7年ぶりに新作を発表し、8月末からワールド・ツアーを決行しているジャネット・ジャクソン。ところがコンサート映像をInstagramに投稿したファンたちのアカウントが凍結されるという事態が相次ぎ、アカウントそのものが削除される人まで出たそうです。
この騒動にジャネットは、こんな投稿をしました。
「私のチームは、このツアーや将来のプロジェクトのために私たちが創り出している知的所有権を守ることにとても熱心なの。私に代わって、ソーシャル・メディアのアカウントを削除するのが彼らの目的ではなかった。長い映像を使うのを許可すると、これらのプロジェクトにおける契約上の問題が生じる。みんなが理解してくれることを願っています。私は、ファンは短い録音物を自分たちの思い出のために使ったり、適切なソーシャル・メディア・ネットワークで共有しているのだと信じています」
「チームには対応の仕方を変更し、みんなが映像を共有できるよう要請しました。私が拠りどころとしているこの愛がなければ、私はいまここにいないであろうことは承知しています」
ジャネット・ジャクソン、ファンのSNSアカウント凍結問題に言及
私はマーケティングとしても、ジャネット・ジャクソンの考えが正しいと思います。ソーシャルメディアでの話題がツアー、そしてアルバムセールスやグッズのセールスに繋がるはずです。ソーシャルメディアの時代以前から、ファンにそっぽを向かれて人気が急降下した例は数多くありますよね。もちろん映像化権などを持つ権利者は、そんなこと言ってられないとは思います。
ともあれ、ここで重要なのは、権利者側からの通報でInstagramはユーザーのアカウントを凍結したり、削除したということですね。
Instagramの持ち主はFacebookなので、Facebookでも同様の通報があれば即アカウント凍結になるかもしれません。
今年の前半、「ツイッターのアカウントが凍結された」という話をネット上で頻繁に見かけました。いったいアカウントの凍結や削除は、どうして起こるのでしょう。
周囲で凍結されたり、削除された人はいないので、調べてみました。
ツイッターのルールは、細かく規定されている
普通に考えて、それぞれのサービスが定めている利用規約に反すれば、凍結されても不思議ではないでしょう。逆に乗っ取り以外では利用規約を守ってさえいれば、凍結されないと考えていいはずです。
ツイッターの利用規約を読んでいると、「Twitterルールをご覧ください」と出てきます。
Twitterルールはいっぱいあります。主要な項目だけ、抜粋してみます。他にもありますので運用している方は、ツイッターのルールページを一読してみてください。
なりすまし
他者の個人情報または機密情報を、本人の承認や許可の表明なく公開、投稿すること
暴力および脅迫やその奨励明確で、かつ完全な著作権の侵害非合法利用
Twitterでのバッジの誤使用アカウントの大量作成
特定の人物に向けた罵倒や嫌がらせ
1ユーザーへ複数アカウントからメッセージを送信
不正アカウントの取得
招待スパム
ユーザー名の売買
マルウェア/フィッシングスパム
ツイートの更新が、主にリンクのみであり、人的でない場合
多数の人にブロックされている場合
そのアカウントに対する多数のスパム報告があった場合
重複した内容を、複数アカウントから投稿した場合、またはひとつのアカウントで重複した内容を複数投稿した場合
ハッシュタグ、トレンドトピックや人気のトピック、プロモトレンドなどを使用し、そのトピックとは関係のない更新を複数投稿した場合
重複した内容の返信や@ツイートを多数送信した場合
ツイッターのルール
と大筋では常識的なところです。
そういう行為もあるから禁止しているわけねと、通常では気がつかないような細かなルールもあります。重複した内容を複数アカウントから投稿したり、関係のないハッシュタグを付けるのは、大手でもやっているところはありますよね。違反していること以前に、関係の薄いハッシュタグで表示されたとしても、ネガティブな印象が拡散するだけです。
いままで大丈夫でも、同様のルール違反をするアカウントが増え、目に余るようになれば、一気に凍結されたり、削除する可能性も少なくありません。
どのソーシャルメディアでも、きっと同じです。凍結や削除に、手順を踏むかどうかの程度に違いがあるだけでしょう。
Facebookは大きく四つの目安で、削除の基準を出している
Facebookでは「コミュニティ規定」というページで、どんなコンテンツをシェアしていいのか、どんなものが報告や削除の対象になるのかという目安を出しています。
四つのカテゴリーは安全の確保、礼儀正しい行動、アカウントと個人情報の保護、著作物の保護の四つです。
それぞれ細かな内容が書かれていますので、一読してみてください。
コミュニティ規定
注目すべきは最後の、「不正利用の報告」という項目。ここには、こう書かれています。
弊社では、誰もが快適にFacebookを利用できるよう、不適切なコンテンツの排除に努めています。そのためには利用者の皆様のご協力が必要です。Facebook上で利用規約に違反していると思われるコンテンツを見つけた場合は、弊社にご報告ください。世界各地の専門チームが報告の内容を確認し、Facebookを引き続き安心してご利用いただけるよう適切な対応をいたします。フェイスブックの利用規約では、漏れがあるかもしれない。また人それぞれ、不快に思ったり違法だと思う内容は違うから、報告してください。それがこれからのFacebookを作りますというニュアンスでしょうか。それなら「コミュニティ規定」というタイトルにした理由もうなづけます。
Instagramはモラル、そして知的所有権の侵害に敏感?
