日曜日の夜、合気道の稽古が終わって歩きながら、中学生の女の子と話していた。私は、道場の広報をやっているので、さまざまな年齢層の人からSNSなどについて聞かれることが多い。でも最年少のこの子には、どういうツールを使っているのかなどを教えられることがあります。
この子自身はGoogle+を学校のサークルの友達たちと、Facebookをほかの友達たちと使っているんだそうです。だけどそれは少数派で、クラス全体ではTwitterとLINE。最近、LINEは授業中にまでやってる人たちがいて、LINE内のいさかいみたいなことが現実と直結してて、ちょっと問題だという。私はそれを聞いて、いやぁ、社会人も一緒いっしょと笑ってました。まあデジタルネイティブも、非ネイティブも、そういう点では大差ない。
だけど考えてみると、同じ会社内で同じSNSに入っている場合、お互いに触れないようにしているか、「いいね!」「+1」みたいなことだけして、お茶を濁してるんじゃないだろうか。いさかいが多いのは、リアルでは知らない人同士の場合が多そうに思えます。
先日、コンビニで雑誌のコーナーを眺めていたら、若い女性のふたり組のひとりがTarzan特別編集の「30日でキレイをつくる」シリーズを持ち上げて、これだよねと言っていた。即座にもうひとりが「ムダムダ」と笑いながら、ふたりとも立ち去ってしまいました。
ふたりとも今どきの女の子で、たぶんスタイルが悪いわけじゃない。<雑誌を買ったって特別なことが書いてあるわけじゃないし、買ってもムダ>だと考えたんだろうか。それとも<読んで自分ひとりでやれるぐらいなら苦労しない>ということなんでしょうか。あるいは、ってどれだけ想像をめぐらせてもしょうがない(笑)
Tarzanという雑誌は、ムダに詳しい。たぶん毎号、専門書に匹敵するぐらいの掘り下げ方で、さらにウェアやサプリなど周辺の最新情報も載っている。たまにしか買いませんが、書かれているようなことが理解できるんなら、誰もジムに通わないよなぁと思ったりする。
そんなターザンが特別編集するって、どんな内容なんだ。Amazonでチェックしてみると、ああ、これは普段運動習慣のない人向けだろうなと思いました。
簡単なエクササイズを1日1種目、30日間、しかも1エクササイズ15回だけを続けるだけだというし、写真と文字が大きいということだから自宅で見ながらやるにはとてもいい。もちろん、その程度のエクササイズで、「少女時代みたいなスマートな脚、ミタンダ・カーにたいなキュートなお尻に近づけます」というのは、けっこう無茶だという気がします(笑)
それはともかく、中身を読んでもいないけれど、簡単なエクササイズ程度の内容なら、ネット上に転がってないか。Youtubeにだって、いっぱい動画があるでしょう。
きっと、ひとつひとつのエクササイズは転がっていても、それを自分で30日分構成するとかってことが出来ない。注意点や安全性などへの信頼感が足りないと考えた人は、「30日でキレイをつくる」シリーズを買うんだと思います。シリーズは3冊あるようですが、コンビニに3冊あるってことは、それなりに売れてるはず。
こんな記事があります。
出版不況、中でも雑誌は深刻! ピーク1996年の3分の2の売上高
そりゃあ、そうでしょう。このところ若者が雑誌買ってるところとか、電車の中で読んでいるところを見たことがないです。新聞はもちろん、一人暮らしの若者はテレビだって持ってない。必要なクリッピングはネットにあるし、情報やコンテンツにお金を出す習慣がない。オピニオンだって、Twitterの中にあるってことでしょう。
その一方で、同じJ-CASTニュースにこんな記事がありました。
男性ファッション誌、異例の販売急増 その理由は「女性の目が厳しいから」
読んで大爆笑です。「イケてるダンナ」になれと迫れて、30~40代向けメンズファッション誌が伸びてるなんて。
ここで、ちょっと疑問。50代以上の既婚者男性なら、下着からスーツまで奥さんが買ってくる、あるいは奥さんに選んでもらうという人が圧倒的でしょう。30~40代の奥さんは、もしかすると選べない?
そういえばこの正月、銀座三越と伊勢丹新宿と松屋銀座では、合コン用も福袋を売り出したそうです。
さらにプランタン銀座と阪急メンズ東京は「合コン」に着ていく服を福袋にし、両店のカフェを会場に「デパコン」を開催するといいます。コーディネート一式が福袋になり、相手の服は本人が選んだわけではなく百貨店に揃えてもらったものだと知った上で合コンするわけですよね。
自分では選べないのか、選んで買い回る時間がないのか。
女性は、少なくとも美容院でファッション誌をいろいろ読んで研究しているもんだと思ってました。いや、研究しているのかもしれません。だけど、婚活で男性ウケするファッションとなると、まったく自信がないってことかもしれません。
30~40代既婚男性の奥さんが、ご主人の服を選べなくなっているんだとしたら、「イケダン」に思ってもらえるスタイルというのが、さっぱりわからないということかもしれません。
「イケてるダンナ」に思われるかどうかなんて、大きなお世話だと思うのですが、もしかしたらこういう現象は、マスメディアの衰退とリンクしているのかも。と、私は思っています。あらゆる権威というのが失墜して、ネット上のコンテンツに接触することが多くなっている。でも質は玉石混淆。SNSでも狭い(あるいは実質的に閉じられた関係の中と言ってもいいのかも)コミュニケーションが主体になってくると、リアルな世界で「ここを押さえておけば大丈夫」というお約束がなくなってしまう。
有名な出産・育児雑誌は、創刊以来、核家族化で相談できる人が身近にいないからウケていると分析されていました。それが育児のための“専門的な知識”を得ることから、“体験談”を聞きたいメディアへと変容し、いつしかファッション誌化した。このことから、本当に必要な情報は、雑誌に求めないのではないか、とも考えられます。
もちろんこの雑誌メディアは、早くからネット上でのコミュニティサイトとして展開。圧倒的な会員数利用者数を誇るメガサイトとして知られています。
評判を検索してみると、施設や商品などの口コミではネガティブな投稿が削除されるなど、集合知が機能しているとは評価されていないようです。また相談をしても常識のある正しいママたちが、誤字脱字を指摘したり、使った言葉の定義をめぐって意見したり、相談したかったこととは趣旨の違うレスポンスが多いという情報が数多く出てきます。
もちろん私は中身まで見たことがないので、なんとも判断しがたい。ただ相談内容の趣旨とは違うところで上げ足を取っているのであれば、リアルでは「相談されない人」でしょう。
こういう風に考えてくると、従来のメディアも、ネットもあまり信用も信頼もされていないのかもしれません。
新聞や雑誌はもう必要とされていない。という議論が盛んで、なんでもかんでもデジタルシフト。でもデジタルになれば必要とされるのかというと、それは違うでしょう。
たぶん、ネットで24時間つながっているからこそ情報は入ってくるけれども、何が必要なのか、何が本当なのかが判断できない状態。つながっていることがエンターテイメントなら面白いけれども、閉じた中でしか通用しないことを多くの人が感じてる。今はそういう状況なのかも、です。
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