2015年10月28日水曜日

Twitter、FacebookやInstagram、SNSのアカウント凍結はどうして起こる?




7年ぶりに新作を発表し、8月末からワールド・ツアーを決行しているジャネット・ジャクソン。ところがコンサート映像をInstagramに投稿したファンたちのアカウントが凍結されるという事態が相次ぎ、アカウントそのものが削除される人まで出たそうです。
この騒動にジャネットは、こんな投稿をしました。

「私のチームは、このツアーや将来のプロジェクトのために私たちが創り出している知的所有権を守ることにとても熱心なの。私に代わって、ソーシャル・メディアのアカウントを削除するのが彼らの目的ではなかった。長い映像を使うのを許可すると、これらのプロジェクトにおける契約上の問題が生じる。みんなが理解してくれることを願っています。私は、ファンは短い録音物を自分たちの思い出のために使ったり、適切なソーシャル・メディア・ネットワークで共有しているのだと信じています」

「チームには対応の仕方を変更し、みんなが映像を共有できるよう要請しました。私が拠りどころとしているこの愛がなければ、私はいまここにいないであろうことは承知しています」

ジャネット・ジャクソン、ファンのSNSアカウント凍結問題に言及

Hey you guys, I have been listening... I love and appreciate my fans. I want you to know that I enjoy watching the short video clips of how you are Burning It Up at the Unbreakable shows. Please keep posting them. My team is passionate about protecting the intellectual property we are creating for the tour and possible future projects. It was never their intention, acting on my behalf, to have social media accounts removed. Permitting the use of long clips does present a contractual problem for these projects. I hope you understand. I trust the fans will use their short recordings for their own memories and to share on their social media networks of choice. I have asked my team to change their approach and allow you to engage socially with these videos. I know I wouldn't be here without the love I stand on.
Janet Jacksonさん(@janetjackson)が投稿した写真 -

私はマーケティングとしても、ジャネット・ジャクソンの考えが正しいと思います。ソーシャルメディアでの話題がツアー、そしてアルバムセールスやグッズのセールスに繋がるはずです。ソーシャルメディアの時代以前から、ファンにそっぽを向かれて人気が急降下した例は数多くありますよね。もちろん映像化権などを持つ権利者は、そんなこと言ってられないとは思います。

ともあれ、ここで重要なのは、権利者側からの通報でInstagramはユーザーのアカウントを凍結したり、削除したということですね。
Instagramの持ち主はFacebookなので、Facebookでも同様の通報があれば即アカウント凍結になるかもしれません。

今年の前半、「ツイッターのアカウントが凍結された」という話をネット上で頻繁に見かけました。いったいアカウントの凍結や削除は、どうして起こるのでしょう。
周囲で凍結されたり、削除された人はいないので、調べてみました。



ツイッターのルールは、細かく規定されている



普通に考えて、それぞれのサービスが定めている利用規約に反すれば、凍結されても不思議ではないでしょう。逆に乗っ取り以外では利用規約を守ってさえいれば、凍結されないと考えていいはずです。

ツイッターの利用規約を読んでいると、「Twitterルールをご覧ください」と出てきます。
Twitterルールはいっぱいあります。主要な項目だけ、抜粋してみます。他にもありますので運用している方は、ツイッターのルールページを一読してみてください。

なりすまし
他者の個人情報または機密情報を、本人の承認や許可の表明なく公開、投稿すること
暴力および脅迫やその奨励明確で、かつ完全な著作権の侵害非合法利用
Twitterでのバッジの誤使用アカウントの大量作成  
特定の人物に向けた罵倒や嫌がらせ
1ユーザーへ複数アカウントからメッセージを送信
不正アカウントの取得
招待スパム
ユーザー名の売買
マルウェア/フィッシングスパム
ツイートの更新が、主にリンクのみであり、人的でない場合
多数の人にブロックされている場合
そのアカウントに対する多数のスパム報告があった場合
重複した内容を、複数アカウントから投稿した場合、またはひとつのアカウントで重複した内容を複数投稿した場合
ハッシュタグ、トレンドトピックや人気のトピック、プロモトレンドなどを使用し、そのトピックとは関係のない更新を複数投稿した場合
重複した内容の返信や@ツイートを多数送信した場合