Instagramの利用規約やコミュニティガイドラインは独特です。一般的なユーザーに対してわかりやすく説明しているというよりも、法律面だけではなく、モラルとしても正しいガイドラインであることを重視しているのかもしれません。
削除に関しては、利用規約にこう書かれています。
Instagramは、自らの裁量により、利用者が本規約に違反したと判断した場合、利用者のアカウントを削除します。利用者は、本サービスに投稿されたユーザーコンテンツについてInstagramが責任を負わないこと、および利用者が本サービスを自己責任で利用することについて理解し、同意します。ここまでは常識的だと思いますが、利用者は利用規約やコミュニティガイドラインのすべてを読み、遵守する必要が求められています。
しかしその内容は、日本で読むとかなり厳格かもしれません。たとえば、こんなことが書かれています。
■写真やビデオは、自分で撮ったか、共有する権利を得ているもののみをシェアしてください。Instagramに投稿されたコンテンツは、投稿者の所有物です。偽りのないコンテンツを投稿することを心がけ、インターネットからコピーまたは入手した、あなた自身が投稿する権利を持っていないものは投稿しないでください。知的所有権について詳しくは、こちらをご覧ください。
■多様なターゲット層に適した写真とビデオを投稿してください。利用規約
芸術的・創造的なヌード画像をシェアしたくなることもあるでしょう。しかし、さまざまな理由から、Instagramではヌード画像を許可していません。それには、性行為や性器、衣服を着けていない臀部のアップの写真、ビデオ、デジタル処理で作成されたコンテンツなどが含まれます。また、女性の乳首の写真も含まれますが、乳房切除術後の瘢痕や授乳をしている女性の写真は許可されます。ヌードの絵画や彫刻の写真も許可されています。
コミュニティガイドライン
自分が撮った写真でも「共有する権利を得ている」かどうかは微妙です。食事に行ってその料理の写真を撮ったとしても、シェフやお店が共有することを「許可している」かどうかは、わかりません。
ヌードは禁止だけれども、ヌードの絵画はいいとのことですが、美術館で撮影禁止になっていたとしてもInstagram側には、わかりません。
ヌードに関しては、今年の夏、ハッシュタグ#EDMが禁止されました。EDMとは、Electronic Dance Musicのことですが、#EDMを付けたヌードの投稿が多過ぎるという理由なんだそうです。
「ヌード多すぎ」Instagramがハッシュタグ#EDMを禁止
この記事では「踊ってアツくなって脱いだのか、それとも人気のタグが利用されただけなのか…」と書かれていますが、海外の音楽フェスやレイブ(ダンスミュージックの音楽イベント・パーティー)では脱いでしまって上半身裸の写真などは、昔から多くありました。あまりタグだけ利用して裸を見せる人が多いとは想像しにくいのですが、実際はどうだったんでしょうか。
また知的所有権のページからは、著作権、商標それぞれのページにリンクし、詳しく書かれているだけではなく、報告ページや著作権法指定代理人への連絡方法のページまで用意されています。しかし通報の入力フォームはかなり面倒くさそうなので、通報を推奨しているわけでもなさそうです。
報告/通報のハードルと効果
ジャネット・ジャクソンファンのアカウントが凍結されたのは、この「通報」ですね。
著作権や商標を侵害されていることが致命的な問題になるようなグローバルブランドなら、侵害を日々探しているでしょうし、見つけたら即通報するでしょう。
日本では、そんなことをしているのは大企業でも少ないかもしれません。ただ権利者は、自分で見つけて、自分で通報する必要があるということですね。
私はSNSではありませんが、ブログの記事をまるごとパクられて、ブログの運営会社に通報したことが二度あります。両社とも日本のサービスですが、まったくなんの返答もなく、無視されています。削除を期待して送ったわけではなく、どういう対応をするのか知りたかったのです。
二度とも、完全コピーに一、二行足しただけの、アフェリエイト誘導ものだったので悪質です。報告をするためのリンクは見つけにくく、あえて探せないようにしているのでしょう。ましてや利用者でも顧客でもない相手に、運営会社は手間をかけて対応する気がないのでしょう。スパム行為も放置しています。
アメリカ企業であれば、そうはしないのではないでしょうか。このBloggerなら、運営しているのはGoogle。Googleは検索から外すことと同様に、明らかな完コピを通報して、放置するとは思えません。様々なグローバルなソーシャルメディアも同じでしょう。
日本だと運営会社は「それぐらい、目くじら立てなくたっていいじゃん。めんどくさ」ぐらいの意識かもしれませんが、アメリカだと著作権の侵害は一大事。法令違反も放置すれば訴訟リスクも高いですし、なによりそんな企業だという「評判」を恐れるはずです。
そういうこともあって積極的に勧めているのではないにせよ、通報方法を目立たせているのでしょう。
もっともシンプルなのはTwitterで、そのツイートから報告できます。利用規約も含め、ユーザーにわかりやすく使いやすい工夫をしているのは、Twitterだけかもしれません。
