクルマを「Google Glass」と統合しようとしている。
画像:WIREDのページ「Mercedes-Benz社は、同社のクルマをGoogle Glassと…

そう、クルマのナビとしてならアリですね。ところが、この記事の最後には
※英政府は2013年8月、運転中のGoogle Glass装着を禁止。米国ウェストヴァージニア州でも、同様の内容の法案が提出されている(日本語版記事)。
と書かれている。それはそうかも。メガネの一部に地図が出てくるなんて、かなり危険でしょう。


何が言いたいかというと、Google Glass、私は欲しくないですが、それなりに売れるでしょう。ギークな人たちは、飛びつくと思います。特に新しもの好きでもない一般的な人たちは、どうでしょうか。
Google Glassだけじゃなくて、ウェアラブルなデバイスは次々出てきます。すでに時計は、サムスンのGalaxy Gear、ソニーのSmartWatchが製品化され、アップルもiWatchの投入が噂されています。この先も服だったり、あるいはネックレスとか手袋型とか、どんどん出てくるでしょう。モバイル(携帯できるもの)からウェアラブル(身につけて持ち運ぶもの)へ。
これらの入力は、ほぼ音声だけで行なえるようになるはずです。

製品供給側はともかく、使う人が広がるかどうか。メルセデスのGoogle Glassがナシだったとしても、従来のカーナビがネットにつながり音声入力で操作できる製品はとっくに出ています。問題は、価格と音声認識の正確性。パナソニック、パイオニアなどが先行しているようですが、クラリオンはGoogleの位置情報やスマホで培った音声入力・変換システムを活用した製品を今月発売しました。
少なくとも音声入力のカーナビは、一気に普及しそうな気配です。ウェアラブルなデバイスの普及はなんともわかりませんが、音声入力の分野でもAppleとGoogleになりそうです。Googleとしては、ここで先行するしかないというわけです。

特にギークじゃなくても新しもの好きじゃなくても、どうしたって音声入力をする機会は広がる。どうしたって普及していくだろうというのが、私の推測です。

Googleはユビキタス社会の到来を予想し、その中で検索の覇権を握り続けるために、役に立つ検索エンジンであるこために、進化し続けようとしている。そのために、現在は音声入力の優位性が核となる戦略なんだろうと思います。だから会話型検索を進化させるしかない。長々と書いて来たのは、そういうことです。



▷ハミングバードに対応したサイトづくりとは


はぁ、長かった。
いや、ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございます。それでハミングバードに最適化するには、どうすんだよという声が聞こえて来そうです。
そんなことも、私は知りません(笑)
ハミングバード導入でどう変化したかを誰も検証できていないんだし、ハミングバード自体がそんなに賢くない。まだまだメタ認知とは程遠いというのが、私の考えなんですから。


ハミングバードが進化してくると、どうなるか。推測で考えてみます。
とりあえず最初の例だと、薬局の側が脱脂綿を扱っていることを検索で上位にヒットさせるためにはどうするか。
脱脂綿そのもののスペックを書いていてもしょうがないので、「鼻血をとめるための脱脂綿の使い方」というようなコンテンツを作りしかありません。もちろん渋谷駅前のドラッグストアが、仮に脱脂綿を売りたいと考えたとしても、鼻血コンテンツを作りはしないでしょう(笑) 


今回、医療系でずっと来てるので、こんな文章でオーガニック検索(ログインしていない検索)をしてみました。
パターンA「痛くなくて歯を抜かない歯列矯正をしてくれる歯科」
小さなお子さんを持つ親とか、結婚式を目前にこんな検索をする人がいそうじゃないですか。結果は、
1位.鹿児島の矯正歯科 
タイトルに「歯を抜かない矯正歯科」と入っていいる
2位.愛知県の矯正歯科 
Descriptionに「大切な永久歯を抜かないで歯並びをきれいにする」が入っています。
3位.YOMIURI ONLINEの発言小町
「顎関節症で40代からの歯列矯正について」というトピックスです。
意図を推測していれば、YOMIURI ONLINEが出ないと思うのですが…


エリアを限定しましょう。
渋谷と入れました。
パターンB「痛くなくて歯を抜かない歯列矯正をしてくれる渋谷の歯科」
1位.青森県八戸市 歯医者口コミランキング
2位.東京都日野市 歯医者口コミランキング
1位2位とも、まったく意図なんて考えられていません。
3位.渋谷の歯列矯正専門歯科
20ほどの矯正器具を解説してあってボリュームはあるものの、痛くない・抜かないとは無関係ですね。
ハミングバードは本当に今のところ、バカかもしれません(笑)