ツイッターのルール

と大筋では常識的なところです。
そういう行為もあるから禁止しているわけねと、通常では気がつかないような細かなルールもあります。重複した内容を複数アカウントから投稿したり、関係のないハッシュタグを付けるのは、大手でもやっているところはありますよね。違反していること以前に、関係の薄いハッシュタグで表示されたとしても、ネガティブな印象が拡散するだけです。

いままで大丈夫でも、同様のルール違反をするアカウントが増え、目に余るようになれば、一気に凍結されたり、削除する可能性も少なくありません。
どのソーシャルメディアでも、きっと同じです。凍結や削除に、手順を踏むかどうかの程度に違いがあるだけでしょう。





Facebookは大きく四つの目安で、削除の基準を出している



Facebookでは「コミュニティ規定」というページで、どんなコンテンツをシェアしていいのか、どんなものが報告や削除の対象になるのかという目安を出しています。
四つのカテゴリーは安全の確保、礼儀正しい行動、アカウントと個人情報の保護、著作物の保護の四つです。
それぞれ細かな内容が書かれていますので、一読してみてください。

コミュニティ規定


注目すべきは最後の、「不正利用の報告」という項目。ここには、こう書かれています。
弊社では、誰もが快適にFacebookを利用できるよう、不適切なコンテンツの排除に努めています。そのためには利用者の皆様のご協力が必要です。Facebook上で利用規約に違反していると思われるコンテンツを見つけた場合は、弊社にご報告ください。世界各地の専門チームが報告の内容を確認し、Facebookを引き続き安心してご利用いただけるよう適切な対応をいたします。 
フェイスブックの利用規約では、漏れがあるかもしれない。また人それぞれ、不快に思ったり違法だと思う内容は違うから、報告してください。それがこれからのFacebookを作りますというニュアンスでしょうか。それなら「コミュニティ規定」というタイトルにした理由もうなづけます。



Instagramはモラル、そして知的所有権の侵害に敏感?



Instagramの利用規約やコミュニティガイドラインは独特です。一般的なユーザーに対してわかりやすく説明しているというよりも、法律面だけではなく、モラルとしても正しいガイドラインであることを重視しているのかもしれません。

削除に関しては、利用規約にこう書かれています。
Instagramは、自らの裁量により、利用者が本規約に違反したと判断した場合、利用者のアカウントを削除します。利用者は、本サービスに投稿されたユーザーコンテンツについてInstagramが責任を負わないこと、および利用者が本サービスを自己責任で利用することについて理解し、同意します。
ここまでは常識的だと思いますが、利用者は利用規約やコミュニティガイドラインのすべてを読み、遵守する必要が求められています。
しかしその内容は、日本で読むとかなり厳格かもしれません。たとえば、こんなことが書かれています。

■写真やビデオは、自分で撮ったか、共有する権利を得ているもののみをシェアしてください。Instagramに投稿されたコンテンツは、投稿者の所有物です。偽りのないコンテンツを投稿することを心がけ、インターネットからコピーまたは入手した、あなた自身が投稿する権利を持っていないものは投稿しないでください。知的所有権について詳しくは、こちらをご覧ください。
■多様なターゲット層に適した写真とビデオを投稿してください。
芸術的・創造的なヌード画像をシェアしたくなることもあるでしょう。しかし、さまざまな理由から、Instagramではヌード画像を許可していません。それには、性行為や性器、衣服を着けていない臀部のアップの写真、ビデオ、デジタル処理で作成されたコンテンツなどが含まれます。また、女性の乳首の写真も含まれますが、乳房切除術後の瘢痕や授乳をしている女性の写真は許可されます。ヌードの絵画や彫刻の写真も許可されています。
利用規約
コミュニティガイドライン



自分が撮った写真でも「共有する権利を得ている」かどうかは微妙です。食事に行ってその料理の写真を撮ったとしても、シェフやお店が共有することを「許可している」かどうかは、わかりません。
ヌードは禁止だけれども、ヌードの絵画はいいとのことですが、美術館で撮影禁止になっていたとしてもInstagram側には、わかりません。
ヌードに関しては、今年の夏、ハッシュタグ#EDMが禁止されました。EDMとは、Electronic Dance Musicのことですが、#EDMを付けたヌードの投稿が多過ぎるという理由なんだそうです。

