2015年10月16日金曜日

対照的な[Google Play Music]vs [Apple Music]のプロモーション戦略


画像:3500万曲ビルボード_1

続々と定額制音楽ストリーミングサービスが始まった今年。やはり話題を作っている中心は、AppleとGoogle。ですよね。


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Apple Music

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Apple Musicは6月30日にスタート。ネット上では、3か月間の無料トライアル期間をもうけることを発表すると、テイラー・スウィフトが「楽曲の使用料が支払われないのは自分はともかく、インディーズや若手ミュージシャンにとって死活問題」「アルバム“1989”をApple Musicに提供しない」とTumblrに投稿したことが話題になりました。そうトライアル期間中の使用料を支払わないことを、三大レーベルと取り決めていたのです。どうも、その他のレコード会社には三大レーベルと歩調をあわせることを強いていたようです。

アップルはすぐさま対応。翌日には楽曲使用料を支払うことを発表し、テイラー・スウィフトも“1989”をApple Musicで配信することを決めました。
テイラー・スウィフト、Apple Musicと仲直り アルバム「1989」を配信へ

この騒動を「話題作りのためのヤラセ」だとする声もありました。“1989”の配信決定をテイラー・スウィフトがツイートしたのが6月26日というサービス開始の直前だったため、怪しいといえば怪しい。私はまさかと思いますが、これが大きな[話題]になったのは間違いありません。
こんな記事も書いたぐらいで、テイラー・スウィフトチームはソーシャルメディアの使い方が抜群に上手です。
テイラー・スウィフトに、ソーシャルメディア マーケティングを学ぶ

上でリンクしたハフポストに書いてある「ファレル・ウィリアムズの新曲『Freedom』の独占配信」は、日本ではそれほど話題にならなかったのではと思います。



オリジナルコンテンツ「Apple Music Festival」の配信


ロンドンで9月19日から10日間、Apple Music Festivalが開催されました。以前は2007年からiTunes Festivalという名称で行われていたミュージックフェスです。
今年はテイク・ザット、ケミカル・ブラザーズ、Disclosure、ファレル・ウィリアムズ、One Direction、フローレンス・アンド・ザ・マシーンなどが出演する、豪華なフェスです。


Apple Musicとの連動は、ただフェスの様子が配信されるというだけではありません。Apple MusicのConnectがポイントです。
Connectからバーチャルバックステージパスの入手が可能。今すぐ ConnectのApple Music Festivalをフォローして限定ビデオや画像をチェック

そうエキサイトのApple Music Festivalの特設サイトに書かれています。アップルのオフィシャルサイトへ行こうとすると、Connecting to the iTunes Store...になります。
ともあれファンにとっては特別な体験が、Apple MusicのConnectによって可能になります。熱心なファンにとっては、たまらないサービスでしょう。


アップルのサイトでは、Connectを「ファンのみなさんが大好きなアーティストと親しく交わることができる場所」だとしています。

音楽そのものを提供するだけなら、目新しさはありませんし毎月980円を払う価値も希薄なので、Connectは面白いと思います。
ただその熱心なファンが、他のアーティストの曲も聴けることに、毎月980円を払うほどの価値を感じてくれるかどうか。親しくといっても日本のアイドルの握手会とは、比較にならないですし。
また世界で展開する巨大な定額制音楽ストリーミングサービスが、メジャーなアーティストの熱心なファンを、まず取り込むことの不思議さは感じます。



ブランディングのための広告を展開


Apple MusicのCMは何本もあります。Apple Music FestivalではConnectでメジャーなアーティストの熱心なファンの取り込みと書きましたが、広告では一転して、マニアックなアーティストばかり取り上げています。


YouTubeの説明には、「あなたが聴くアーティストと同じくらいユニークな音楽サービス。新しい音­楽と、それを生み出す人たちを見つけてつながりませんか。例えば、tofu­beats氏のようなアーティストと」と書いてあります。
Connectできるのがマニアックなアーティストになれば、メジャーなアーティストより数では劣っても、利用する動機が強くなりそうです。

実は、ツイッターではApple Musicそのものだけではなく、メジャーマイナーを問わずアーティストを紹介しながらフォローもできるようにツイートしていて、とても好感が持てます。
@AppleMusicJapan



そしてApple Musicは巨大な駅貼りの連続で、巨大な地下空間をジャックしていました。これがあきれるほど、カッコイイ。

画像:Apple Music poster_1画像:Apple Music poster_2
画像:Apple Music poster_3
画像:Apple Music poster_4

上の二枚は、8月中旬の渋谷駅地下の渋谷チカミチ内です。下の二枚は、9月中旬の、やはり渋谷駅の地下です。
すべてロゴのフォントを変えていて、リンゴのアップルマークだけあればいいという強気な表現。それぞれ創作されたMUSICの文字は、多様な音楽を表現しているようです。

私は山手線のジャックにも遭遇しました。圧倒されてしまうハイイメージの広告ですが、これがどれほど利用者増につながるのか、なんとも判断しようがありません。それほどアップルのブランドイメージは、特にアートや音楽ジャンルにおいては強力です。

イメージや認知度の高さを追求していて、もしかすると検索なんてあてにしていないというスタンスなのかなと思いました。
アップルユーザーであれば、オフィシャルサイトだけではなく、 iTunesからApple Musicにやってくるでしょうから。


検索している人は、どれぐらいいるでしょうか。Google Trendで調べてみました。実数はわかりませんので、Apple MusicとGoogle Play Musicのボリュームの比較です。
[Apple Music]が青の線、[Google Play Music]が赤い線です。日本での、この12ヵ月の相対比較です。


