2015年2月19日木曜日

話題の[ブルーボトルコーヒー vs ゴリラコーヒー] 対照的なアプローチと拡散の流れ

画像:ゴリラコーヒー入り口付近

話題になっているオープンしたばかりの[ゴリラコーヒー]と[ブルーボトルコーヒー]ですが、そのプロモーション手法やソーシャルメディアでの拡散の流れが面白いなぁと思って見ていました。
そう書いてもゴリラコーヒー/ブルーボトルコーヒーってなんのことだよ、と思われる方が多いでしょう。
そう、フード業界など職業的関心は別ですが、個人的に利用したり話題にしているクラスタが大きく異なっているようです。だから現在のところは、トレンドになりそうな入り口付近。

簡単にご説明します。


ブルックリン発、ガツンとくるコーヒーが飲めるハイエンドコーヒーショップ“ゴリラコーヒー” が渋谷に日本初上陸

画像:ゴリラコーヒーほぼ全景
ゴリラコーヒー公式サイトのブログから抜粋すると、「ブルックリン在住のクリエイターをはじめ、 地域の人々からも愛されているコーヒーが楽しめるほか、 アメリカンテイストあふれるオリジナルメニューが味わえます」ということです。
その日本上陸第一号店は、渋谷。昨年12月26日にプレオープン、そして1月17日にグランドオープン。運営はジャーナルスタンダードなどで知られるベイクルーズ。
シンプルなコーヒーのお値段は270円



シアトル系に続くサードウェーブのシンボル的存在。コーヒー界のアップルとも呼ばれる”ブルーボトルコーヒー”が清澄白河に初出店


ブルーボトルコーヒー公式サイトには、情報が多くありません。日経トレンディの創業者インタビューによると、「すべてコーヒーを丁寧に一杯一杯抽出し、フードも店内のキッチンで作っている」「70%が認定オーガニックコーヒー豆」ということです。
店名は「清澄白川ロースタリー&カフェ」で、焙煎所と一緒になっています。オープン日には、3時間待ちにもなったとか。運営はブルーボトルコーヒージャパン合同会社。ブレンドが450円、シングルオリジンが550円


その他オープンになっている情報を含めて基本的なところをまとめると、こういうことかと思います。

ブルーボトルコーヒー vs ゴリラコーヒー比較表


店舗数からすれば8倍ですから、ブルーボトルコーヒーが圧倒していますが、チェーン店として考えればかなり小さい。それなのになぜ、注目されるのかといえば、ベースにあるのはアメリカの食に対するうねりのようです。



アメリカのコーヒーに代表される価値観の変化


コーヒーだけならサードウェーブ。サードウェーブにはいろいろ解釈があるようですが、第二次世界大戦後のコーヒーの大衆化、シアトル系チェーンの隆盛に続く3番目の波として「豆の産地にこだわり、生産者の顔が見える」「淹れ方にもこだわり、ハンドドリップや水だしをする」という新しいコーヒーカルチャーが支持されはじめたと考えればいいのではないでしょうか。

おいしさだけではなく、言い方を変えると安全性を求めるトレーサビリティ、そしてフェアトレード、エシカルなど新しい価値観ともリンクしているでしょう。またサブプライム・リーマンショック以降のインディペンデントへの流れの象徴的な捉え方として、あたらしいコーヒーショップが位置づけられているようです。


※『ヒップな生活革命』では、ブルックリンのインディペンデントコーヒーショップやポートランドなどアメリカ各地で起こっている変化が紹介されています。
※『2035年の世界』では、サードウェーブのフェアトレード志向や脱チェーンの動きが紹介されています。




ギーク向けから火をつけたブルーボトルコーヒー日本上陸


昨年の6月、WIREDのVol.12号は『コーヒーとチョコレート』という特集でした。私はこの雑誌で初めてブルーボトルコーヒーのことを知りました。表紙は創業者です。

 

たぶん“コーヒー界のアップル”という言い方は、WIREDが最初だと思います。読んでいてどこがアップルなんだろうと思いながらも、TwitterやInstagram、WordPressの創業者などテック業界の大物たちから巨額出資を集めていることに驚きましたし、コーヒー業界に様々なイノベーションが起こっていることも新鮮でした。

WIREDは未来のトレンドを標榜している雑誌ですが、コーヒー業界を取り上げるなら、こういう切り口になるだろうなと思える内容でしたので、さほど違和感はありません。ただその後の展開を見ていると、密接な関係にあるようです。
ブルーボトルコーヒー石渡康嗣 × WIRED編集部が語る「いかにして”コーヒー界のアップル”は生まれたか」というトークイベントを開催したり、Vol.12のブルーボトルコーヒー部分がウェブで公開されています。もしかするとFacebookのファンページも、WIREDが運用しているのかもしれません。

ともあれ、日本におけるブルーボトルコーヒーの話題はここから始まり、方向付けられました。
他では、週刊アスキーPLUSが何度も取り上げていますし、テレビ東京「ガイヤの夜明け」やYahoo!ニュース、BLOGSなどでも扱われています。そうなるとITやウェブ業界、テック好きからビジネスパーソン向けトレンドの印象になりますね。
週刊アスキーPLUSのあたらしい記事では、日本での“コーヒー界のアップル”評に対して、地元オークランドでは聞かない評価だと書いています。



