2015年6月3日水曜日

もうひとつの全仏オープン準々決勝[adidas|Y-3 vs ユニクロ]の戦い

毎回深夜の放送で寝不足になってしまいますが、昨日の錦織選手は残念でした。

プレイのことではないのですが、私には錦織選手とツォンガ選手の準々決勝が始まってすぐ、気になったことがありました。開始直後、ツォンガ選手がアップになることが多く、ウェアの袖や裾に[adidas|Y-3]のロゴが見えました。
これは、もしかしてadidasがツォンガ選手のスポンサーをしているんだろうか。それにしてはロゴが小さい。そう思っていたら、あれ、ボールボーイやガールもツォンガ選手と同じウェアを着ている! 

すぐに検索してみましました。


全仏オープンが、コレクションのデビューする舞台に


によるアディダスの3月末のニュースリリースによると、「アディダス」ローランギャロスコレクションY-3”」というコレクションで「今年5月にローラン・ギャロスで開催される全仏オープンテニスでデビューする予定で、ジョー=ウィルフリード・ツォンガとアナ・イバノビッチという2人の世界的なテニスプレイヤーのほか、大会のボールボーイとボールガールも着用します」と書いてありました。
アディダスとY-3が2015年の全仏オープンテニスに衝撃を与える


Y-3のスポーツスタイルの宇宙とアディダスTennisの技術力を融合する、アディダス傘下の2ブランドの新たなコラボレーションだということです。

Y-3とは、山本耀司さんが監修するスポーツブランドです。ただスポーツブランドといってもファッションブランドであって、スポーツウェアとしての機能性は持っていないように思います。adidasテニスの機能性とY-3のデザインを融合させるということなのでしょう。

しかし、全仏オープンでどれほど、アディダスの新機軸が認知されたでしょうか。錦織選手が着るユニクロのウェアの派手さ、ロゴの大きさ、そして徹底した宣伝活動と比較すると、比べる意味をなさないほど控えめです。


アディダスは、ソーシャルメディアでタイムリーに素早く発信


ところがです。Facebookを見てみると、Y-3のグローバルのアカウントでは5月末から発信していますし、なんといってもこちらの投稿。


昨日の3時ということですから、優勝が決まった直後ですね。オンラインショップにも誘導しています。ところがアディダスの日本のアカウントでは、サッカーがメインで、朝にTwitterと同様の投稿をしています。


そう、錦織選手もシューズはアディダスでした。シューズは後述するとして、Facebook投稿のリンク先はどんなものでしょうか。こちらのオンラインショップです。


ツォンガ選手はハイビスカス柄のシューズを履いていましたが、どうも同じデザインではないように思えます。もちろん本人が履くのは、選手に合わせた特注品なのでしょうけれども。
※ハイビスカス柄ハワイアンプリントは、Y-3のこの春夏のモチーフになっています。

錦織選手も足下がアップになった時に見えたのは、アディダスのロゴでした。私はツォンガ選手と柄が違うだけで、同じものだと思えました。
いずれにせよ、アディダスはふたりのフットワークを支えるのはアディダスのシューズだと発信しています。
昨年からアディダスは、バリケード8プラスというモデルが、錦織選手を支えていると出しています。

アディダスの公式ブログ

ここではスタンスミス“モデル”のことも語られていて、私は上手いなぁと思って読んでいました。
スタン・スミスは、60年代から70年代前半にかけて活躍したアメリカを代表するテニスプレイヤーで、1973年に彼に因んで作られたテニスシューズとしてデビュー。不朽の名作といわれ、アディダス史上最も売れたスニーカーだそうです。ところが2012年にひっそりと生産中止し、2014年に復刻されました。
昨年からかなり見かけますので、ヒットしているのだと思います。あくまでシンプルなファッションアイテムとして受けているのだと思いますが、そこに錦織圭選手が語ると、マニアックな層にまで響きそうです。たぶんテニスをやる人の間では、復刻したスタンスミスは、まだまだ知られていないのではないでしょうか。


アディダスはニッチな層にアピールし、異なるクラスタに火をつける戦略?


全仏オープンにまつわるアディダスのソーシャルメディアの発信を見ていて、あまり拡散していないな。タイムリーだけど、大きく仕掛けていないなと感じられました。
もちろん全仏オープンですから舞台は大きいですが、Y-3ファンには機能性を獲得したことを知らせ、熱心なテニスファンには他のウェアやシューズとはファッション性だって違うところを伝えたでしょう。もちろん、ファッションが好きな若者にだって届いたでしょう。Roland Y-3はZOZOTOWNによるギャロスコレクションでも売っています。

実は深いところに入って行って、ただ“認知される”ことを狙ったのではなく、確実にポジションを押さえているという気がします。


ユニクロは全米オープン時と比べると、かなりのトーンダウン


昨年『全米オープンテニスにみる、ユニクロの慧眼』で「ウェブサイトやソーシャルメディアで展開するスピードがすごい!」と書きました。
錦織選手の他のスポンサーは、ネットにおいては時期を逸したような対応をしているのに、ユニクロは本当にタイムリー。急上昇する錦織選手人気のカーブとシンクロするような見事さでした。
ところが今回は、こちらのFacebookでは投稿のみです。Twitterも同様です。これだけでも、かなり拡散しているのですが。


しかも投稿にもリンク先のオンラインショップにも、「※一部ストアとオンラインのみの限定販売 ※品薄のため欠品の場合もございます。ご了承ください」と書いてあります。
試合終了後には、まだ何もありませありません。



実際、テニスキャップやキャップ、リストバンドなど大量に作れそうなアイテムが売り切れになっています。これは売れ残ることを恐れているのかもしれません。
全米オープンテニスのときには、これらのアクセサリーはなかったと思いますので、商品の幅を広げたのですね。

もしかするとユニクロは、テニスをやっている人たちがどれぐらい買ってくれるだろうかと手探りの段階にあるのかもしれません。
これまでは大量に売れたけれども、アピールする対象はマス。テニスをやっている人で、買ってくれそうな人はすでに買っているでしょうし、これまでに十二分にアピールできたはずです。より狭い層に入って行くのはユニクロの本筋ではないのかもしれません。


ウェアに関しては、adidas|Y-3とユニクロでは、倍以上の価格差があるのですから、戦略の違いは当然でしょう。
選手が実際に着用しているものと、市販されているモデルとでは異なっているのも当然です。ただ中継の映像からは、ツォンガ選手が着ているウェアはY-3らしくない地味なデザインだけれども、ラインがぴったりしていて上質そうだ。
錦織選手の着ているウェアは、首から脇にかけてのシワが出来ていて、汗で張り付いているのか、もともとデザインが合っていないのかなと思いました。あれだと多少なりとも動きにストレスがあるのではと感じました。


試合の前後に売るという数字では、きっとユニクロの圧勝でしょう。しかし今後はどうするのか、打つ手が少ないのではと思います。
アディダスは、控えめなイメージ戦略が功を奏して、それなりにブランディングにも成功し、これからどうするんだろうというところが気になります。



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