スレンダートーン エボリューションCM
少し前の日曜日、家電が鳴りました。うちの奥様が電話に出て、笑いながらもなにかを断っているので、セールスの電話にしてはヘンだな。なんだろうと思っていたら、ショップジャパンからで「CMに出てくれませんか」という内容で、いままでに3度ほどかかってきたということでした。
初耳でしたし、第一どういう理由なんだろうというところが不可解です。理由を尋ねてみると「スレンダートーンを注文した人が、私から聞いて買うことにしたと言っている」と。
え、わざわざそんなことを言うのか?
「ショップジャパンに電話かけて注文すると、どこでスレンダートーンのことをお知りになりましたかと聞かれるそう」「何人から、私の名前を出したと聞いた」ということでした。
なるほど、そういうことか。
ショップジャパンは、電話注文客から購入動機ルートを探してる
想像でしかありませんが、ショップジャパンはもちろんネットからの注文も少なくないでしょう。でもテレビCMによる、電話注文が主力なんだと思います。
そのテレビCMとは無関係そうな日時にかかってきた電話注文に対して、買うキッカケを聞かなければ、どんな導線があるのか把握できない。そのルートを知るために「どこで知ったか」を聞いているのではないでしょうか。
きっとルートの多くは、リアルなつながりのある、信じるに足る評判。口コミの中心やハブになっているキーマンを探し出して、味方になってもらえば、ネット上のどんな施策より確実かもしれません。信用するベースが、メディアを通したものより、はるかに高いのですから。
つい最近も、健康診断で病院に行ったとき、問診で運動をしているかと聞かれ、テニスを週に1、2度やっていますと答えると、「テニスだけで、そんな体にはならない。筋トレ的なことをやってるでしょう」と尋ねられたそうです。
女医さん、それは問診じゃなくて、個人的興味でしょうと言いたくなりますが(笑)
そんなことがけっこうあって、医師では3人、女性2人男性1人が確実に購入したそうです。直接聞かれて買ったのは、美容院やテニス友だちや近所の人など、少なくとも20人以上はいると本人が言っています。そこからさらに広がるでしょうから、並の影響力ではないですね。医者が知り合いやあるいは患者に勧めたとしたら、とんでもない数になりそうです。
そんなキーマンになる人は、ごく狭いジャンルの中なら、世の中に大勢いることでしょう。こういうキーマンをネットで探せるでしょうか。
スレンダートーンがいいかどうかは、本人にも確信がない
そもそも彼女が使い始めた理由は、腰痛の軽減。整形外科によると小さなころからの運動で、腰椎が分離していたんじゃないか。年齢とともに、症状が悪化してるのかもしれないということでした。こういう症状は10代からやっているスポーツ選手の1/3ほどが抱えているそうで、ポピュラーらしいです。大学生のときにある種目の全国大会で優勝していますので、選手だったことは間違いありません。
進行すれば手術しかないそうですが、腹筋背筋などを鍛えることによって筋肉のコルセットを強化し、腰への負担を軽減するのが有効な対策だと言われ、それで、たまたま良さそうだと買ったのがスレンダートーン。
電気信号によって、運動することなしに筋肉を動かすEMS。つまり腰に負担をかけることなしに筋肉を鍛えられるということですが、EMSの種類なんて、いくらでもあります。
たまたま買ったEMSが[スレンダートーン]だったというだけで、特別いいと思っているわけではなさそうです。他のEMSを試して比較検討したわけでもないし、運動科学などの専門家でもなく、自分にとっては良かった、合っていたというだけです。
こういう人を、SNSで探せるでしょうか? 本人がブログにでも書かない限り、なかなか難しいでしょう。ブログに書いたところで、どれだけ信用されるかどうか。ですよね。
身近にリアルな情報があると、比較検討せずに、すぐ注文するのかも
スタイル維持に何をしているんだと聞かれて、テニス以外でやってるのはEMSだと答える。EMSって何と聞く人の方が多く、スレンダートーンというもので、ショップジャパンで売ってると答える。
どれぐらいで効果が出るかと聞かれるから、それは分からない。痩せるために使ってるんじゃなくて、腰痛対策。腰痛はかなり軽減している。
そう答えるだけで、買うという人は多いらしい。
こんな人もいる。スレンダートーンじゃないEMSも扱っている会社の人で、どういう風に使ってるのかしつこく聞くから、強度レベルMax99の97でやってる。家にいるときは、食事のときでも付けてると答えると、「バケモノだ」と言われたとか。さらにCMでは一日30分2回を推奨と出てきますが、私は何時間でも使ってると言うと、自社取り扱い製品があるのにスレンダートーンを買ったそう(笑)
医者は腰痛からの説明をすると、とても納得して買うそうです。
そしてこの人たちの多くがショップジャパンに電話して買っているということは、ネットで価格や他の製品と比較検討もせずに、注文していると考えられるのではないでしょうか。会話だけで、確信している。
どういう違いがあるのか調べていませんが、ネットだとAmazonの方が安いですから。
ショップジャパンにとっては、口コミで電話で購入してくれる人は、直接的なプロモーションコストがゼロですから、そりゃあオイシイ。インフルエンスしてくれるキーマンは、ぜひとも囲い込みたいところでしょう。
顧客ロイヤリティを知る「究極の質問」は、どれほどの価値があるんだろう
以前、こんな記事を書きました。
推奨してくれる顧客「アンバサダー」を見つける「究極の質問」のされ方
あなたはどれほど「製品やサービスを知人や友人に薦めたいと思いますか」という質問をすることで、顧客ロイヤリティを知ることができ、強く進めたいというアンバサダー/推奨者を探して、より味方になってもらう仕組みを作りなさいというものです。
アメリカでは、そこに書いた「究極の質問」が、顧客ロイヤリティを知るための方法として主流になってきているそうです。
日本でも、私にさえ連続して届きましたよ、という記事です。
私に来た二通の「究極の質問」には二通とも[推奨者]レベルを回答したはずですが、それ以降なんのアプローチもありません。「強く薦めます」と答えているのに、放ったらかしだと、なんだったんだよと思います。仕組みを知っているだけに、不躾に聞きっぱなしかよと反感だって生まれてきます。
きっと「顧客ロイヤリティを知るために、究極の質問をしろ」という指示が下ったのでしょう。でも質問をした相手は、顧客だよということを忘れていませんか。「薦めます」と答えるのですから、それなりの責任感を感じて回答している人が少なくないでしょう。
仕組みを知らない人なら、「なにか、させられるのか」と少し身構えながらも「薦めます」と答えたかもしれません。
「アンバサダーマーケティング」という本では、取り込みましょうというスタンスで書かれていますが、そもそも「究極の質問」は、NPS(Net Promoter Score:推奨者の正味比率)を調べるためのもの。
NPSの上昇は、企業の成長率と関連性が高いので、指標として重要ですというだけです。もしかしたら統計として処理されているだけで、[誰が]は無視されているのかもしれません。
もしそうなら、いたずらに顧客に手間とプレッシャーをかけているだけです。
指標としてのNPSを上昇させる方向に、企業活動をシフトさせるという考え方なら有用です。ただ[推奨者]になった人に、どうアプローチするか。さらに[スーパー推奨者]になってもらうのか、あるいは反応してくれない[中立者]に引き戻してしまうかは、アプローチの内容にかかっています。
「CMに出てくれませんか」という電話は、腹を出して出演するわけないんですけど、でも本人は喜んでいる様子(笑) ショップジャパンは電話をかけるだけで、目的を達成しているのではないでしょうか。上策ですよね。