じゃあ従来通り、キーワードでやってみます。
パターンC「渋谷 歯列矯正 痛くない 抜かない」でどうなるか。
1位.情報サイトの渋谷新南口にある一般からインプランと矯正もやる歯科ページ
Q&Aもあり、それなりに詳しいが痛くない/抜かないとは無関係
2位.渋谷と横浜にある矯正/審美歯科のウェブサイト
不正咬合のタイプ別矯正方法など、かなり詳しく書かれている。
3位.2位のサイトの下位ディレクトリーページ
4位.2位のサイトの別サイト
2位〜4位までを占める矯正/審美歯科の構造を見てなるほどと思いました。今回の趣旨ではないので省きます。


どうも痛くない抜かないはニッチなキーワードのようです。パターンAの1位.2位、それにパターンCの矯正/審美歯科も該当しますが、ここの場合は痛くない抜かない矯正もやっているというだけで、専門ではありません。

私は矯正って、子供が中心だと思っていたので、痛くないとか抜かないという言葉は、かなり使われていると想像していましたが、どうもそうではないようです。
試しに「渋谷 歯列矯正 目立たない」でやってみたところ、どこも目立たない装置、白いセラミック、裏から矯正、ブライダル矯正など、関連するコンテンツが詳しく書かれているサイトばかりが並びます。


それじゃあと「目立たない歯列矯正をしてくれる渋谷の歯科」でもやってみましたが、1位は同じものの、2位に全国矯正歯科検索サイトというのが入って来ます。
やっぱりハミングバードは、バカです(笑)



▷ニッチワードで、キチンとコンテンツを作っているところが有利に?


音声入力への対応ということなら、ハミングバードがどれだけ進化しても、それほど複雑な長いしゃべりはしないでしょうから、従来のSEO的な対応だと思います。
上の、目立たない歯列矯正というようなメジャーなキーワードの場合も同様だと思います。でもニッチなワードが重要度の高い検索をした場合、ハミングバードの進化に合わせて、どうコンテンツが書かれているかで順位が激変するのではないかという気がします。
この時に、口コミサイトはともかく、ランキングサイトやリンク集みたいなものは大幅に下がるはずです。


昨年、こんな記事を書きました。
仮装・コスプレの大ブレイク
そこに原宿では、30年も前から親子で参加するハロウィンパレードが行われています。とりあえず今年は、渋谷、六本木あたりが、若者のリアルなプラットフォームになったということでしょう。たぶん、来年以降は東京都心のいろんな街に、その後は徐々に全国に広がって行き、秋の仮装イベントとして定着するかもしれません。
と書いたのですが、今年はパレードを実施する場所も増え、この時期のメインプロモーションを仮装用の衣装にした小売店やEC、メイクやネイル、写真撮影、特別メニューまで、さまざまなサービスで、お店側が盛り上がりを見せています。

たぶんコスプレ、ということよりも子供やその親世代も含めると、軽い仮装という方向に広がっているでしょう。ハロウィンが盛り上がれば盛り上がるほど、ハロウィン販促を実施している企業やお店がこの時期に検索で有利になろうと思えば、ニッチなワード、たとえば「ハロウィンの仮装メイク」を受けつけていることを書いたコンテンツが必要になるのではないでしょうか。

川崎の美容院が、Newsでただ「ハロウィンの仮装メイク予約受付中!」と書くのと、「カワサキ ハロウィンのキッズパレード用仮装メイクを親子で予約受付中!」というコンテンツを作るのとでは、検索結果がまったく違ってくると思います。
あくまで予感でしかないですが。
いずれにせよ、何を求めているかを想像してコンテンツが作られていれば、アクセスした人だって、メイクの実例が載っていたり、親子でできるということが出ていれば、そそりますよね。


ニッチなキーワードは、検索されることが少ないからニッチなんですよね。でもハロウィンのようにメジャー化したら、どうか。歯列矯正で、抜かないというのが増えて来たら、どうか。
頻繁にGoogleアナリティクスをチェックしているような人なら、どういう検索ワードでサイトに来ているか、そのトレンドを見て、有望そうな組み合わせも推測できるかもしれません(Googleは検索キーワードの提供をやめていますが、他の検索エンジンから来ているワードはわかります)。

充実したコンテンツを作るなら、先に作っていた方がハミングバードに以前の話として有利。SEOでは、古いドメインの方が有利だという意見が一般的です。検証していても、更新されていないサイトはともかく、古くからあるサイトの方が有利に扱われていると感じます。
コンテンツも、たぶん同じ。descriptionに、このページには何が書いてあるのか、キーワードも含めてちゃんと書いていれば、Googleは認識してくれますから。


2013年10月24日木曜日

『USERS』を読んで、ユーザーってなんだと考えてみた

最近読んで、一番興味深かったのは『USERS』という本。日本では翻訳本がこの9月に出て、原書は2011年に出ている。
だからといって古い感じがするかというとそんなことはなくて、多くの示唆に富んでいると私は思います。帯には[デジタル時代を生き抜くための最も重要なコンセプト]だと書かれています。
原題は、こういうもの。カスタマーじゃないんだ。ユーザーなんだと。


