2015年9月10日木曜日

テイラー・スウィフトに、ソーシャルメディア マーケティングを学ぶ




土曜日の深夜、TBSの[CDTV]を見ていたら、レコチョク週間ダウンロードランキングで、テイラー・スウィフトの「シェイク・イット・オフ」が2位だと言っていました。
調べてみると、8月の月間シングルランキングでも2位。
レコチョク


アメリカでは、ビルボードシングルチャートでも、デジタルソングス・チャートでも初登場全米No.1になったのが昨年の8月。一年以上前に出た曲なのに、どうしてそんなに人気なんでしょう。
もしかしたら日本では、8月から家庭教師のトライのCMで使われはじめたからかも。
だけど、このCMがなくてもテイラー・スウィフト「シェイク・イット・オフ」の話題は、ずっと続いているのです。[話題]が続いていて、[評判]が良ければ、そりゃあ売れます。



警察官がパトカーで歌うYouTube動画に、テイラー・スイフトがLOLOLOLOL


ドーバー警察署の警察官ジェフ・デイビスさんが勤務中にパトカーの中で歌っている映像が、YouTubeにアップされたのが、今年の1月。
これは勤務中の警察官を監視する映像の中から、警察署が発見。楽しんでもらうためにシェアしたものなんだそうです。現在、オリジナルだけでも3600万回を突破しています。
公開されて3日間で1300万回を超えたということですが、実はテイラー・スウィフト自身がTwitterで拡散していたんですね。



LOLOLOLOLとは、調べてみるとlaughing out loudの頭文字を取ったらしいので、ゲラゲラゲラとかワロタワロタみたいな感じでしょうか。
テイラー・スウィフト自身がこんな感じでシェアすれば、あっという間に世界中に広がりますね。
彼女がツイートしたことで、曲を使って著作権的にも大丈夫なんだな、ともなるでしょうし。このあたり、ファレル・ウィリアムスにはない上手さです。

昨年6月、『YouTubeと音楽プロモーションのトレンドと著作権』の中で、ファレルの「Happy」が学校のプロモーションとして使われていることを書きました。「Happy」を使ったものは、ほとんどがプロが制作しているしっかりとした映像です。ところが「シェイク・イット・オフ」は、手作り感あふれる映像で学校の先生たちが踊っています。生徒たちによるものも多いです。
「Happy」は、いずれもみっちりダンスのトレーニングもして、専門家が撮影・編集をし、プロモーションを行っている印象。それに対して「シェイク・イット・オフ」は、誰かが言い出して1週間後には撮影した感のある、微笑ましいものです。このあたりのユルさ気軽さも、テイラー・スウィフトのSNS人気の大きなポイントだと思います。
※ちなみに警察官の動画をこのブログ上で再生しようとすると、UMGの制限がかかります。YouTubeで飛んでみると、CMが入るのでYouTubeとユニバーサルミュージックの契約。CM収入を得ることでOKしているということですね。



こういう口パク動画は、Lip Syncとか、Lip Dubとか呼ばれて、無数に上がっています。ちなみにアメリカでは「Lip Sync Battle」というケーブルテレビの番組ができるほど、人気だそうです。
あのロックが「シェイク・イット・オフ」を口パクしていて、爆笑しました。
The Rock danse et chante sur Shake it Off 


他にも大学生たちのLip Dubを「来年のコンサートに招待するわ」をツイートしています。この動画、何が面白いのか、私にはわかりませんが(笑) 


とにかくテイラー・スウィフトは、ツイートしまくってるんですね。
どれぐらいTwitterをやっているんでしょう。



テイラー・スウィフトは、365日24時間Twitterをやってる?


曜日・時間帯で見ると、やっていないのは、火曜から土曜日の19時台だけです。
グラフィカルTwitter分析whotwi



実際のところ、365日24時間なのかどうかは、わかりません。平均ツイート間隔は7時間なので、貼り付いてるわけではなさそうです。思ってたより、少なかったです。
でもこれだけバラけて、曜日時間帯を問わずやっていれば、いろんな層に届きやすい。拡散しなかったとしても、あらゆる層のフォロワーに届きやすいと言えます。
(フォロワーがアクティブな時間を狙って投稿しろと、よくセオリーのように言われますが、私はそんなことないと思っています)

また特筆すべきは、リプライとRTの多さ。リプライとは@が最初についたツイートで返信ですね。RTはリツイート。メディアやファン、友だちや仕事の仲間がツイートしたものを、テイラー・スウィフトが拡散しています。