「ヌード多すぎ」Instagramがハッシュタグ#EDMを禁止


この記事では「踊ってアツくなって脱いだのか、それとも人気のタグが利用されただけなのか…」と書かれていますが、海外の音楽フェスやレイブ(ダンスミュージックの音楽イベント・パーティー)では脱いでしまって上半身裸の写真などは、昔から多くありました。あまりタグだけ利用して裸を見せる人が多いとは想像しにくいのですが、実際はどうだったんでしょうか。


また知的所有権のページからは、著作権、商標それぞれのページにリンクし、詳しく書かれているだけではなく、報告ページや著作権法指定代理人への連絡方法のページまで用意されています。しかし通報の入力フォームはかなり面倒くさそうなので、通報を推奨しているわけでもなさそうです。



報告/通報のハードルと効果



ジャネット・ジャクソンファンのアカウントが凍結されたのは、この「通報」ですね。
著作権や商標を侵害されていることが致命的な問題になるようなグローバルブランドなら、侵害を日々探しているでしょうし、見つけたら即通報するでしょう。
日本では、そんなことをしているのは大企業でも少ないかもしれません。ただ権利者は、自分で見つけて、自分で通報する必要があるということですね。

私はSNSではありませんが、ブログの記事をまるごとパクられて、ブログの運営会社に通報したことが二度あります。両社とも日本のサービスですが、まったくなんの返答もなく、無視されています。削除を期待して送ったわけではなく、どういう対応をするのか知りたかったのです。
二度とも、完全コピーに一、二行足しただけの、アフェリエイト誘導ものだったので悪質です。報告をするためのリンクは見つけにくく、あえて探せないようにしているのでしょう。ましてや利用者でも顧客でもない相手に、運営会社は手間をかけて対応する気がないのでしょう。スパム行為も放置しています。

アメリカ企業であれば、そうはしないのではないでしょうか。このBloggerなら、運営しているのはGoogle。Googleは検索から外すことと同様に、明らかな完コピを通報して、放置するとは思えません。様々なグローバルなソーシャルメディアも同じでしょう。

日本だと運営会社は「それぐらい、目くじら立てなくたっていいじゃん。めんどくさ」ぐらいの意識かもしれませんが、アメリカだと著作権の侵害は一大事。法令違反も放置すれば訴訟リスクも高いですし、なによりそんな企業だという「評判」を恐れるはずです。

そういうこともあって積極的に勧めているのではないにせよ、通報方法を目立たせているのでしょう。
もっともシンプルなのはTwitterで、そのツイートから報告できます。利用規約も含め、ユーザーにわかりやすく使いやすい工夫をしているのは、Twitterだけかもしれません。




そればかりではなく、Twitterは定期的にアカウントを削除したり、凍結したりしていると思われます。そのために細かく「ツイッターのルール」を書いているのでしょう。実名が必要ないサービスなので、アルゴリズムで大量に削除しないと健全性が保てないのだと思います。

その他のソーシャルメディアでは、もっとも重視しているのが、報告/通報ではないかと、私は想像しています。



アメリカで管理していることの限界



実名制ならいいかというと… 今年の6月、爆風スランプのドラマーでRUNNERの作曲者、ファンキー末吉さんのFacebookアカウントが凍結されました。

ご本人のブログに、書かれています。要約すると、

FacebookからあなたのFacebookアカウントに登録されている名前は実名ではないようです。「名前を変更して下さい」と言われてログイン出来なくなった。
アカウントの名前がすでに日常的に使用されている名前になっている場合、この名前があなたの身元を表す上で最適なものであることを確認にご利用いただける書類は、多数認められています。詳しくは以下のヘルプページをご覧くださいというメールが来たので、手続きした。
パスポートの写真ページも添付した。
それでログインしようと思ったら「名前を変更して下さい」になって、変更したら同じメッセージが出て、また振り出しに戻る。誰かFacebookチームとやらへの連絡方法知ってたらワシの代わりにクレーム言って〜 
というもの。

Facebookにログイン出来なくなった(>_<)


凍結されたのが6月29日で、7月2日にはG+で「Google+にだけ投稿してみよう」と投稿されていますので、数日間は凍結されたままだったようです。
現在、ファンキー末吉さんのFacebookアカウントはありますが、何もない状態です。