カスタマーって、日本語だと顧客。じゃあ『USERS』がいうところのユーザーって?
でもその前に、書いておきたいことが。この本では言及されてませんが、私は顧客という概念変わらなきゃおかしいでしょうと思っています。「購買の意思と能力のある人」と書いている辞書もありますけど、それってどうなんでしょう。まず顧客は「買ってくれた人」だし、「個人情報と結びついている人」だと考えなければ、少なくともこの本ではおかしくなってしまうでしょう。
デジタル社会の中で、誰ということがわからなければ、通りすがりに買ってくれた人というだけにしかなりません。


『USERS』が定義するユーザーとは


顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々(インフルエンサー)だと定義している。デジタル・メデイアとテクノロジーを通して企業と交流する人々を指す。
このような交流は、イントラネットやモバイル・アプリ、オンラインの求職フォーム、ウェブサイト、CRMのソフトウェア、フェイスブックページ。ツイッターのアカウントなど、企業内外で、デジタルな足跡が少しでも辿れるところならどこからでも行なわれる。つまり、デジタル・メディアやテクノロジーを通じて企業と交流する人はみんな、ユーザーなのだ。

ちょっとデジタル一辺倒になり過ぎだという気はする。この考え方だと、問い合わせやクレームの電話を入れてきた人、出資者や株主だって「ユーザー」として捉えないとおかしいです。
とりあえず細かいことは置いておいて、デジタルなつながりということだけにして進めます。 著者の概念は図になっているのですが、描き起しました。



これからは顧客よりはるかに大きなユーザー層を相手にしていかなきゃいけない。ユーザー・ファーストにならなきゃいけないことの重要性や、実際のボリュームを円の大きさで伝えたいんだと思います。
顧客の円が半分ほど外に出ていますが、これはデジタルでつながっていない購入者の存在を表現しているんでしょう。デジタル時代以前の顧客とは、まさにこの部分。顔なじみ、顔パスとか、そんなところ。


どうして、ユーザーじゃなきゃいけないのか


実際に買ってくれたお客さん=顧客だけじゃなくて、デジタルでつながる人すべて=ユーザーを相手にしなきゃいけないのか。
今でも、SNSの何が面白いのかわからない。何の役に立つのか。とか、おっしゃる方はけっこういらっしゃいます。そんな方はもう、ここでは面倒くさいので放っておきます(笑) 

そういう方にもわかる話をちょっとだけ。かつてはよく、うちは住友系だからビールはアサヒじゃなきゃいけないとか、そんな話を聞きました。強制されてるわけでもないのに、集団でも個人でも会社が属する、あるいは関係する財閥グループ企業がつくっているビールを飲む。
それって従業員やパートナー(取引関係)も、銘柄を支えてくれていた、ということですよね。


逆に従業員やパートナーにそっぽを向かれたら、どうなるでしょう。ウェブサイトで応募してきた求職者にひどい扱いをしたら、どうなるでしょう。
かつて人気企業は、新卒採用で対象にしている大学学部の学生には詳細な情報を。対象外の学生にはおざなりのものを渡していたりしましたが、今どきそんなことは、すぐにバレます。
下請け企業を、コストや納期でしばり、酷い扱いをしたらどうなるでしょう。従業員にブラック企業的な扱いをしたらどうでしょう。退社した人に、どこかの掲示板で暴露されるかもしれません。
暴露ではないですが、バイトテロによって営業停止になったというのも、似たようなもの。ネットワークされている世の中だからこそ、とんでもない破壊的なパワーを生む。


若者に急増中!"バイトテロ"の実態とは?

破壊的なところだけじゃなくて、浜田ブリトニーさんの見解が見事です



ところがデジタルでつながる多くの人が、好印象を持ってくれている企業やブランドだと、圧倒的に有利です。ポジティブな情報は、ネガティブなものほど拡散する力はありませんが、リアルなつながりだけじゃなく、ネットワークされたところで味方や応援団が多ければ、好循環が起こるはずではないでしょうか。
どうすれば、味方になってくれるのか。この本の中には、好循環バイラルした実例が、いくつか出ています。


ユーザーの中に、[ブランドのファン]が入っているのが面白い。そのブランドが好きなんだけど、地理的な条件や金銭的な理由で購入経験がない人たちもいる。
実店舗しかなかった時代、この人たちがカスタマーになってくれる確率は低かった。通販の時代になって、やや高くなり、ECの時代になると、もっと高くなった。いつ何時、買ってくれる状況になるかわからない。結果を左右するのは、ネット上のあちこちに存在があって、カートまでの導線がシンプルに用意されているかどうかになってしまった。


