2014年3月6日木曜日

『インフルエンサーって、誰?』 - ツイッターで、トレンドに乗るとはこういうこと (2)

前回、ツイッターで、トレンドに乗るとはこういうこと (1)では、
◯拡散力なら、だんぜんツイッター
◯「ポッキーの日」がツイート数でギネス記録を達成したのは、コラボが発生したから
という趣旨のことを書きました。


Youtube:「ソーシャルメディアの運用、むずかしいですかから


次回は、「広告費を使わず、ツイッター内のトレンドに乗った事例や方法をご紹介します」と最後に書きました。方法を紹介するのに、まず、どうして拡散することが必要なのかと、インフルエンサーについて書いておきます。


トルネードが起こらないと、クラスタの壁を越えられない


Facebookは、実名でリアルなつながりがベースにあることが基本。リアルなつながりという強い関係なので、シェアされても連鎖的にシェアが続くということが少ない。あらかじめよほど知名度、ブランド力が高くないと共有されない。どころかそもそも見てくれる人が少なく、広告に頼るしかなくなる。
Google + も同様ですが、FBよりも実名性が弱く、またコミュニティが活発だけれども、やはり連鎖的にシェアされることが少ない。

Twitterは圧倒的にHNで、つながり方もさまざま。気楽な分だけリツイートなど、共有の連鎖が起こりやすい。
FBは年齢層も高く、[友だち関係]は同質的とまではいかなくても、現実的なつながりがベースであるだけに、強いバイアスがありそうです。じゃあツイッターはどうかといえば、趣味的なフォロー関係が多いので、特定のクラスタに所属している。種類は違いますけど、見ているタイムラインには強いバイアスがかかっているのではないでしょうか。

クラスタの壁を越えるには、広告か、あるいは瞬間的な拡散が必要だと、私は思っています。

これって前にもご紹介していますが、キャズム理論で知られるマーケティングの世界的権威、ジェフリー・ムーアが書いた『トルネード』の主張とほぼ同じじゃないのと考えています。
キャズムはハイテク分野のライフサイクルの理論。
画像:キャズムの図
スティーブ・ジョブズは「キャズムに落ちた企業はすべてを失い、トルネードに乗った企業はすべてを手に入れる」と言ったそうです。マニアックな好き者が飛びついて先行市場が形成されても、それが保守的な層にまで受け入れられるかどうか。そこには深い淵があり、なかなか越えられない。飛び越えるためにはトルネード(竜巻)と呼ばれる現象が必要だというものです。




ソーシャルメディアの中で見ているもの、触れているものは、基本的に所属するクラスタのもの。あるいは元が同じ情報でも、クラスタのフィルターを通り、強いバイアスのかかったものではないでしょうか。『閉じこもるインターネット』という本では、ネットは「自由でパブリックでオープンな場ではなく、フィルターバブルで覆われつつある」という論が展開されています。



Twitterではユーザー自ら、フィルターバブルで覆っているのだと思います。クラスタの壁を飛び越えるのには、トルネード的な現象が必要。そしてトルネードが起こるのは、インフルエンサーの介在が不可欠、とまでは行かないですが必要かなと思っています。



インフルエンサー、それぞれのタイプ


インフルエンサー・マーケティングを扱った書籍やサイトには、よく「インフルエンサーとつながろう」的なことが書いてあります。私はそういうのを読む度に、この人自分で運用していないのかな、少なくとも拡散させた経験はないなと思うことがほとんどです。


ネット上の影響力を数値化するソーシャルスコアを提供しているサービスはいくつかありますが、ある会社の「Twitterでの影響力第一位」を見てきたら@Mariakko2010、鈴木明子さんになっていました。ソチオリンピックが終わったばかりなので注目されていて当然ですね。

画像:鈴木明子さんのツイート

ソーシャルスコアといっても、各社どういう計算で数値化しているのか出していませんから、数値が客観的だとは言えません。
そして鈴木明子さんは、オリンピックやフィギュアスケートのインフルエンサーですが、「インフルエンサー・マーケティング」でいうところのインフルエンサーではないという気がします。
それらを踏まえた上で、インフルエンサーのタイプを考えていきます。