Facebookが身元を確認する方法としているものは、◯公的身分証明書 ◯非政府発行身分証明書2通(プロフィールに記載されている情報に一致する写真か生年月日が含まれている) ◯その他の方法 となっています。
いやあ、たかだかFacebookをやるために、そんなものまで提出するなんてバカバカしいと思いますが、なりすまし等の被害を防ぐためには、しょうがないのかもしれません。
日本でなら、爆風スランプだ、RUNNERの作曲者だと言えば誰でもわかりますが、アメリカだと無名でしょう。
身分証明書を出したところで、それが芸名とどうつながるのか。テレビ出演や雑誌の映像を提出でもしないと難しそうです。

でも考えてみれば、実名制で、実際のつながりを持つ友だちが核になっているFacebookなら、友だち何名以上の確認が出来れば、芸名などの通称もOKにしたって良さそうです。万が一の訴訟リスクでしょうか。


うちでも、似たようなまどろっこしい出来事がありました。SNSではありませんが登録しているメールアドレスを変更したら、旧アドレスと新アドレス両方に確認メールが行き、すでに旧アドレスはメールサーバー自体を削除していたので、そのサービスを受けられなくなった。旧アドレスにも確認メールが行くなんて、どこにも書いてありませんでした。
サポートに電話したら、10日経てばメールが届かなかったと判定されて別の手続きが出来るとのことでした。
いったん電話を切ったのですが、すぐこの電話番号は利用料金を払っているユーザーとして登録されているはずだし、本人確認としては一番確実じゃないかと思い、再度電話しました。それですぐに復旧しました。
そう、本人確認では電話が、簡単で確実なはずです。



身元確認に、電話番号を登録させる流れ



そこまで煩くしているFacebookでも、実名ではないアカウントは少なくないはずです。通報をするユーザーの身元は間違いないのかどうかも含めて、電話番号を登録するのが確実だと思われます。
Facebookでは以前から電話番号の登録を促していますし、Twitterでも最近そんなメッセージが出ました。Googleはもっと以前から電話番号を重要視しています。G+のローカルページは当初NTTの電話帳から生成されていたと私は思っていますし、Google マップも同様でしょう。現在ではGoogleアカウントの二段階認証でも電話番号をうながされます。

ソーシャルメディアが電話番号の登録を推奨するのは、アカウントのセキュリティ向上のため。乗っ取りなどの被害を防ぐのに役立ちます。

企業やお店がソーシャルメディアのアカウントを持っていないと、なりすましなどの被害にあう可能性が高まります。基本は自らなりすましを発見して、申し立てする必要があります。本物かどうかを知らしめるのには、電話番号を登録するのが必須になりつつあるようです。ちがう言い方をするなら、ソーシャルメディアのアカウントは、電話利用と同等になってきているようです。

もちろん、ソーシャルメディア側ではセキュリティのためだけに、電話番号を登録させるのはありません。Facebookのアカウントにケータイ番号を追加すると「友だちからのSMSお知らせ」が届くようになってしまいます。
これを停止させるのが、またややこしいのですが(笑)


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2015年10月16日金曜日

対照的な[Google Play Music]vs [Apple Music]のプロモーション戦略


画像:3500万曲ビルボード_1

続々と定額制音楽ストリーミングサービスが始まった今年。やはり話題を作っている中心は、AppleとGoogle。ですよね。


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Apple Music

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Apple Musicは6月30日にスタート。ネット上では、3か月間の無料トライアル期間をもうけることを発表すると、テイラー・スウィフトが「楽曲の使用料が支払われないのは自分はともかく、インディーズや若手ミュージシャンにとって死活問題」「アルバム“1989”をApple Musicに提供しない」とTumblrに投稿したことが話題になりました。そうトライアル期間中の使用料を支払わないことを、三大レーベルと取り決めていたのです。どうも、その他のレコード会社には三大レーベルと歩調をあわせることを強いていたようです。

アップルはすぐさま対応。翌日には楽曲使用料を支払うことを発表し、テイラー・スウィフトも“1989”をApple Musicで配信することを決めました。
テイラー・スウィフト、Apple Musicと仲直り アルバム「1989」を配信へ