これを見るとApple Musicはリリース前後が検索のピークですね。8月の終わりから9月の頭にかけてGoogle Play Musicが上回りますが、現在では倍ほどの差があります。
アップルが検索をあてにしていないのかどうかまではわかりませんが、関連キーワードに[Apple Music 使い方]もありますし、急激に増加している中に[Apple Music Android]もあります。



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Google Play Music

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後発のGoogle Play Musicは、日本では9月3日にスタート。Apple Musicと同じ月額980円ですが、フリートライアルは1ヵ月間。そして10月18日までに登録すると、ずっと月額780円になるという、Googleらしい、巧妙な価格戦略が採用されています。

しかしApple Musicのような話題がありません。Google Playが立ち上がったときは、ビルボードカーが走っていました。Musicではなにもやらないんだろうかと思っていたら、10月7日の朝、渋谷パルコのスペイン坂広場で「今すぐ聴ける、3500万曲再生中」と書かれたボードを発見。イヤホンジャックの穴が無数に空いていて、ここに差すと音楽が聴けるんだろうなと想像しました。なんたって、裏側にはケーブルがぎっしり繋がっていました。

画像:3500万曲ビルボード_2



スペイン坂広場に「3500万曲ビルボード」設置の狙い


検索しても何も出てきません。翌日のGoogle Japan blogに出ていました。10月8日から24日までの開催で、12:00 〜 20:00だそうです。
これがいつ見ても、けっこう盛り上がっています。

画像:3500万曲ビルボード_3
画像:3500万曲ビルボード_4
画像:3500万曲ビルボード_5


仕組みは特設サイトから、お題にあった曲を投稿。選ばれるとビルボードで流れるようになるというもの。
投票する人が、スペイン坂広場にやってくるかどうかは、あまり関係なさそうです。
投票せずに来た人だって、ヘッドフォンやイヤフォンを差せば音楽が流れるし、ちがう穴に差せばちがう曲が流れる。それって、どれほど面白いんだろうと思いますが、みんな楽しそうです。次々に、ちがう穴に差しています。




お題は、次の通り。
・恋人を家に呼ぶ時にかけていたい1曲
・私的、次の世代に残したい1曲
・ツッコミどころ満載の1曲
・好きな人にプレゼントしたい1曲
・はじめて自分で買った思い出の1曲
・ココロが折れそうなときにききたい1曲

いくらスペイン坂広場には、大勢の人が通るとはいえ、渋谷だけでやっていて、それほど広がるでしょうか。
ネット上での拡散のフローを知りつくしているはずのGoogleが、それだけで終わるはずがありません。


ソーシャルメディアでの拡散の仕掛け


ツイッターでは、お題のひとつ「ココロが折れそうなときにききたい1曲」がハッシュタグでツイートされていました。Google側の仕掛けかどうかは不明ですが、ツイッターでひろがりそうなネタです。
そう思って見ていると、「#渋谷3500万曲ビルボード」がツイッターのトレンドに表示されていました。Googleが、ツイッター広告を利用しています。


さらに「#渋谷3500万曲ビルボード」で見ていると「#GooglePlayMusic」も一緒に書かれています。投稿しているのは、かなり若い。10代20代前半が中心のように思えます。これはツイッター広告だけじゃなくて、何かしているなと思って調べると、なんとシブフェスの「ハロウィン手当」というのをやっていました。

シブフェスは、神南や公園通り周辺のファッション関連のセレクトショップなどが参加するSHIBUYA FASHION FESTIVALのこと。今年は10月24日開催で、抽選で最大10万円分の「ハロウィン手当」を支給するそうです。
参加は3500万曲ビルボードを利用しているところを撮って、SNSに#渋谷3500万曲ビルボードと#GooglePlayMusicを付けて投稿。ビルボードの横に抽選するところがあるので、画面を見せてその場でやるのだと思います。この内容なら、TwitterとInstagramで出回りますね。



YouTubeでも10月10日に「Google Play Music 3500万曲ビルボード舞台裏」が公開されています。

この場所の前には、「本イベントは、各種メディアによる撮影・取材があり、撮影される動画・画像は、各媒体に使用される場合があります。またGoogleの広報活動に使用される場合があります」と書かれた札が立っています。

ネットメディアなどでどんどん出てくるのも、これからでしょうか。この場所でのイベントを拡散のネタにしようと考えていたのは確実ですね。
正直なところ、これを書いている時点では、Google先生の拡散の仕掛けがそれほど上手いとは思いません(笑) やはり仕組みでだけやろうとしているところが、明らかです。仮に「ハロウィン手当」を目的にして投稿している人たちが10代や20代前半だとすれば、ソーシャルメディア上で共有されやすく、拡散されやすいと思います。ただデジタルネイティブが、音楽に年間1万円近くも支払うとは考えにくいです。話題になるけれども、現実に利用者になってくれる人たちまでには遠そうです。


でも渋谷パルコや109前でイベントする企業の多くは、やったことを広告やパブリシティの素材として使おうとします。イメージをコントロールしたいから、撮影禁止としている大手もあります。
人が集まらなくても、やったという映像や写真が撮れればいいということだと思いますが、そういうところに比べれば、ちゃんと話題にする仕掛けを作っているGoogleは進んでいると思います。遠かったとしても、話題にならなければ始まりません。




Apple Musicは、アップルお得意の引き算の広告。Google Play MusicはSNS中心の拡散狙い。とまでは断言できませんが。
両社とも発表イベントを行えば、そのニュースが世界中を駆け巡るのですから、個々のプロモーションはそれほど重要ではないかもしれないです。ただ、どれだけ話題を伸ばせるか。利用する動機になる話題を続けて、評判にしていけるかは、無形のサービスであるだけに、より重要に思えます。




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