ファッションメディア中心のパブリシティを仕掛けたゴリラコーヒー


私自身はブルーボトルコーヒーに行ったことはありません。わざわざブルーボトルコーヒーのために清澄白河まで行こうなんて、考えもしません。でもゴリラコーヒーは工事中から頻繁に見ていましたし、プレオープンしているときに入ってみました。
ブルーボトルコーヒーはいかにもテック業界の人たちが好みそうな、シンプルな造りです。内装などもアップルではなくGoogleと言っても、なるほどなとなりそうです。でもゴリラコーヒーは何から何まで強烈。工事が始まる前、coming soonというポスターだけがベタベタと貼り出されたときから、いったい何ができるんだと目を引きました。
工事中もまったく外を隠すことなく、開けっぴろげです。

画像:工事中のゴリラコーヒー

電飾が取り付けられている様子も、アメリカのスタッフがやってきてトレーニングしている様子も、通行人にぜんぶ見せています。カッコイイ良かったですし、気になって仕方がありません(笑)
ソーシャルメディアでも投稿する人が出てきます。ツイッターでは、10月14日に写真付きで投稿する人が出てきました。

プレオープン前からネットメディアでは、ファッション系を中心にグルメサイトでも取り上げられました。ファッション系は大手ポータルサイトをはじめ、ELLEやSPURなどのツイッターアカウントも積極的に投稿していましたので、雑誌でも取り上げられていたのではないでしょうか。このあたりはベイクルーズならではだなぁと見ていました。
またグルメサイトも大手だけではなく、スイーツ系サイトでも扱っていました。その発信頻度からすると、完全にプロモーションだと思われます。


両店とも、アプローチする方法も対象もかなり違いますね。その結果どうなったでしょうか。



ゴリラコーヒーは女性客が圧倒的


私が行ったのは1月14日。たまたま通りがかって、プレオープン中に入りました。Google+に投稿しています。
画像:ゴリラコーヒーに関するG+の投稿

どうして女子高校生だと思ったかというと、2階はほぼ満員で私以外は女性ばかり。しかもその多くが勉強していたのです。1階席はというと、ベビーカーのママが大勢。年齢層だと10代20代の女性ばかりだと言っていいでしょう。
私の投稿を見た知り合いから「行ってみたいんだよね」と言われましたが、「おっさんだけで行くのは、やめた方がいい」とアドバイスしておきました。かなり辛いです(笑)

オープン後の現在ではカップルや若い男性も多くなって来ているようですが、Twitterで検索すると、注文したメニュー写真が多く、また自撮りを含めた投稿もあり、キャピキャピしているので、やはり主流は若い女性だと思われます。
またゴリラということで遊んだ投稿も見かけられます。織田信成さんもツイートしています。

入って感心したのは、とにかくイメージ作りが徹底しています。2階は窓際がぐるっと黒いカウンター席になっているのですが、コンセントまで赤。ネーミングやロゴ、内装まで含めて、クリエイティブへの強いこだわりを感じます。



ブルーボトルコーヒーは、行列や待ち時間に関する投稿が圧倒的


Twitterでは、オープン当初はコーヒーやドリップしているところなどの写真もありますが、それよりも外観を含めた行列を撮影した投稿が多いように見受けられました。
東京旅行ガイドのTime Out Tokyoがツイートしていました。


近くに他の目的で行った人や近くに住んでいる人たちも、行列の写真を投稿しています。その他ではまだ行っていない人たちが、ビジネス系やテック系のサイトに掲載された記事をツイートしています。
日経新聞では「若者が並んだ」と書かれていますが、Time Out Tokyoの写真などを見る限りでは、それほど若そうには見えません。

行っていない人たちはネガティブな意見も多く、そのことも相まってブルーボトルコーヒーの話題性を高めているようです。



リーチしている層がハッキリしていることのメリット・デメリット


日経トレンディが選ぶ2013年ヒット商品では、コンビニコーヒーが1位でした。また最近ではセブンイレブンがドーナッツの販売をはじめ、話題になったばかり。
そんな中、アメリカ発の新しいコーヒーショップがどう展開するのでしょう。


ブルーボトルコーヒーは何といっても、まず値段が高い。ブレンド450円、シングルオリジン550円ですから、おいしいコーヒーという以外にどんなユーザー体験があるのでしょう。“コーヒー界のアップル”がキャッチコピーになると、そこが求められます。
“スタバはもう古い”というポジションも、価格差以上の価値を持てるでしょうか。
価格比較をしているブロガーの方がいらっしゃいました。
清澄白河「ブルーボトルコーヒー」メニューと価格比較★

このブログによると、スターバックスやタリーズの約4割増の値段。これまではビジネスパーソン向けのアプローチが主ですが、オフィス街で日常的にリピートされる価格帯ではなく、観光地的な利用のされ方になるのではないでしょうか。
清澄白河のあとが青山、代官山への出店になるのも、うなづけます。



ゴリラコーヒーは、コーヒーが270円からですので、近くにあるドトール系のエクセルシオールカフェより安い。正直、驚きました。たぶん主力のコーヒーではなく、フード、そしてコーヒー関連グッズやアパレルで採算性を高める戦略ではないでしょうか。
となれば若い女性中心の訴求は、適切だと思えます。

強烈なイメージ付けは、ある種テーマパークの中のコーヒーショップのようなもの。家賃からしても、成り立つ街は少なそうです。また朝7時半からという営業時間を考えると、周辺で仕事をしている人たちにも訴求しておかないと。もしかすると渋谷店で大きく成功すれば、ファッションビルなどでスタンド形式の営業展開があるのかもしれません。





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