そればかりではなく、Twitterは定期的にアカウントを削除したり、凍結したりしていると思われます。そのために細かく「ツイッターのルール」を書いているのでしょう。実名が必要ないサービスなので、アルゴリズムで大量に削除しないと健全性が保てないのだと思います。
その他のソーシャルメディアでは、もっとも重視しているのが、報告/通報ではないかと、私は想像しています。
アメリカで管理していることの限界
実名制ならいいかというと… 今年の6月、爆風スランプのドラマーでRUNNERの作曲者、ファンキー末吉さんのFacebookアカウントが凍結されました。
ご本人のブログに、書かれています。要約すると、
FacebookからあなたのFacebookアカウントに登録されている名前は実名ではないようです。「名前を変更して下さい」と言われてログイン出来なくなった。
アカウントの名前がすでに日常的に使用されている名前になっている場合、この名前があなたの身元を表す上で最適なものであることを確認にご利用いただける書類は、多数認められています。詳しくは以下のヘルプページをご覧くださいというメールが来たので、手続きした。
パスポートの写真ページも添付した。
それでログインしようと思ったら「名前を変更して下さい」になって、変更したら同じメッセージが出て、また振り出しに戻る。誰かFacebookチームとやらへの連絡方法知ってたらワシの代わりにクレーム言って〜
というもの。
Facebookにログイン出来なくなった(>_<)
凍結されたのが6月29日で、7月2日にはG+で「Google+にだけ投稿してみよう」と投稿されていますので、数日間は凍結されたままだったようです。
現在、ファンキー末吉さんのFacebookアカウントはありますが、何もない状態です。
Facebookが身元を確認する方法としているものは、◯公的身分証明書 ◯非政府発行身分証明書2通(プロフィールに記載されている情報に一致する写真か生年月日が含まれている) ◯その他の方法 となっています。
いやあ、たかだかFacebookをやるために、そんなものまで提出するなんてバカバカしいと思いますが、なりすまし等の被害を防ぐためには、しょうがないのかもしれません。
日本でなら、爆風スランプだ、RUNNERの作曲者だと言えば誰でもわかりますが、アメリカだと無名でしょう。
身分証明書を出したところで、それが芸名とどうつながるのか。テレビ出演や雑誌の映像を提出でもしないと難しそうです。
でも考えてみれば、実名制で、実際のつながりを持つ友だちが核になっているFacebookなら、友だち何名以上の確認が出来れば、芸名などの通称もOKにしたって良さそうです。万が一の訴訟リスクでしょうか。
うちでも、似たようなまどろっこしい出来事がありました。SNSではありませんが登録しているメールアドレスを変更したら、旧アドレスと新アドレス両方に確認メールが行き、すでに旧アドレスはメールサーバー自体を削除していたので、そのサービスを受けられなくなった。旧アドレスにも確認メールが行くなんて、どこにも書いてありませんでした。
サポートに電話したら、10日経てばメールが届かなかったと判定されて別の手続きが出来るとのことでした。
いったん電話を切ったのですが、すぐこの電話番号は利用料金を払っているユーザーとして登録されているはずだし、本人確認としては一番確実じゃないかと思い、再度電話しました。それですぐに復旧しました。
そう、本人確認では電話が、簡単で確実なはずです。
身元確認に、電話番号を登録させる流れ
そこまで煩くしているFacebookでも、実名ではないアカウントは少なくないはずです。通報をするユーザーの身元は間違いないのかどうかも含めて、電話番号を登録するのが確実だと思われます。
Facebookでは以前から電話番号の登録を促していますし、Twitterでも最近そんなメッセージが出ました。Googleはもっと以前から電話番号を重要視しています。G+のローカルページは当初NTTの電話帳から生成されていたと私は思っていますし、Google マップも同様でしょう。現在ではGoogleアカウントの二段階認証でも電話番号をうながされます。
ソーシャルメディアが電話番号の登録を推奨するのは、アカウントのセキュリティ向上のため。乗っ取りなどの被害を防ぐのに役立ちます。
企業やお店がソーシャルメディアのアカウントを持っていないと、なりすましなどの被害にあう可能性が高まります。基本は自らなりすましを発見して、申し立てする必要があります。本物かどうかを知らしめるのには、電話番号を登録するのが必須になりつつあるようです。ちがう言い方をするなら、ソーシャルメディアのアカウントは、電話利用と同等になってきているようです。
もちろん、ソーシャルメディア側ではセキュリティのためだけに、電話番号を登録させるのはありません。Facebookのアカウントにケータイ番号を追加すると「友だちからのSMSお知らせ」が届くようになってしまいます。
これを停止させるのが、またややこしいのですが(笑)
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