◯ネットメディア/ITベンチャー的企業の論客やタレント的なアカウント

この人たちは、そもそもネットが主戦場なので、ツイート数もすさまじく、数万単位のフォロワーがついています。
この人たちがインフルエンスしているのは、自社サイトやサービスのこと。互助会的な仲間のアカウントとやりとりしたり、友好的な一般人のツイートにリツイートすることはありますが、それ以外ではほとんど絡むことはありません。

運用させていただいているアカウントに、1月の都知事選に出られた家入さんが絡んでこられたことがあります。もちろん選挙前、昨年のことです。
家入さんは[連続起業家]なので関連している人も多く、その“事業”の中の人とこちらがしていたやりとりに、RTでツイートされ、こちらも返したのですが、リツイートされたのは確か2回。お気に入りはゼロ。10万人もフォロワーがいる人なのに?

画像:家入一真さんのツイッタープロフィール

このカテゴリーのインフルエンサーは、メリットないところとは絡まないのが一般的ですが、家入さんは炎上に立ち向かう人なので、ちょっと種類が違います。
でもつながったところで、インフルエンスするわけではありません。たぶんフォロワーは、ファンなら家入さんの事業や発想、考え方に興味がある。ほかはたぶん炎上騒動を面白がっていたりや反感を持ってチェックしている人たちなので、あまり意味がありません。なんたってネット炎上率No.1と言われる方ですから。



◯コンサルタント系や著名なブロガーのアカウント

この人たちは自分のブログやサイトに誘導し、アフィリエイト収入を上げることが主目的。もちろんコンサルタントであれば、本業の獲得も目的だとは思いますが、その広報と同時にアクセス数が激増することで、アフィリエイトの売り上げが上がる。
つまりは炎上もいとわないというスタンス。ネガティブなアクセスであったとしても、アクセス数とアフィリエイトの売り上げは、ほぼ比例するそうです。

著名ではないコンサルタント系の人たちは、仲間内で回しています。これは数値化するソーシャルスコアという視点からすれば、ステマみたいなことなのかもしれません。
たぶん、毎日同じ人のネットワークの中だけで拡散していても、ソーシャルスコアは上がりそうですよ。


あえて否定的なことを書こうとしているわけじゃありませんが、一般的にインフルエンサーと言われている人たちはこんな感じなので、「インフルエンサー・マーケティング」的には、ほとんど意味がありません。


ここからは逆に、私がものすごく意味があると考えているインフルエンサーを取り上げていきます。
うちがTwitterの運用をやらせていただいている中で、実際の経験したことからインフルエンサーについて書いて行きたいと思います。冗談みたいだし、書き方がぜんぜん変わりますけど、とりあえず実体験ばかりですから。たぶんSNSでステマじゃない、しかも意味のある拡散が起こるのは、遊んでいるようで、お互いに配慮があるというケースだけじゃないでしょうか。



◯ジャニーズのファンは、すさまじい

詳しく書けませんけど、ファンの人たちのネットワークと熱さはすさまじいです。ファンの人が話しかけてきたのに返していたら、そのツイートをリツイートされるんじゃなくて、なんていうか「ジャニーズのその人」がイコールそのサービスみたいなツイートが溢れかえっていて。
比喩的にいうと、その人が行った場所が聖地みたいなことでしょうか。
2ヵ月ほど毎日毎日ツイートがあって、1年近く続いています。


画像:タワーレコードの看板
この方たちじゃないですが



◯テレビにあまり出ていないアイドルユニットは、すさまじい

あるときこちらのツイートにRTで話しかけてきた人に返していたら、続々と増殖していきました。Twitterのプロフィールにアイドル名を書いていても、本人なのかファンなのか、わからないですよね。本人だとしても、自分で書いてるのか、誰かが代行しているのか。
本人だったんですけど、グループの他のメンバーや関係者までが続々とツイートしてくるようになって。この場合も、リツイートされたりするよりも、ファンたちがどんどん言及しはじめて、とんでもない拡散に。

私はアイドルまったく知りません。TSUTAYAやタワーレコードの前を通って広告されているような人なら名前はなんとなく覚えていますが、でもどのぐらいの人気なのかわからない。クライアントのアイドル通の方が、「これだけ知られているAKBでも、ファンじゃない人は、メンバーの数人しか顔と名前が一致しない」「テレビにほとんど出ていなくても、劇場やいろんなところで会えるから、推しメンがいたり、人気は根強い」ということでした。

