このところ出回ってる面白いツイートがあります。
日経コンピュータの記事を読んでないので、詳しいことは分かりませんが、このツイート自体は、とても面白い。世の中のビックデータバブルに対して、アイロニカルな視線を端的に言葉にしています。
私も、ビックデータバブルには、なんだそれ、と思っています。売る側もですし、一般の企業でもデータを集めさえすれば何かできると思っているところは少なくないでしょう。データがビックだから、解析する費用もビックなんだとしたら、それで出て来た有益なはずの知見は、お店にとって、どういう有益さがあるんでしょう。
常識的に考えられることを、科学的に解明したということ? そんなバカな、ねぇ(笑)
最近、話題になっている『統計学が最強の学問である』という、大胆なタイトルの本があります。著者は「あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。 どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である」とおっしゃっています。この本の中にも、上のツイートと似たような話が出てきます。
「心筋梗塞で死亡した人の95%が生前に食べていて、強盗や殺人などの凶悪犯の70%以上が犯行前24時間以内に食べていた物があります。この危険な食べ物を禁止すべきか」
この危険な食べ物とは… 答えは、ご飯(笑) これは適切な比較をしていないと。
適切な比較とはどういうことかというと、四分割表による比較ということになるでしょうか。そこで出てくるのが、19世紀のロンドンで流行したコレラ。疫学の最初の研究が、この時に始まったそうです。ロンドン中の医師や科学者、役人が対策を繰り出したが、どれも効果がない。ところがスノウという外科医が調査したところ、水道会社Aを利用している家が水道会社Bを利用する家より8・5倍も死亡者が多かったので「とりあえずAの水は使うな、以上」という解決策を打ち出した。これにより、何十万人もの命が救われたといいます。
つまり因果関係はわからないけども、相関関係があり、それが統計学として、疫学的に有意であるということでしょうか。
そりゃあもう相関関係で判断できるなら、とてもスピーディです。
じゃあこれがダイエットの方法なら、どうでしょうか。毎年、無数のダイエット方法が出てきますが、効果があった人、なかった人を四分割表で比較していくと、最も効果的な手段が見つかるでしょうか。短期的に体重が減ったという結果だけなら、カンタンかもしれません。でもそれによって、シワシワになったとか、バストが小さくなったとか、2ヵ月後にはリバウンドしたとか、そんな副作用的なことまで含めるとどうでしょう。
医薬品だって、予期せぬ副作用が出てくるのに、何十年経ったあとのことなんて、実際は誰にも予想できないでしょう。
疫学も、何十年先のことまでは考慮していないようです。考慮していたら、とてもじゃないけど、スピーディには結論を出せない。良くも悪くも、そこのところを押さえておく必要があるのではないでしょうか。
つい先日、クライアントの方からこんな話を聞きました。その企業のトップが、ある世界的なコンサルから「スーパーボウルにおけるオレオの素晴らしい対応」についての話を聞き、「当社もオレオのような対応ができないのか」と社内でおっしゃったそうです。
スーパーボウルでのオレオの対応とは、有名な話です。
WIREDから、抜粋します。
「第47回スーパーボウル」の第3クォーター中に34分の停電が発生したが、オレオのソーシャルメディア・チームは、その絶好の機会をうまく利用したのだ。「停電? だいじょうぶさ」というツイートとともに、スポットライトの当たったオレオの画像。そこには「暗闇でもダンクする(オレオをミルクに浸す)ことはできる」というキャプションが付いていた。
このツイートは公開直後から注目を集め、リツイート数は15,000近くに上り、「Facebook」の「いいね」の数も20,000件を上回った。ビヨンセのハーフタイムショーほどではなかったにしても、クッキーメーカーのちょっとしたジョークとしては非常に印象的な数字だ。
スーパーボウルのテレビ放送は、全米が注目する超ゴールデンタイム。広告主は巨額の費用を費やして、CMを流します。オレオもCMを流していたのですが、ソーシャルメディアというタダ同然のツールを使って、CMを流すより、費用対効果ではもしかしたら高い効果を上げたのかもしれないというところが、ポイントなんだと思います。
でも、あ、しかしですよ。ものすごく誤解があると思うのですが、WIREDによれば、「スーパーボウル中に何が起ころうとも、15人のソーシャルメディア・チームがオンラインで対応できるように待機していたということだ。コピーライター、戦略を立てる人、アーティストたちが、10分以内であらゆる状況に対応できる状態で構えていたのだ」そうです。
しかも、CNET News(元記事はCBS Interactive)によると、「Oreoの幹部陣が部屋に待機し、いつでも引き金を引ける状態にしていたことだ」そうです。だから、最小限の時間とわずかな費用で、素早く行動できたということでしょう。私はてっきり、ソーシャルメディア・チームが独自に判断して、発信したのかと思っていました。
大抵の組織は、そんな風に出来ませんよね。瞬時に判断して、瞬時に発信することが、最も効果的なのに、です。オレオの成功例を世界的なコンサルが事例に挙げるなら、ソーシャルメディアの効果的な使い方としてよりも、そういう意思決定の速さだったり、経営層が現場に密着しているような組織になりましょうというレクチャーの方がはるかに有益だと思います。離れた場所から引き金を引いても、当たらないですから。
最初に書いたビックデータ神話に関するツイート。今どき、夏だってブーツを履いてる人は、けっこういます。冬場だって、流行のタイプだから売れてるにしても、立地によって、かなりタイミングが違うはず。トレンドの先取りなのか、終わりの方なのか。人によっても違うでしょう。
明日、雪がふるという天気予報なら、いつもとは異なるタイプが売れるかもしれませんし、異なる客層が来るかもしれないじゃないですか。
ドラッグストアが雨の時にはビニール傘を出したりとか、日差しの強い日には日焼け止めを出したり、臨機応変な店頭づくりをしているじゃないですか。そういうタイムリーに変化するための判断ができる目安を、ビッグデータから解析できれば意味があるんじゃないでしょうか?
いや、もしかするとビッグデータに、さらにビッグな情報を加えないと、意味のある解析は出来ないかもしれないです。
「雨に日は肉の売上が高くなる」的なデータマイニングは、一度相関関係を知ってしまえば、それで対応できる。でもタイムリーな因果関係を捉える方が、もっと重要ではないかという気がします。
そしてたぶん、タイムリーな因果関係は販売現場が一番実感してて、経営層が瞬時の判断をしない、できないのではないでしょうか。
相関関係なら、競合だって、すぐにマネできるわけですし、前例があれば、慎重な人も追従しやすい。
耐久消費財などは別にして、ソーシャルメディアの時代には、対応するスピードこそ命。
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