どうして、カスタマーだけじゃダメなのか


サブタイトルに「顧客主義の終焉」とあるのに、この理由は書かれていない。あえていえば、書いてあることのすべてが理由とも言えるけど。

規模が小さければ、現在の顧客を維持するだけで十分だ。顧客に注力しようという考え方も、根強くある。注力するのは当たり前ですけど、たぶんそれだけじゃ不十分。
たとえば新聞を自宅で購読しているのは、50代以上だと言われる。新聞各社はこの2、3年、相次いで電子版をつくり、有料化に力を入れている。成功しているかどうかは別にして、顧客だけを相手にしているとじり貧。だから顧客以外の声を聞き、デジタルでつながるカスタマーを取り込もうとしている、と言えるでしょう。ただ報道機関としての仕組みそのものが、今後どうなのかは別ですが。


本書には「なぜユーザーは買うのか」という見出しで、こんなことが書いてあります。

ユーザーの行動は率直だ。彼らは買い物をレジャー(この場合は楽しさや面白さが重要となる)を考えていない限り、最も安いところ、最も便利なところから買う。なにか買おうとする時、ユーザーはどこで買うかを決める際  ------  信用(Trust)、利便性(Convenience)、価格(Price)、そして楽しさ(Fun)=(TCPP)のバランスを考えている  ------  これらが瞬時に頭の中をよぎっている。
TCPPの考え方は人によってさまざまだ。ある人は便利なものにより多く払うだろうし、ある人はお買い得であれば信用できないところからでも買うだろう。これらは個人の考え方に左右されるものだ。利便性が最も重要に思えたとしても、別の時には自由な時間があり買い物を楽しみたいと思うかもしれない。

もっともな内容ですけど、この考えの前提になっているのは、いつでもどこでも買えるようになったということ。ユーザーには選択肢がいくらでもあり、それは顧客にとっても同様で、乗り換えが簡単に起こってしまう。ということだと思います。
しかも、従来のものを陳腐化する製品やサービスが登場するスピードも速い。顧客も浮気したくなる環境に置かれているということですね。


より優れたユーザー体験を提供できるものが最終的に勝つ


最終章に、そう書かれているのですがどうでしょう。優れたユーザー体験は重要ですけど、それがどれぐらい続くでしょう。新しく、優れたユーザー体験を提供する製品やサービスが登場するスピードも速いですよね。








2013年10月15日火曜日

SNSで使える生写真の撮り方

SNSで認められる写真力って、どんなの? の続きです。読まれていない方は、ぜひそちらから。
ここに書いている生写真の撮り方や考え方は、あくまで企業アカウント向け。個人が楽しみで投稿するのは、好きに撮って、好きに使えばぜんぜん構わないと思います。

そこでも書いていますが、仮にプロが撮っていたとしても、ほぼセッティングしていないなら生写真ということに、勝手にしました。
生写真を多用しているのはどこだと考えたらFBを探さなくたって、Google +にはいっぱいありました。AKBもですし、最近はCanCamや新世代モデルというのが大量に流れてきます。かなり人気なので、私の仮説は当たっている? ただ#cancamは生過ぎるというか、完全に素人写真のようで、ファン以外にはきびしいかも。やはりプロのも混ぜていただかないと(笑) 




それでは私がSNSの仕事でやっている生写真の撮り方です。

自然光をライティングとして使う。と割り切る。

私の場合は、これに尽きます。
時間ない中で写真を撮っていくのだから、さまざまなセッティングをしない。人工的なライティングをしないのですから、自然光でキレイに撮ることを考えるしかありません。
自然光=あるがままでは決してありませんけど、生写真の基本は自然光だと思います。
カメラはiPhone5で、ちゃちゃっと撮っています。もちろん、三脚も使いませんし。一眼レフでいろいろレンズを変えたりフィルターをつけたり、あるいはアプリやフォトショップで後加工したり、そんなこともしません。




◎自然光でキレイに撮れる場所・時間・角度を探す


- 食べものを、おいしそうに撮る方法

現実に探しているかというと、瞬間で判断しているだけなんです。事前に決めているのは窓のある方向と時間帯だけ。モノを撮るなら基本は逆光だと思っているので、東向きなら午前中です。屋外なら太陽の方向に合わせて、自分が動けばいい。
この記事用に、店を探して撮ってみました。ビルの二階で、窓が南と北にあるカフェです。会社の女子にデザートを注文してもらいました。
最初に撮ったのが、この写真。

画像:ティラミスの写真 引き

影はほぼ真下方向になっているので、逆光です。曇りだったのと、ビルの谷間にあるビルなので、メインは北西から入っていますが、けっこう光が柔らかく回っています。ホワイトクリームにかかっているベリーソースと皿に敷かれているチョコレートソースにハイライトが入って、シズル感が出るようにしました。動きを出すためにフォークでティラミスをちょっと崩してもらいましたが、でもなんか説明的で、すました感じです。