この騒動を「話題作りのためのヤラセ」だとする声もありました。“1989”の配信決定をテイラー・スウィフトがツイートしたのが6月26日というサービス開始の直前だったため、怪しいといえば怪しい。私はまさかと思いますが、これが大きな[話題]になったのは間違いありません。
こんな記事も書いたぐらいで、テイラー・スウィフトチームはソーシャルメディアの使い方が抜群に上手です。
テイラー・スウィフトに、ソーシャルメディア マーケティングを学ぶ

上でリンクしたハフポストに書いてある「ファレル・ウィリアムズの新曲『Freedom』の独占配信」は、日本ではそれほど話題にならなかったのではと思います。



オリジナルコンテンツ「Apple Music Festival」の配信


ロンドンで9月19日から10日間、Apple Music Festivalが開催されました。以前は2007年からiTunes Festivalという名称で行われていたミュージックフェスです。
今年はテイク・ザット、ケミカル・ブラザーズ、Disclosure、ファレル・ウィリアムズ、One Direction、フローレンス・アンド・ザ・マシーンなどが出演する、豪華なフェスです。


Apple Musicとの連動は、ただフェスの様子が配信されるというだけではありません。Apple MusicのConnectがポイントです。
Connectからバーチャルバックステージパスの入手が可能。今すぐ ConnectのApple Music Festivalをフォローして限定ビデオや画像をチェック

そうエキサイトのApple Music Festivalの特設サイトに書かれています。アップルのオフィシャルサイトへ行こうとすると、Connecting to the iTunes Store...になります。
ともあれファンにとっては特別な体験が、Apple MusicのConnectによって可能になります。熱心なファンにとっては、たまらないサービスでしょう。


アップルのサイトでは、Connectを「ファンのみなさんが大好きなアーティストと親しく交わることができる場所」だとしています。

音楽そのものを提供するだけなら、目新しさはありませんし毎月980円を払う価値も希薄なので、Connectは面白いと思います。
ただその熱心なファンが、他のアーティストの曲も聴けることに、毎月980円を払うほどの価値を感じてくれるかどうか。親しくといっても日本のアイドルの握手会とは、比較にならないですし。
また世界で展開する巨大な定額制音楽ストリーミングサービスが、メジャーなアーティストの熱心なファンを、まず取り込むことの不思議さは感じます。



ブランディングのための広告を展開


Apple MusicのCMは何本もあります。Apple Music FestivalではConnectでメジャーなアーティストの熱心なファンの取り込みと書きましたが、広告では一転して、マニアックなアーティストばかり取り上げています。


YouTubeの説明には、「あなたが聴くアーティストと同じくらいユニークな音楽サービス。新しい音­楽と、それを生み出す人たちを見つけてつながりませんか。例えば、tofu­beats氏のようなアーティストと」と書いてあります。
Connectできるのがマニアックなアーティストになれば、メジャーなアーティストより数では劣っても、利用する動機が強くなりそうです。

実は、ツイッターではApple Musicそのものだけではなく、メジャーマイナーを問わずアーティストを紹介しながらフォローもできるようにツイートしていて、とても好感が持てます。
@AppleMusicJapan



そしてApple Musicは巨大な駅貼りの連続で、巨大な地下空間をジャックしていました。これがあきれるほど、カッコイイ。

画像:Apple Music poster_1画像:Apple Music poster_2
画像:Apple Music poster_3
画像:Apple Music poster_4

上の二枚は、8月中旬の渋谷駅地下の渋谷チカミチ内です。下の二枚は、9月中旬の、やはり渋谷駅の地下です。
すべてロゴのフォントを変えていて、リンゴのアップルマークだけあればいいという強気な表現。それぞれ創作されたMUSICの文字は、多様な音楽を表現しているようです。

私は山手線のジャックにも遭遇しました。圧倒されてしまうハイイメージの広告ですが、これがどれほど利用者増につながるのか、なんとも判断しようがありません。それほどアップルのブランドイメージは、特にアートや音楽ジャンルにおいては強力です。

イメージや認知度の高さを追求していて、もしかすると検索なんてあてにしていないというスタンスなのかなと思いました。
アップルユーザーであれば、オフィシャルサイトだけではなく、 iTunesからApple Musicにやってくるでしょうから。


