2014年7月18日金曜日

黒は、特別な色じゃなくなったのかも



ある企業のいろいろなツールを作らせていただいていて、その中にチラシがありました。うちから提案させていただいたものは、情報量が多いので、背景は白にしていました。
ところがトップから、デザインは気に入ったのだけれども背景を黒ベースにして欲しいと、担当者の方を通じて修正が入りました。それだけ言えば、私に伝わるはずだとおっしゃったそうです。

私は「出たな」と思いました。というのも、こちらのトップの方は黒がとてもお好きです。長年おつきあいさせていただいているので、一言聞けば十分。高級感を強調したいということです。

だけどこの情報量の多いチラシで、背景を黒にしてしまうと可読性が悪い。全体のパッと見の印象は良くても、読まれない。読みたくないデザインになってしまう懸念があります。


それ以前に、そもそも黒が高級感なのでしょうか。私は必ずしももう、そんなことないんだけどなぁと感じています。



商業施設で、黒い外観が増えているのはなぜ?


昨年、会社でこんな動画を作りました。

どうということのない内容ですが、渋谷では黒地に白のロゴの建物が増えています。昨年は、109の斜め前に[アンダーアーマー]の直営店が、黒く立体的なファサードでオープンしました。向かいの[アディダスパフォーマンスセンター]も、黒に白いロゴです。
競合するのに、同じ配色です。ただ[アンダーアーマー]はゴツゴツしていますので、いかにも強そう。ブランドイメージにピッタリです。

画像:アンダーアーマーのファサード


また、5年ほど前に出来たファストファッションのZARA渋谷2号店も、黒ベースにシルバーのロゴ。同時期にオープンしたH&Mは黒ベースに、赤いロゴ。改装したマクドナルドも黒ベースに白いロゴ。

むしろ高級店よりもファスト店が、黒を拡大させているように思います。


黒はフォーマルな存在から、ありふれたベースカラーに移行しているのかも


そもそも黒って、どんな色なのでしょうか。
先日あるテレビ番組で、とんねるずの石橋タカさんが、家グルマは国産の高級車で黒にしている。あるとき、偉い人のお葬式に行ったら、黒塗りの国産高級車ばかり。黄色や赤の車じゃさすがにまずいと思った。それがキッカケで変わったと、語っていました。
私はかなり驚きました。政財界の大物ならそんな感覚かもしれませんが、普段どんな派手な色や形の車に乗っていても、冠婚葬祭にはタクシーで行けばいいんじゃないのという気がします。

ただ、冠婚葬祭には黒塗りというイメージは根強そうですね。冠婚葬祭は特別なんだから、黒も本来は特別な色。すべての光を吸収する生と死をイメージさせる色。ではあるでしょう。


少しだけ言及しておくと、以前に書いたこちらの記事
この中で、日本の闇は優しいと書いています。光が優しいのだから、黒だって漆黒だけじゃない。西洋の宗教が生まれた砂漠のように、闇か光かみたいにハッキリ分離されていないのです。日本では黒のバリエーションがとても豊富です。黒のグラデーションがさまざまな色に重なり、くすんだ色彩を生み出しているのも特徴かもしれません。
どう考えても、黒がハレを意味する色ではいないように思えます。

画像:DICの色チップ/日本の伝統色

黒は白やグレーとともに無彩色と呼ばれ、彩度のない色です。かつては無彩色に多少色が入ったものが街並みを構成していたように思えます。
人形町など古い街の、ここ10年ほどの変化。くすんでいるトーンから、どんどん強い色の増えている様子が見て取れます。

どこの街でもグレーや薄いベージュなどくすんだ色が建物のベースカラーであった時代から、お店のファサードとしては黒のような強く目立つものへと移行しているだけなのかもしれません。




ブルーって、ダイエットカラーじゃなかったの? で
色彩心理学みたいなことは絶対的じゃなく、国によって地域によって、つまりは接触している環境や文化によって異なると考えるのが妥当でしょう

