2013年5月24日金曜日

行列までして、買ってくれる理由 -2

きのう朝、とんでもない行列を目撃した。渋谷のBEAMSを取り囲むようにして、行列が公園通りまで続いてる。見える範囲でざっくり想像すると、300人ぐらいは並んでるみたい。
遠目で並んでる人たちを見て、私は韓流スターの何かがあるの?と思った。その理由は、女性ばかりなのと年齢層。

会社でその行列の話をしていたら、ファッションを見ると年齢層はもっと若いですよという意見があって、私はそうかなぁと。着てるものじゃなくて集団なら姿勢で、だいたいの年齢層ってわかると思っている。そんなこと言ったら並んでた人たちに怒られそうですけど(笑) 20代でも姿勢はたいがい悪いけど、姿勢の善し悪しじゃなくて、特に女の人は20代後半からでも腹筋や背筋の衰えが顕著に出ているような気がする。

それに神南のこのエリアで、女性が並ぶというのは、セレクトショップ系ではちょっと考えられない。たいがいは若い男性が多いですから。




それで検索してみたら、BEAMSの横にある細長いビルは今年オープンしたばかりのチャン・グンソクさんの「Collecte De ZIKZIN」。チャン・グンソクさんの所有ではなく、プロデュースなのかどうかも、いまいちわからない。ただ、サイトの情報からわかるのは、“チャン・グンソクの「Jyo Zikzin!!!」(韓国語意味:直進)”ということだけ。座右の銘的なフレーズを、ブランド名に使ってる?
1階はセレクトショップ、2階はCAFE&DINING、3階はネイルサロン。
collecte de zikzin


だけど調べてみると、けっこうショックを受けちゃって。ソーシャルメディアでの発信も、必要な情報プラスαぐらいで、そんなに大してやられていないようです。つまりは、煽っていない。それなのに、これだけ行列して並んでくれる? 
下の写真は、左が23日の昼、右が24日の朝。これぐらいのプロモーションで、連日何百人単位で並んでくれるなんて、脅威です。


ZIKZINの行列













整理券を配っていて、もらった人しか入店できない。もらっても、その人たちが順番待ちで炎天下に並んでいるということなんでしょうね。


ZIKZINのTwitterアカウントのフォロワー数は、13000人強。うちが運営をやらせていただいているTwitterアカウントでも、ちょうどこれぐらいのフォロワー数ですし、イベントの時には並んでもらうことを、とりあえずは直接的な目標としています。
だけど、ここまでの人数はムリですし、炎天下に何時間も待ち続けてくれるなんて、想像もできません。

ZIKZIN ツイッター画面
@collecte_zikzin

これを見るかぎり、プレゼントするのはiPhoneのホームボタンに貼るアクセサリーのようです。しかもZの文字だけ。これって、ファンの間でしか伝わらない記号。いや、ファンなら誰でもわかる? 少なくとも、ファン以外の人には、さっぱりわからないですよね。
普通は、もうちょっとキャラクター的になっていると思うんですが。
そこが、ZIKZINの巧妙な戦略だと思うのです。わかる人にしかアピールしない記号。つまり、かなりオトナっぽい。既婚の女性がこのアクセサリーやグッズを持っていたところで、ご主人にもわからない。職場で使っていても、「ダサっ」とは思われない。

CAFE&DININGにしても、韓国料理とイタリアンの融合というだけで、チャン・グンソクさんと特に関係はなさそうです。写真を見ると、めちゃくちゃオシャレ。盛りつけもですけど、ちょっと渋谷にはなさそうな、ワンランク上のオシャレさ。表参道の創作レストランという感じです。

ネイルサロンも写真を見る限り、チャン・グンソクさんのポスターや衣装がディスプレイされているわけでもありません。

1階のショップは、何度何度も前を通っていますので、自然に目に入っています。高級っぽいセレクトショップなんだろうなとしか思いませんでした。名前すら、出てないんですから。

Collecte De ZIKZIN 1階

Collecte De ZIKZIN 入口



今回の行列は、21日から始まっているようです。その内容は、ニューアルバムの発売や武道館ライブに連動してのiPhoneアクセサリーのプレゼント、記念の限定メニューが出るということぐらいのようです。
扱う商品は、ライフスタイル全般。その拡大方法は、BEAMSなどアパレルのセレクトショップのようです。だけど、BEAMSやジャーナルスタンダードが同じようなプロモーションをしたとしても、これだけの行列はできないと思います。ここまで強力なインバウンドマーケティングは、なかなかないでしょう。


ここでしか、今しか買えないアイテムを買ったり、今だけのメニューを食べる。そのために整理券をゲットして炎天下に並ぶ。しかも武道館にも行き、CDを買うというフルコースの人も多いでしょう。ファン以外からするとまるで苦行のような行動が、ファンの世界ではヒエラルキーを構成していることでしょう。
iPhoneのアクセサリーを貼れば、ファンの間では、まるで水戸黄門の印籠のような扱いになるのかもしれません。今日の夜は閉店後に前を通ったのですが、店の外でスマホをいじっているファンらしき人たちがいました。すでにSNSでは発信済みでしょうし、行ったファン、行けなかったファンともやりとりして盛り上がっているはずです。




広告くさい広告が売れず、マネタイズへの気合いが臭ってくるような方法論に対するアンチテーゼのようにして登場した『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』という本が、昨年話題になりました。本に書いてあること自体は、とりたてて新しいことではなく、たぶんグレイトフル・デッドというバンドが、経営的なエキスパートを近寄らせず、ファンに喜んでもらうんだと気持ちを優先させただけだと思います。それがネットの時代になって、『フリー』や『シェア』的な情報が流通する仕組みにマッチしてきたということでしょう。周囲にグレイトフル・デッドのファンがいないのでわかりませんけど、ヒッピーカルチャーから出てきたバンドだから、ファンだって憧れというよりも、ライブという場をゆるく楽しみたいだけでしょう。
ただ、新しく登場したバンドがグレイトフル・デッドに学んだとして、コアなファンの獲得はできても、存続していけるかどうか。グレイトフル・デッドは、音源はそんなに売れないのに、興行収入では常に1〜3位に位置するそうです。




ZIKZINの方法論は、ファンにとって、ファンであることの価値を最大化してくれるような仕掛けなんだという気がします。何を聴く、何を食べる、何を着る、何を持つ、どんなコミュニティに属する、どんな感情や情報を共有する。それらのすべてが、ちょっと上質に用意されているという気がします。しかも疑似恋愛気分も味わえる。
年齢とともに目新しいものは、どんどんなくなってきますし、新しいコトや商品の選択の基準がわからなくなる。たぶんチャン・グンソクファンになるということは、プチ上質な世界を知ることができるというのと、ほぼイコール。一緒に何かを作り上げながらコアなファンを育成するファン・マーケティングでもなく、キャラクタービジネスでもなく、世界感を共有させるマーケティング。
ものすごく上手だと思います。






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