2014年3月24日月曜日

オープンデータって、「ブラックジャックによろしく」のことだったんですか!?

ビジネス用語って、難しい。特にバズワードと言われるようなものは、どうしてバズってる? 流行ってるの? となることが少なくありません。
「ビッグデータ」には敵わないものの、「オープンデータ」も間違いなくバズワードです。でも私には、その理由がまったく理解できていません。

Google トレンドで調べてみました。
画像:Googleトレンドでの「オープンデータ」の推移


2012年の夏から上がり始め、アップトレンドです。
ここに出てくるニュースは国の政策、行政主導のものばかりなので、やっぱりなという気がしました。
オープンデータとは、開かれた利用が利用が許可されているデータのこと。行政が持っているデータをオープンにするのは当たり前のことで、それを大々的に推進するのは、ちょっと首を傾げます。


日経はオープンデータ、データジャーナリズムに関する情報と実験のサイトというのを立ち上げていて、総務省のデータを元に「食の日本地図」などを公開しています。
画像:「食の日本地図」スクリーンショット

データジャーナリズムという考え方は面白いですが、牛肉の支出金額はデータのある2005年以降、近畿圏がずっと高いということが可視化されても、それがステーキなのかハンバーグなのか、あるいは牛丼?、みたいなことはわかりません。
ちくわの支出金額が最も高いのは鳥取県がキープしている、なんてことをパッと見ることが出来たからって、それをどうするんだろ。みたいな気持ちになります。


最近も「総務省及びオープンデータ流通推進コンソーシアムのオープンデータ・アプリコンテスト」というニュースを見ました。
最優秀賞は、花粉くん(花粉くん.com)が受賞です。Twitter投稿解析から算出した独自の体感ポイントKTP(カフン・ツライ・ポイント)や観測情報をゆるくお知らせするというもので、現在のところ千葉県版だけのようです。

画像:「花粉くん」スクリーンショット


これもどうなんでしょうねと思ってしまいます。今日はディズニーランドのKTPが高いから、遊びに行くのは中止しようという人がいるとは考えにくいですし、観光地以外はざっくりとしか可視化されていません。
そもそもツイッターでのつぶやきを元に解析という前提が、いまいちです。人口の少ないところはつぶやきも少ない。それに今日見ると、花粉辛い/花粉辛くないに分けられたツイートの中に、大量に宣伝ツイートが入っていました。

画像:「花粉辛いツイート」スクリーンショット

「花粉が辛いこの時期の必需品」というフレーズをプログラムで判定していると、完全に間違った結果になってしまいます(笑)


花粉くんの作品講評が「完成度が素晴らしく高い。花粉くんロボのキャラクターもかわいくて良い。ツイートのネガポジ解析も役にたち、心理的にも楽になりそう。しかも、Open Data×Crowd Sourcing×言語解析という3つの要素を兼ね備えた傑作といえる」というものですから、かなりツッコミたくなります(笑)



主催者であるオープンデータ流通推進コンソーシアム理事の中村伊知哉さんが最近のブログで、『オープンデータとブラックジャックによろしく。』という記事を書かれていました。コンソーシアム主催で、「オープンデータシンポジウム」が開催されたという内容です。

前半は「総務大臣政務官が、6月の世界最先端IT国家創造宣言で、2015年度末には世界最高水準のオープンデータ実現をうたった」というような内容なので、どうでもいいのですが、後半に「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰さんにお越しいただきましたと書いてあります。
サラッと、書いてあることが重要。「パロディ、アニメ、小説、映画全て事前承諾不要でコピーも配信もOKにしたというもの。情報をオープンでフリーにすることで、一体何が起きるのか。その事例を共有してもらいました」とあります。


知ってる人は詳しく知ってる。無関心な人は、まったく知らない「ブラックジャックによろしく」の二次利用okの試み。もちろん無料で読むだけの人が一番多いはずですが、加工して使っても、事後申請でいいというのは出版界の大事件です。いや出版界だけじゃなくて、著作権に関わるような仕事をしている人なら誰でも知っておいた方がいい内容です。


うちの会社でも使わせていただきました。スマホコンテンツとして、フリックして進む漫画です。吹き出しのテキストを総取っ替えしていますから、パロディですね。
020のいまいちわからない話(スマートフォン用)

画像:スマホコンテンツ「o2oの~」スクリーンショット


二次使用の完全フリー化についてや作品のダウンロードは、こちらから
佐藤秀峰 on Web



うちでは、どんなことができるだろうかと面白がって使わせていただきました。佐藤秀峰さんの挑戦の理由は理解していたのですが、その後がどうなったかを知りませんでした。


中村伊知哉さんのブログから抜粋させていただきます。

出版市場は8年連続で縮小。マンガは95年の65%に縮小しているといいます。なのに電子書籍を巡ってマンガ家と出版社の対立もあり、ならばマンガ家の利益を増やすためまず拡散、と考えてやった、と佐藤さん。
その結果、1年で712件の利用があったといいます。アプリが160万ダウンロードされたというマンガの拡散だけでなく、演劇、AV、酒も造られるなどの拡張。文化として広りをみせました。
そして、「新ブラックジャックによろしく」の方はフリーにせず、そちらに誘導するというビジネスも考えたそうです。なるほど。やみくもにオープンにしたわけではないと。
すると二次利用フリーで他の電子書籍作品の売り上げが増加したそうです。それも、1年で1.5億円売上増。佐藤さんの収入は7000万円アップ(あけすけ)! フリーにしたらもうかった、というおはなしでした。

確かに無料で読めることで、今までにない層が新たに「新ブラックジャックによろしく」を購入したでしょう。 それにしても、計算がどうなっているのか不明ですが、語られている数字からすれば大成功。

中村伊知哉さんは、こう書かれています。
オープンデータに求められるのは、技術も、オープン化努力もありますが、それ以上に、こういうわかりやすい成果を増やしていくこと。引き続き、がんばります。
仕事をしている一般人とって、今のところオープン化の行方としては、「ブラックジャックによろしく」の事例だけが重要ですね。



考え方の参考になるのは、こちらの書籍も。



ネットを介して生まれつつある新しい“パブリック”
──それはソーシャルメディア革命と3.11を経て見えてきた、大公開時代の新しいフロンティアだ!と言っています。
オープンにしないと最大化できないですから。



バナー:ウェブ、グラフィック、そしてソーシャルなつながりをデザインする制作会社です


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