なので、もう少し寄って、下からのアングルにしました。

画像:ティラミスの写真 アップ

もう少しシズル感が強く出て、店の奥まで見えるようになったので、いいかもしれませんが、でも説明してる感じがまだ強いです。
じゃあ、もっと寄りましょう。

画像:ティラミスの写真 シズル強調



動きを出すために、斜めにしました。これだけ寄ると、なぜか画面が明るくなって、シックさがなくなりました。つまり高級感も弱くなった。
そして主役であるはずのティラミスのピントが外れています。刺さっているホワイトチョコをコーティングしたクランチも見えず、お店の雰囲気、空気感もなくなりました。

それでも私がこのお店のSNSに使う写真としてなら、これを選びます。ベリーとチョコソースのシズル感がかなり強く出ました。食べたい!と思ってもらうことが目的なので、一瞬で伝わるシズル感が一番です。しみじみ伝わる良さというのもありますけど、企業のアカウントでは、それはかなり高級な商品じゃないと。

説明的ではないですが、このお店のティラミスの感じも伝わります。
SNSなんですから、お店の雰囲気を見せるのは別の投稿でやればいいことです。
それにどんなに大きな画像サイズの写真をアップしたところで、スマホで見る人にとっては、そのサイズでしかありませんから。

このシズル感は、反射光によるものです。今度は、透過光の場合です。
アイスコーヒーを撮ってみました。

画像:アイスコーヒー シズル
窓の外が飛んでしまっていますし、黒いストローが窓枠と色も角度も近く、なんだかよくわかりません。でも生写真だから、そんなのいいんです。氷の透明感とグラスについてる汗が、冷たそうなシズル感を出しています。今度は奥行きも出て、お店の雰囲気もなんとなく伝わります。
良くいえば、レトロっぽいナチュラル系のカフェです。キレイ系ではないカフェです(笑)



- 光りものの雰囲気ある撮り方

会社の窓際でさし込む太陽光を使って撮ってもいいと思いますが、でもそれだと背景になるバック紙などを用意する必要がありますし、角度的にかなり制限されます。それなら、いっそのこと外へ出た方が早い。

歩道の植え込みのところで、ボールペンを撮ってみました。

画像:ボールペン撮影



これも金属のところにハイライトが入るように反射させて、質感を出します。頭の透明なところがレンズのようになって、その下に光を集めています。影の方向の見ていただければ、これがほとんど逆光に近いということがわかるでしょう。
どういう場所を選んだかというと、木漏れ日が落ちてきて、光が単調ではないところ。右上がかなり白くなっていますが、そこにはほぼダイレクトに自然光が届いているんです。そういう自然の光のムラが、雰囲気を作ってくれています。

このモンブランは、何年も前にいただいたものなので、けっこう傷がついています(笑) さすがに本当に仕事で使うなら、金属もの専用の磨き粉を使わないとダメですが、とりあえず意図は伝わりましたでしょうか。
この写真は、iPhoneの任意の場所にピントと明るさを固定する機能を使っています。ピントが浅く、背景がボケているのも雰囲気を作ってくれていますね。


自然に見える色合いだけじゃダメだ。商品によっては、もっと過激に見せることが必要だという場合もあるでしょう。これもアプリやフォトショップで後加工するのではなく、やれる方法があります。
この写真、ひとりで撮りました。自分の右手でボールペンを持ち、左手の中指と親指でiPhoneをはさみ、人差し指でシャッターボタンを押しました。でもこの光、どうやっていると思いますか? 

画像:ボールペン撮影 反射光

太陽を背に立ちました。だから手には影ができています。そして左側にはコーラの自販機があり、赤い専用のゴミ箱があります。
そこに太陽光が反射して、赤い色の光を放っています。肉眼だと目がかってに補正して、そんなに赤を感じることはありませんが、カメラだと、この通りです。
全体に色調補正で赤を被せるのとはかなり違って、不思議な感じが出ていると思います。





◎ライブ感を出すには、胸で撮る。


・屋外で、お店などの雰囲気を見せる撮り方

このブログ用に撮ったものではありませんが、個人的にGoogle + などに投稿した写真を見てください。ASOKOという雑貨店が原宿にオープンした日の、夕方近くの様子です。

画像:ASOKO オープン
近くに行っていたので、どんな様子なのだろうと前を通ってみました。明治通りなので、それなりに人も歩いています。
そんな時は、iPhoneを胸に付けるようにして、胸を対象に向けながら撮ります。カバンも持っているので、水平になりにくいですし、ぶれやすい。でも私は、その自然な感じがいいと思っています。
画面を見ていると、歩いてくる人がどうなっているか見ることができません。胸で構えて、周囲の人の流れを見ながら、ここだというところでシャッターを押します。
写真の中に人が入っていることで、注目されている感じが伝わりませんか。不動産会社の物件案内じゃないので、人感があった方がいいと思います。