検索している人は、どれぐらいいるでしょうか。Google Trendで調べてみました。実数はわかりませんので、Apple MusicとGoogle Play Musicのボリュームの比較です。
[Apple Music]が青の線、[Google Play Music]が赤い線です。日本での、この12ヵ月の相対比較です。


これを見るとApple Musicはリリース前後が検索のピークですね。8月の終わりから9月の頭にかけてGoogle Play Musicが上回りますが、現在では倍ほどの差があります。
アップルが検索をあてにしていないのかどうかまではわかりませんが、関連キーワードに[Apple Music 使い方]もありますし、急激に増加している中に[Apple Music Android]もあります。



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Google Play Music

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後発のGoogle Play Musicは、日本では9月3日にスタート。Apple Musicと同じ月額980円ですが、フリートライアルは1ヵ月間。そして10月18日までに登録すると、ずっと月額780円になるという、Googleらしい、巧妙な価格戦略が採用されています。

しかしApple Musicのような話題がありません。Google Playが立ち上がったときは、ビルボードカーが走っていました。Musicではなにもやらないんだろうかと思っていたら、10月7日の朝、渋谷パルコのスペイン坂広場で「今すぐ聴ける、3500万曲再生中」と書かれたボードを発見。イヤホンジャックの穴が無数に空いていて、ここに差すと音楽が聴けるんだろうなと想像しました。なんたって、裏側にはケーブルがぎっしり繋がっていました。

画像:3500万曲ビルボード_2



スペイン坂広場に「3500万曲ビルボード」設置の狙い


検索しても何も出てきません。翌日のGoogle Japan blogに出ていました。10月8日から24日までの開催で、12:00 〜 20:00だそうです。
これがいつ見ても、けっこう盛り上がっています。

画像:3500万曲ビルボード_3
画像:3500万曲ビルボード_4
画像:3500万曲ビルボード_5


仕組みは特設サイトから、お題にあった曲を投稿。選ばれるとビルボードで流れるようになるというもの。
投票する人が、スペイン坂広場にやってくるかどうかは、あまり関係なさそうです。
投票せずに来た人だって、ヘッドフォンやイヤフォンを差せば音楽が流れるし、ちがう穴に差せばちがう曲が流れる。それって、どれほど面白いんだろうと思いますが、みんな楽しそうです。次々に、ちがう穴に差しています。




お題は、次の通り。
・恋人を家に呼ぶ時にかけていたい1曲
・私的、次の世代に残したい1曲
・ツッコミどころ満載の1曲
・好きな人にプレゼントしたい1曲
・はじめて自分で買った思い出の1曲
・ココロが折れそうなときにききたい1曲

いくらスペイン坂広場には、大勢の人が通るとはいえ、渋谷だけでやっていて、それほど広がるでしょうか。
ネット上での拡散のフローを知りつくしているはずのGoogleが、それだけで終わるはずがありません。


ソーシャルメディアでの拡散の仕掛け


ツイッターでは、お題のひとつ「ココロが折れそうなときにききたい1曲」がハッシュタグでツイートされていました。Google側の仕掛けかどうかは不明ですが、ツイッターでひろがりそうなネタです。
そう思って見ていると、「#渋谷3500万曲ビルボード」がツイッターのトレンドに表示されていました。Googleが、ツイッター広告を利用しています。


さらに「#渋谷3500万曲ビルボード」で見ていると「#GooglePlayMusic」も一緒に書かれています。投稿しているのは、かなり若い。10代20代前半が中心のように思えます。これはツイッター広告だけじゃなくて、何かしているなと思って調べると、なんとシブフェスの「ハロウィン手当」というのをやっていました。

シブフェスは、神南や公園通り周辺のファッション関連のセレクトショップなどが参加するSHIBUYA FASHION FESTIVALのこと。今年は10月24日開催で、抽選で最大10万円分の「ハロウィン手当」を支給するそうです。
参加は3500万曲ビルボードを利用しているところを撮って、SNSに#渋谷3500万曲ビルボードと#GooglePlayMusicを付けて投稿。ビルボードの横に抽選するところがあるので、画面を見せてその場でやるのだと思います。この内容なら、TwitterとInstagramで出回りますね。