インスタグラムの投稿は、Twitterと同じ。Twitterでリツイートされる回数もすごいですが、驚くべきことにインスタグラムでは軒並み1万以上のコメントがついています。
ちなみに一番上にインスタグラムに投稿されたばかりのスクリーンショット貼付けましたが、これが投稿3時間で2万2千以上もコメントされています。
「火災報知器が鳴ってる。どうしていいのか、わからない」という内容で、不安げな表情の動画と一緒に投稿されています。

ツアーやMV、アルバムや新曲のプロモーションばかりではなく、こういうステージ外の出来事をツイートしたり、ファンとのコミュニケーションに費やしている時間も膨大なのではと思います。
チームでやっていているはずだから、スタッフががんばっているのでしょうか。いや、コミュニケーションのところはけっこう本人でしょう。これを誰かが代わりになんて、難易度高そうです。

もちろんそれぞれの動画やVine、GIFアニメも多用していますので、写真も含め制作しているのはスタッフでしょうけれども。ファンだけじゃなくMVに出てくれた女優とか友だちとか、それをリプライするのは、センシティブなところがありそうです。アーティストとしてチームに任せているのであれば、かなり度胸があります。

実際がどうあれ、ファンからしたらテイラー・スウィフトがやっていると思える違和感のなさ。これだけコミュニケーションしているのですから。






ファンと、テイラー・スウィフトが用意した#Taylurkingでつながる


昨年発売されたアルバム『1989』には、ポラロイド写真が全部で65枚の中から、ひとつのCDにつき13枚入っていたそうです。
テイラー・スイフトは、ファンがこのポラロイドを持った写真を撮って投稿したものを、リツイーティングしていたそうです。

the day of the album’s release, Borchetta says Swift called to say she’d been retweeting fans’ pictures of the Polaroids. “She said, ‘Oh, my God! We’re just having so much fun!’ ” Borchetta says.
米Bloomberg


リツイーティングという意味が分かりませんが、テイラー・スウィフトはファンの投稿した写真を取って、自分でツイートしています。ファンはツイートにハッシュタグ#Taylurkingを付けていますので、これがお約束なんでしょうね。
ドッキリギフトや突然の自宅訪問、ツアーへ招待された人たちのツイートやインスタグラムの投稿にも、もちろん#Taylurkingがついていました。


それにしてもBloombergが取り上げるなんて、驚きですね。
実はウォールストリートジャーナルにも、取り上げられています。



iPhoneが登場してから、サインじゃなくて一緒にセルフィー


テイラー・スウィフト自身の寄稿のようです。昨年の7月にアメリカのウォールストリートジャーナルで公開されて、日本版に訳が出ていました。
「テイラー・スイフトにとって音楽の未来はラブストーリー」というタイトルなので、語られているのは音楽のことですが、ソーシャルメディアに関するところを抜粋します。



ユーチューブ時代のいま、昨年のスタジアムツアーではほぼすべてのファンがすでにショーをオンラインで視聴していることを念頭に置いて毎晩ステージに立った。彼らに今までに見たことのないものを示すために、私は十数人のスペシャルゲストを招いて彼らのヒット曲を一緒に歌った。私の世代は番組にあきたらチャンネルを変えることができる環境で育っており、気の短い時には本の最後のページだけを読む。われわれは予想外の事に喜び、驚くことを求めている。

過去数年で時代遅れになったものをいくつか目撃してきたが、まずサインが挙げられる。前面カメラ付きの「iPhone(アイフォーン)」の発明以来、サインを求められたことは一度もない。「今時のキッズ」が欲しがる唯一の記念物はセルフィーで、これは「インスタグラムに何人のフォロワーがいるか」という新しい価値観の一部のようだ。

友人の女優が教えてくれたのだが、最新の映画のキャスティングをめぐり女優2人が残った段階でキャスティング担当はツイッターのフォロワーが多い女優を選んだという。これは音楽業界でもトレンドになりつつある。 


テイラー・スウィフトは、25歳。彼女のファンも、10代20代のデジタルネイティブ世代が中心。日本のYouTubeをチェックすると、「シェイク・イット・オフ」を使ったLip Syncやダンスは、ほとんど高校生がやっています。

もうソーシャルメディアの使い方、うま過ぎでしょう。

※タイトル変えました。『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』を引用して最初に考えていました。でもカタカナが多くなるのでどうかと思ったのですが、よくよく考えてみると、グレイトフル・デッドの方法論は、デジタルネイティブより上の年代向けに素晴らしいと思いますが、ソーシャルメディアではない。
いまの時代のソーシャルメディア マーケティングなら、テイラー・スウィフトがキングです。




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