こういう場合、気をつけなきゃいけないのは人の顔。少なくとも、顔認証できないぐらいの状態になっていないと。そういう観点からも、むしろ多少ぶれている方がいいと思います。


もう一枚。渋谷PARCOのスペイン坂広場に設置されていた、Androidのゲームアプリをダウンロード販売しているGoogle自販機。前日の出勤時に無人の状態の写真をGoogle + に投稿したので、もっと人のいる様子を撮ろうと思っていました。翌日の夕方、出かけた時に撮ったものです。

画像:渋谷PARCOのGoogle自販機

これは胸ではなく、腹で撮りました。アングルが低いでしょう(笑)
プロのカメラマンなら、しゃがんだり、あるいは道路に寝転がっても撮るでしょう。でも趣旨が違います。胸でも腹でも、もちろん目でも、どこに構えるかは三段階ぐらいにして、ざっくりとアングルを決めます。 画面を見なくても、iPhoneなら自動露出/オートフォーカスなので便利です。
あとは胸や腹を対象に、まっすぐ向けて撮るだけ。バスケットボールや野球などのキャッチする基本と似ているかも。


この写真の場合、右端のキレイなお姉さんは顔認証されませんし肖像権にも抵触しないと思うものの、大きく出来ないよう、小さめのサイズでアップするなどの配慮が必要です。iPhoneからそのままSNSに上げてしまうと、巨大なサイズになりますから。 そして写っている人がどう感じるか、どういう扱いの写真なのかがポイントです。

当然、実際の仕事でならもっと自販機のそばに寄りますし、ASOKOの場合も最も人が並んでいる開店前から陣取って、開店直後ぐらいを狙います。そういう場合、後ろから写したり、意図的にぶらして写しています。


あくまで、ライブ感のある生写真を、iPhoneでサッと撮る方法論です。胸でも腹でも、全体を見渡すことができるのでオススメです。





 ソーシャルメディアマーケティング、うまく行ってますか?



2013年10月9日水曜日

SNSで認められる写真力って、どんなの?

ブルータスの10/15号は、写真特集。ほめられる写真というタイトル。

「日本で一番売れた写真集。」は、宮沢りえ『Santa Fe』とか。「世界中が知る一枚。」として、アルバム『ダブル・ファンタジー』のジャケットに使われたジョンとヨーコのキス写真とか、篠山紀信さんの “ ほめられる写真を撮ろう!” という宣言が書いてあって、はいはい、ごもっともですとページをめくり。
構図やテクニック的なことから心構えみたいなことまで網羅されてて、参考になりました。ところが「SNSで学び、磨き、認められる写真力」という記事を読みながら、そうか?と思うところがいくつか。少なくともタイトルと内容は、マッチしていないかな。

画像:ブルータス10/15号 ほめられる写真



◎写真そのものよりも、タイミングや文脈が大切

この記事は電通の方と博報堂の方とFacebookの方の三人の対談。
ブルータスの記事だから、個人が対象。個人の投稿写真が「いいね!」されるための仕組みを考察したということですが。

Facebookの方が、こうおっしゃっています。

FBはいろんな種類の人との繋がり。そこに小学校時代の幼馴染みもいれば取引先のクライアントもいる。そこにいる全員に刺さるものと、ターゲティングされた相手に刺さるものは、まずきちんと区別して考えないといけないと思います。(中略)それによって撮るべき写真も変わってくるはず。


いやぁ〜、そんな区別をしている個人がいるんでしょうか(笑) 
パーソナルブランディングで商売できるノマドな有名人や、プロカメラマン、あるいはカメラマンになりたいと思っている人。もしかしたら出会いを求めている人ならやってるかもしれませんが、それにしても「撮りわけることができる」なんて、写真のプロだけでしょう。
もしそんなに「いいね!」をもらいたいと考えている個人が多いのなら、やはりFBはリア充っぷりが気持ち悪いとか、盛りすぎ女子とか、オヤジのタバコ部屋という数々の指摘が正しいのかもしれません。


博報堂の女性のプロデューサーが、こうおっしゃっています。

8月29日にあらゆる人がニク(29)の日でおいしそうな焼き肉の写真を流していて。悔しくて「私だって!」と牛丼屋で一人寂しく誰とも会話せずご飯を食べてる写真をアップしたら反応が大きくて。これは写真そのものよりツッコミやすいネタや物語性を見出しているんだなと思いました。


そんなもんです。まったくその通りで、「いいね!」をもらいたいなら、ツッコミやすく、タイミング良く、流れに乗ることですよね。Twitterなら、なおさらです。
※単純に「いいね!」じゃなく、拡散することならもっと違う構造がありますが。こちらを参照してください。バイラルの構造