アイドルの方々は、ほかにもいろいろ絡んでくれて、アグレッシュブな印象です。

画像:マルイシティのアイドルイベント
この方じゃないです。これはソロのイベントです。


テレビにあまり出ていないお笑いタレントは、乗っかってくれる

これもある時、向こうからRTで話しかけてきた人をチェックしたら、お笑いの人でした。名前は知ってるな、ぐらいでしたが、プロフィールに記載されているブログに行ってみると、よく理解できました。
ちゃんと相手のことを理解しているワードを入れてリプライしたら、メンションで返してきて。それを見て、この人「わかってるなぁ」と思いました。お互いにメリットある書き方でツイートしているから、こちらもまた返す。これって、ツイッター芸みたいなものです。
私は企業アカウントが商品やサービスと関係ないところで拡散されても、ほとんど意味はないと思っています。

画像:最初のツイートのリツイート数とお気に入り数

これが最初のツイートです。新しいトピックスではなく、すでに10回ほど告知していますが、あまり出していなかった時間帯しか見ない人にも届くようにと、11時台にツイートしたものです。
新しくない情報なのに、まあまあの数字です。


画像:リプライのリツイート数とお気に入り数

お笑いの方からメンションがきました。けっこうな数字です。
その人のフォロワーには、新鮮なネタだったということもあるでしょうね。

画像:こちらからのリプライのリツイート数とお気に入り数

頭に@ユーザー名をつけて、両方をフォローしている人のTL以外には表示させない(リプライ)ようにして返しました。連続して同じような内容のツイートするときには、そういうやり方にしています。フォロワーのTLを、似たような情報が占領しないためです。
お笑いの方をちゃんと認識していることが本人に伝わるようにして、ツイートしました。

画像:再々リプライのリツイート数とお気に入り数

またリプライが返ってきました。ここまでのやりとりの流れ、そして出したい情報も、これまでのツイートを加工して、文字数制限の中で書かれています。すごい芸です。最初に使った画像も、使ってくれています。
向こうが乗っかってくれています。

画像:再々こちらからのリプライのリツイート数とお気に入り数

こちらもリプライしました。

ここに出しているのは1時間ほどのやりとりですから、ものすごく効率がいい。そしてこちらの出したい情報のエッセンスも、ずっと入っています。広告/広報的な内容を、面白がって拡散してくれている。


画像:ヨシモトホールのドア

大御所の方々よりも、深夜帯にちょっと出ることがある、ぐらいの芸人さんの方が拡散するようです。アイドルと一緒で、希少だからこそ、ファンも強い関心があるのかもしれません。




リツイートなど拡散の度合いも重要ですし、フォロワーにきちんと届けることも大切です。
でもそれだけじゃ、たぶん不十分。最初に書いているように、大切なのはクラスタを越えること。実際は、どんどん閉じこもる方向にあるインターネットの中で、クラスタの壁を越えることこそ重要な課題です。


いずれも話しかけてきた相手が誰なのか、ちゃんと調べてから対応しているから、好意的に会話ができたり、お互いのメリットを理解して相乗効果で拡散するのだと思います。
ソーシャルスコアの高いインフルエンサーだから、重要だと考えるのとは、ちょっと違いますね。



といっても、最初に相手が面白がってくれないと始まりません。ネットの有名人もタレントもアイドルも無縁だ。こんな内容、役に立たないというアカウントの方も多いかもしれません。
次回は、インフルエンサーとは関係ない拡散の方法について書きたいと思います。




 株式会社イグジィット ウェブサイト

2 件のコメント:

Yusuke さんのコメント...

マイナーなアイドルやお笑いタレントとのコミュニケーションが拡散につながるというのは盲点でした。
非常に面白かったです。記事更新楽しみにしてます!

akiosegawa さんのコメント...

ありがとうございます。偶然ですけどね(笑) フォローはしてくれてないけど、広い意味でのファンの中に、そんな方たちがいたということで。コアなフォロワー層とは違う人たちに届けようとしたら、心強い味方ですよね。
たぶん芸能関係でも、マスメディアやCMでの露出より、自分で発信してファンを掴もうとしている人たちが増えてるんでしょうね。