YouTubeでも10月10日に「Google Play Music 3500万曲ビルボード舞台裏」が公開されています。

この場所の前には、「本イベントは、各種メディアによる撮影・取材があり、撮影される動画・画像は、各媒体に使用される場合があります。またGoogleの広報活動に使用される場合があります」と書かれた札が立っています。

ネットメディアなどでどんどん出てくるのも、これからでしょうか。この場所でのイベントを拡散のネタにしようと考えていたのは確実ですね。
正直なところ、これを書いている時点では、Google先生の拡散の仕掛けがそれほど上手いとは思いません(笑) やはり仕組みでだけやろうとしているところが、明らかです。仮に「ハロウィン手当」を目的にして投稿している人たちが10代や20代前半だとすれば、ソーシャルメディア上で共有されやすく、拡散されやすいと思います。ただデジタルネイティブが、音楽に年間1万円近くも支払うとは考えにくいです。話題になるけれども、現実に利用者になってくれる人たちまでには遠そうです。


でも渋谷パルコや109前でイベントする企業の多くは、やったことを広告やパブリシティの素材として使おうとします。イメージをコントロールしたいから、撮影禁止としている大手もあります。
人が集まらなくても、やったという映像や写真が撮れればいいということだと思いますが、そういうところに比べれば、ちゃんと話題にする仕掛けを作っているGoogleは進んでいると思います。遠かったとしても、話題にならなければ始まりません。




Apple Musicは、アップルお得意の引き算の広告。Google Play MusicはSNS中心の拡散狙い。とまでは断言できませんが。
両社とも発表イベントを行えば、そのニュースが世界中を駆け巡るのですから、個々のプロモーションはそれほど重要ではないかもしれないです。ただ、どれだけ話題を伸ばせるか。利用する動機になる話題を続けて、評判にしていけるかは、無形のサービスであるだけに、より重要に思えます。




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2015年10月5日月曜日

プロのカメラマンが、iPhoneだけ持って出かける日







iPhone 6sが、発売になりました。アップルのCMでは、映画の撮影シーンのような場面が出てきます。4K動画が撮れるということのアピールでしょうか。
あっという間に容量を食ってしまうとか、スタビライザーなどの機材が必要だとかはさておき、今までにもiPhoneを使ったMVなどは数多くあります。
もっともほとんどの場合は、スマホで撮っているという日常感を出したいか、あるいは強いエフェクトをかけているものです。

ビヨンセの全編iPhoneで撮影したというMVです。



バタフライの「iPhoneのみで撮影した挑戦的な作品!」と売りにしているMV。
Instagramのような処理です。



iPhone 6sは画素数が1200万になり、iPhone 6の800万画素から大幅に増えたそうですが、画質の面ではどうなんでしょうか。レンズの口径からしても限界はありそうですね。

それでも確実に、プロの撮影現場にiPhoneは入り込んでいるようです。どうしてでしょうか。


加速する報道の世界のiPhone化


スイスのローカルテレビ報道局Léman Bleuは、放送するレポート用のカメラをすべてiPhone 6にしたそうです。リポーターが片手にマイク、片手にセルカ棒にiPhoneくっつけて持つスタイルで中継するということですから大変です。
スイスのテレビ局、報道カメラをiPhoneに変える

日本のワイドショーだと、考えられないですね。街頭インタビューでさえ、カメラマン、音声、ディレクターという3人セットでやっている様子を頻繁に見かけます。リポーターがiPhoneで撮影しながら走る姿なんて、ちょっと想像できません。




そういえば東京MXテレビでは、95年に開局当初「ビデオジャーナリスト」が報道の売りでした。ビデオジャーナリストは企画、取材、撮影、リポート、インタビュー、編集までを1人で行います。三脚に小型ビデオカメラを設置した前でしゃべっているリポートの姿は衝撃でした。
でも、どうもうまく行かなかったようです。
ビデオジャーナリストが日本人の視点を変える日


アメリカでは、ひとりでなんでもやってしまう「スーパージャーナリスト」と呼ばれているそうです。

アップルもそんな姿を、思い描いているのだと思います。iPhoneだけじゃなくて、Macとつながって編集までシームレスにひとりでやってしまう。
スペックはともかくとして、スマートフォンとPC環境の連続性は、アップルにアドバンテージがあります。