企業アカウントにも人間味が求められる

私がここで個人のことを書いてても意味がないので、そろそろ企業アカウントのことに移行させてください。
このブルータスの対談、企業ページのことに置き換えれば、かなり納得なんです。

電通のクリエイティブディレクターの方が、企業アカウントについて語られているところを抜粋。

あとは逆に本来メディアであるはずの企業アカウントにはパーソナリティが求められている。それも面白い事実です。
ただきれいだとか、ただすごいというものではなく、血の通った湿度のある写真の方が、ユーザーとの距離が縮まるということですね。


まったくその通りで、 企業アカウントも個人アカウントに求められるところと限りなく近い。ただ、その中でもFBはまだフォーマルというか公式的。Twitterがほぼ個人に近いカジュアルな位置にあって、Google + はその中間だと私は考えています。



血の通った写真とは、生写真と考えればいい

先日、ある広告代理店の人からSNSでどういう写真を使えばいいのか。宣伝用の写真だけじゃ、月に何度も出せないし、という趣旨のことを聞かれました。
ですよね。企業アカウントが注目されるには、投稿頻度だってかなり重要です。
※詳しくは、こちらを参照 ソーシャルの仕掛け方 

B to C企業であれば、いくらでもネタはあるはずです。もしないとしたら、ソーシャルメディアうんぬんの前に、ニュースレス、情報性のないことが問題でしょう。


印刷物、あるいはサイト上で大きく使う写真は、いわば整形美人。背景などをセッティングし、ライティングして、さらには合成や修正までする。うちでも通常の撮影の仕事では、素材となる写真を部分ごとに何枚も撮って、合成するのが当たり前になってきました。
そういう隙のない完成された写真は必要ですけど、SNSではそれだけじゃツライ。整形している顔を毎日見るのはしんどいから、素人が自社のニュースに合わせてバシャバシャ撮って、投稿すればいいんです。ポイントは、整形したものと、素のものとのバランスで。
気取ったハイブランドなら、整形した公式写真だけでもok。だけど親しみやすい存在になりたいなら、ブレがあっても、水平がおかしくても、多少不都合なものが写っていたっていいんじゃないですか。
実際、うちがソーシャルメディアの運営を請け負っているところでは、そうしていますよとお話ししました。

そしたら「それは生写真と同じですね」と言われて。え、生写真!? 生写真ってなんですかとお聞きすると「アイドルもので、いわゆるブロマイドや宣材じゃない写真が人気なんですよ」ということでした。あ、なるほどね! 
仮にプロが撮っていたとしても、ほぼセッティングしていないなら生写真ということに、勝手にしました。


ということは、と、ある仮説が浮かんで、FBのAKB48のページをチェックしてみました。もしかすると、生写真の方が「いいね!」の数が多いんじゃないかと。
そしたら宣材写真も生写真っぽいのもなんでもかんでも「いいね!」されまくりで、参考になりません(笑)


バランスのいいところはないか探してみたら、BEAMSを発見しました。
約15日間で、9回投稿。うち生写真っぽいのが4回。雑誌LEE絡みのともさかりえさんの画像を使った投稿が476「いいね!」。コンバースの壁面ディスプレイを撮った投稿が954「いいね!」。最新のところだけ取り出しましたが、そんなに外れてはいないようです。


画像:BEAMS.co.jp FBページ
        https://www.facebook.com/BEAMS.co.jp




能書きはこれぐらいにして、
次回は、じゃあ具体的にどう撮るのというところを書いてみます。
私はこうしてますよ、ということだけですけれども。


※書きました。
SNSで使える生写真の撮り方


 ソーシャルメディアマーケティング、うまく行ってますか?



2013年10月4日金曜日

O2Oシフトの、異常なポイント競争

O2Oの、これからという記事を書いて以来、今までの興味のなかった楽天やTポイントの広告が目に止まるようになりました。

ネットを利用していれば、ディスプレイ広告(バナー)がいくらでも出てきます。それを見て、あらら、これは異常。以前、割引とポイントと囲い込みとで、パルコカードは気合いが入り過ぎですと書きましたが、ぜんぜん甘かったです。

画像:Tポイントのイベントカー


「O2Oの、これから」で書いたYahoo! ・Tポイント連合や楽天からチェックしてみました。


▶Yahoo! ・Tポイント連合は、利用サービスのポイントプレゼントが大きい

Yahoo! JCBカードに入ると、Tポイントを、なんと5,000ポイントプレゼントと書いてあります。

画像:YAHOO! JCBのTポイントプレゼント

画像:YAHOO! JCBの各種サービスでTポイントプレゼント

「O2Oの、これから」でFX始めたら5000ポイントプレゼントという話に驚いてたら、今回は毎月最大30,000ポイント貯まると書いてあって、桁が違います。内容は、こういうこと。