と書きましたが、色が意味するものは、どれだけ接触しているかによっても変わります。たとえば紫は古代の日本では高い地位を表す色で、高貴の象徴だった。でも現代では、特に男性にはネガティブなイメージが強い。その理由は、なにより見ること接触することがないから。
だと言われています。

そういう意味では、黒はありふれた日常的な色になりつつあると考えていいかもしれません。



ZARAの3店舗で、顕著に見ることができます


渋谷のZARAは、渋谷店と公園通り店の2店舗。ほぼ井の頭通りという直線上の、ごく近い距離にあります。

公園通り店は、黒が基調です。
画像:ZARA渋谷公園通り店のファサード

渋谷店は、白が基調です。
画像:ZARA渋谷店のファサード

どちらもロゴそのものはシルバーで、無彩色で統一していると言えるでしょう。
先に書いたH&Mは、黒ベースで無彩色かというとそんなことはありません。ロゴこそ赤ですが、ほぼ全面ガラス張りで、イメージ写真に値段だけ入った大きなビルボードが何枚も掲げられています。写真の印象が強く店内が様子も見えるので、無彩色の印象はありません。


そしてZARAには、もうひとつお店があります。正確にはZARAではなく、同じ会社が運営するZARAの妹的なブランドということですが。
Bershka(ベルシュカ)です。こちらは蛍光っぽい黄緑色がベース。

画像:Bershkaのファサード

黒と白のZARA、黄緑のBershkaがすぐそばに存在しています。

無彩色のZARAが高級で、Bershkaがそれより安いというポジション? ZARAグループの中ではそういう位置づけなんでしょうね。
ZARA自体、ファストファッションの中では高いと思いますが、アパレル全体では高級に位置するなんていうことはありません。西武百貨店に入っているシャネルやプラダなどのハイブランドも、黒に白やシルバーのロゴですから。


かつて黒いスーツは値段が分からない。紺なら価格がすぐに分かってしまう。というようなことが、よく言われていました。
それは素材や縫製の差が、外から見ただけでは、なかなか分からないという意味です。



カフェチェーンの配色に見るベースカラーとアクセントカラー


スターバックスコーヒーは、黒や濃い茶色に白いロゴ。ロゴマークとしては、緑がベースです。
画像:スターバックスのファサード

ロゴマークは、ほとんどアクセントカラーとしてしか使われていません。一見大人しく見えますが、それが高級感を作っていますし、色を抑えている分だけ新メニューの看板が際立ちます。



タリーズは黒ベースに、南米をイメージさせるカラーリング。

画像:タリーズコーヒーのファサード

ロゴ自体がオレンジとオレンジがかったイエロー。ロゴマークには緑も入っています。ことコーヒーということなら、スタバより本格的に感じさせる配色だと思います。


では、ドトールはどうでしょうか。

画像:ドトールのファサード

黒に白いロゴ。黄色いラインも入っています。とても強い配色ですし、リーズナブルな感じも伝わってきます。庶民的な印象ですね。


3チェーンを見ただけですが、いずれもベースは黒、ないしは黒に近い色です。ところがアクセントカラーによって、他店との差異化、出したいイメージを作っているのだと思います。
スタバは高級にプラスして、エコイメージを訴求したいから緑を使っているのでしょう。タリーズは、高級でなおかつコーヒーの本格的イメージを出したいのだと思います。ドトールは、庶民的な雰囲気を出したいから黄色なのでしょう。もっとも黄は、中国では高貴な色なんですが。日本では軽いですよね。

ちなみに黒ベースにマークが黄色なのは、マクドナルド。この組み合わせは夜になって点灯すると、とても目立ちます。


もうひとつ、こちらを見てください。

画像:ドンキホーテのファサード
驚安の殿堂だって、黒がベースです(笑) そこに赤や黄が大きく入っている。

つまり黒自体が高級なのではなく、配色。特にアクセントカラーの使い方によって、印象は大きく変わってくる。ということではないでしょうか。




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