コスト削減ということなら、スイスのテレビ局のような動きは、どんどん進みそうです。
でもコスト面だけではなく、ひとり、あるいは少人数で完結できるようになると、あたらしい報道の形が創造されるかもしれません。

時事通信の映像ニュースというTwitterのアカウントが7月から始まっているのですが、なんとVineで報道しています。積極的に打ち出していないので、まるで知られていません。実験的な段階なのでしょう。でも私はとても意欲的で斬新な試みだと思います。
もしTwitterへの公開までスマホだけで完結していれば、速報性という点でも画期的です。問題はデスクがどうチェックするのかと、マネタイズの方法でしょう。



商業写真は、どうなっていくのか


いままで何度か書いていますが、広告などに使われる写真の合成は、行き着くところまで行っている気がします。完璧な整形美人のようです。
写真の加工や合成は、どこまで許される? どのぐらいが適正なのか?


またリアリティではなく、加工した雰囲気で見せる写真も、かつてないほど増えています。
合成や加工が当たり前なら、iPhoneで撮れば早いんじゃないというところですが、なかなかそういう流れになりません。どうせほとんどがデジタル一眼で、MacBookなどにつないでチェックするのですから、加工レベルならiPhone→Macでその場で出来てしまいます。


でも、やはりリスキーです。
三脚はほぼ必須ですし、他の機材が重装備なのに、カメラだけ手軽なiPhoneにする意味がありません。
物撮りなら、なおさらです。手持ちで撮る屋外のポートレートなど、ナチュラル感や構えなさを求めるなら、あえて使うこともあるかもしれませんが。


プロカメラマンの世界で、iPhoneが台頭してくるとすれば


こんな記事があります。軍事ジャーナリストの加藤健二郎さんが、メルマガで書かれたものだそうです。
iPhoneに勝てない戦場プロカメラマンの苦悩


オートフォーカス一眼レフカメラの普及により、記者や旅行者が手軽に良い写真を撮れるようになったからだ。もちろん、職業カメラマンの写真の質の方が上だったが、雑誌の読者はそんな些細な差を求めていない。
カメラマンの主力商品は写真からネタに移ってゆく。富士山を最高のクオリティーで撮った写真よりも、ピンボケ手ブレで撮った金正日のプライベート写真のほうが圧倒的に価値が高い。こうなってくると、「写真+記事」でさえ、内部流出的なものには勝てなくなる。

いやもう、この文章だけであらゆる流れが含まれていて、唖然としてしまいます。

◯雑誌の読者はそんな些細な差を求めていない
質を求めている人でさえ、雑誌を買ったり写真集を買ったりして、お金を払おうとする人は稀でしょう。求める求めない以前に、些細な差がわかるのかどうかということだってあると思います。
衣食住、あらゆるジャンルでこれだけファスト化が進めば、差を求め、それだけの対価を払う人は少数の好事家だけ、という事態になっているのではないでしょうか。

◯「写真+記事」でさえ、内部流出的なものに勝てない
加藤さんは、専門性を活かした記事をセットにすることで付加価値を付けたけれども、それも検索の時代になって、素人でも記事を書けるようになってしまった。
そして写真そのものも内部流出どころか、このメルマガには「戦場の兵士や戦士たち自身が、YouTubeにどんどん映像をアップしてゆく時代になってしまった」と書いています。写真そのものだけでは売り物にならなくなったころから、戦場カメラマン渡部陽一さんがタレントとして脚光を浴びるようになる。

つまりはその場にいる人だけが、撮ることができる・書ける作れるネタになってしまったということでしょう。それ以外は、なかなか付加価値的な値がつかない。
昔からブランドとしての有名カメラマンは存在していたけれども、一般ウケか業界ウケかというところが大きく違う。
業界内有名人という存在は、東京オリンピックのエンブレム問題以降、付加価値を失って行きそうです。


報道だけではなく、アドバタイジングやエディトリアル、グラビアやポートレート、ドキュメンタリーという分類に関係なく、ネタ化はどんどん進行しています。
ネタ化とは、言い換えるとソーシャルメディアで共有されること、話題になること。話題にならなければ、写真や映像があってもそれほどの意味がない。すでに、そうなっているかもしれないですね。




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