画像:Tポイントの新TRADEでポイントプレゼントの内容

すでに口座持ってる人は、「月間取引高が1000万通貨以上で、月間預かり円資産平均が200万以上」ということですから、かなりハードル高いですけど、でも30,000ポイントくれるなんて、けっこう大胆かと。




▶楽天カードは、新規入会時のポイント還元の高さ


一方、楽天陣営は、どうかというと

画像:楽天カードの限定ポイントプレゼント告知

テレビCMでは、5000ポイントと打ち出していたと思いますが、今だけ8,000ポイントって、どういうこと?

画像:楽天カードのポイントプレゼントの内容1

画像:楽天カードのポイントプレゼントの内容2


家族カードを申し込むと1,000ポイントとか、楽天Edy付きにすると315ポイントとか、感謝デーにエントリーと買い物で600ポイントとか、いったいどうなってるんでしょう。
これ、細かいところを読まずに入ってしまう人が続出しそうです。楽天は、なんでもそんな感じですけど、それにしても異常なポイントプレゼントじゃないですか。




私はポイントカードもクレジットカードについても詳しくないですけど、今までこんなキャンペーンはないでしょう。ポイントを重要視した入会者獲得競争はとんでもないことになっているようです。



▶自社サービスへの送客、囲い込みに特化したリクルートカード

もうひとつ、O2O絡みで、大々的にやりだしたリクルートカードを調べてみました。
画像:リクルートカードのポイントプレゼント

最大11,000円分といっても、じゃらん限定が8,000ポイント。ポンパレモール限定ポイントが3,000円ということですから、趣味趣向が合えばとおトクかもというところです。
それよりもポイント還元率2.0%で、さらにリクルート運営サービスを使うとプラスになるということなので、完全にO2O。
でもリクルートは、採用ビジネスがメインなはずなので、この先何をやるのか、ちょっと恐ろしいかもしれません。

画像:リクルートカードのポイントプレゼントの内容





▶大手クレジット各社も、


じゃあ、そもそもクレジットカード会社単独のカードは、どうなっているのか。ざっと調べてみました。
大手で、もっとすさまじいのがありました。JCB EITはポイントではなく最大6,000円のキャッシュバックだそうです。

画像:JCB EITのキャッシュバック

まず新規登録で、1,000円キャッシュバック。一定期間に10万円以上利用したら、3,000円。公共料金の支払いで最大1,000円。QUICPayで3,000円以上使ったら、800円。マイページにログインしたら200円を、それぞれキャッシュバックという内容なので、ハードルが高いというよりも、このカード1枚だけで囲い込みたいということなんでしょうか。
しかも、このカードはリボ払い専用なので、若者が主なターゲットのように思えます。

※発見してしまったのですが、特定の比較サイトから飛ぶと、最大7,000円キャッシュバックになっています。テストマーケティングだと思いますが、シビアに比較する人向けの施策でしょう(笑)




三井住友VISAは、ギフトカードで最大8,000円分プレゼントだそうです。

画像:三井住友VISAのプレゼント

ドコモのおサイフケータイ/iDに入会で1,000円分のギフトカードプレゼントとか、かなり限定されてしまいますが大手では、このあたりが最も加入時の条件が良さそうです。




この記事は、新たにクレジットカードに入りましょうとお薦めしてるわけではありませんし、書いている情報は10月4日現在のもので、今後どんなサービスになるのか想像できません。
ただ加入時のプレゼントからすると加入獲得競争は加熱しているようですし、Yahoo! ・Tポイント連合や楽天のポイントは、ポイントが付く加盟店はもちろん、ポイントが使える場所がこれだけ広がってくると、まるで通貨のようです。実際の現金と変わらなければ、衝動的な人は、どんどん取り込まれてしまいそうなのでご注意を。


ここで疑問です。買い物をする、サービスを利用することでポイントが付くなら、実質的な値引き。ポイント付与競争が激化すれば、値引きが激化しているのと同じだから、デフレがより進行すると考えていいでしょうか。

あるいはリクルートカードのように、カード利用・サービス利用両方でポイントが付くような仕組みが拡大するなら、日銀が発行している1万円札は、12,400円とか16,000円とかの価値を持ってしまう? ということは、1万円札の価値が目減りしてインフレが進行するということ?


どうなんでしょう。今までの経済学とは、相容れない状況のような。
教えて、えらい人(笑)



使っている画像は、下記の各サイトからスクリーンショットさせていただきました。
今現在の私の環境からなので、同じ内容が表示されるかどうかはわかりません。

Yahoo! JCBカード
楽天カード
リクルートカード
JCB EIT
三井住友VISA