重い重いプレスリリースがやってきた
少し前、ある企業からPDFになったプレスリリースがメールで送られて来た。届いたときから嫌な予感はしていたのだけれど、開いてみて絶句した。
とにかくデータが重い。すぐ気がついたのは、フォントが埋め込まれてる。商品写真ばかりか、まるで商品写真ように撮ったノベルティなどまで、とにかく写真が多いのです。
その企業の上の方の方とあったときに「プレスリリースは、どちらでお作りなんですか」と聞いてしまった。
内容がどうこう以前に、PDFの機能をほとんど知らないんだろうな感にあふれた書類だったので、素人がやっているんだろうなと思い込んでいた。ところが、素人ではなかった。
「どこか、いけませんか?」と問い返されたので、いやその、これは全部間違っていると思いますと正直に答えてしまいました。
プレスリリースは、誰に向けて出すものなのか?
プレスリリース、ニュースリリースと言うぐらいだから、報道してもらうためのもの。辞書的な言葉の定義はそうなるだろうけれども、報道機関に向けて書いてそれほどの意味があるでしょうか?
100歩譲って、報道機関やマスメディアに向けて書くとしても、あらゆる情報を網羅して、それを誰が読むでしょう。網羅したければ、ウェブサイトに掲載すればいいわけで、記者や書き手に興味を持ってもらわなければ、なにも始まらない。スペックなど事実項目は必要だけれども、あとは要点が簡潔にまとまっている方がいい。と思うのです。記者や編集者、ディレクターだって、それほどヒマではありません。
どれだけのメディアに出せるか、数や大きさに注力しても
PR専門の会社は、プレスリリースに限らず、取り上げてもらうための様々なアプローチを、出来るだけ多くのメディアにしようとするかもしれません。
でもそこを頑張るなら、メディアに媒体料を払ってペイドパブにすればいいのです。
そうではなく、純粋にメディアの切り口で取材してもらって取り上げて欲しいと考えるなら、リリースする商品やサービスに合うメディアを選んでアプローチした方がいいのではないでしょうか。
多くの場合、専門会社はマスメディアとのパイプを誇っていたりします。1時間のテレビ番組になったり、石原さとみさんがブランドの服を着てくれるなら別ですが、多くの場合情報バラエティ番組などで取り上げられるだけ。
認知度的にはプラスでも、誰がどういう状況で見ているかを考えないと、意味のないケースだって少なくありません。
下のグラフは総務省 平成26年版 情報通信白書[主なメディアの利用時間と行為者率]から抜粋して、簡略化しグラフ化したものです。平日の数字だけですが、休日も割合はそれほど変わりません。
当たり前のことですが、誰でも接しているメディアが存在しないのですから、誰に向けて出している商品なのかをより細かく考えている必要があります。メディアの側も、当然そこに向けてコンテンツを作っているわけですから。
またネットのコンテンツはバズる可能性もあります。話題のリーチは、利用時間だけでは想定できません。
ネット上でプレスリリースを公開する意味は、どこに
上に書いたことは常識だと思いますが、ネット上でプレスリリースを公開する場合はどうでしょうか。自社のウェブサイトで公開するほか、リリースを配信するプラットフォームも増えてきています。
公開されているものをざっと見て行っても、ほぼ紙のものを、そのままネット上に上げているところばかりなので驚きます。業界向けに発信しておきたいということなのでしょうか。BtoBなら、それもあるかもしれません。
オープンなネット上で公開するということは、ネットメディア以外とは逆に、誰でも見るということです。従来のコンサバティブなメディアも、面白系やバイラルメディアだって見るかもしれません。
もちろん一般の人たちだって辿り着く可能性は、高いのです。
配信するプラットフォームだってSNSで発信することで、アクセス数を増やそうとしています。一般の人がわざわざ辿り着く場合は、その商品やサービスが何かしら気になっているからアクセスしているはずです。
最大の間違いは、記載するURL
先週、たまたまTwitterを見ていたら、郊外型紳士服チェーン店を核としたアパレル企業が、アディダスと組んだストレッチ素材のスーツをZOZOタウン限定で発売開始という告知を見ました。私は画期的な商品に思える。どんなのか知りたい。良ければ買いたいと思い、プレスリリースに書いてあるURLからZOZOタウンにアクセスしました。
するとその企業のタイムセール商品が、ずらっと出ています。あ、これはブランドページだ。じゃあさらに絞り込んで、とやっと辿り着きました。
同様にあるアンダーウェアメーカーが、部屋着で、そのまま外へ着ていけるマルチユースウェアを発売したことを知りました。これも画期的に思えました。若者を中心にパジャマが売れなくなり、特に街着としてのジャージがラグジュアリーブランドからもユニクロからも発売されるようになって、内と外との区別がなくなっているように感じます。
プレスリリースのURLをクリックすると、その企業のECサイトが現れました。下着がずらっと並び、さまざまなキャンペーンバナーが並んでいます。マルチユースのウェアを探してずーっとスクロールしていくと、ほぼ一番下にバナーがありました。クリックすると、商品一覧ページが出てきました。
しかし、そこにはプレスリリースにあるイメージ写真に写る商品がないのです。あるのは、なんの変哲もないジャージやTシャツにしか見えない商品…
興味を持った、買いたいと思った人が、そのプレスリリースから飛んだ先が、直接的なページでなくていいでしょうか。飛んで、そのあともいろいろ探してくれるのは、よほど熱心な人だけです。以前からのファンなら、そうするかもしれません。
メディアは、どうでしょうか。強い関心ではなく「もしかしたら面白いかもしれない。ニュースバリューがあるかもしれない」と感じたぐらいで、さらに積極的に情報を探してくれるほど、社会的な意味で魅力のある商品でしょうか。
BtoC企業でも、記載するURLを、まるでIRのように考えているのかもしれません。
ソーシャルメディアマーケティングとして、イメージ写真との乖離はどうなのか
ネット上でイメージ写真に写っている商品が、発売されていないのは論外です。発売予定なら、それを明記すべきです。がっかりさせるだけではなく、反感を買いかねません。
そんな大げさな?
現実に販売されているハンバーガーが、広告写真とこんなに違う。貧弱だと晒されるのは、SNSの年中行事です。年中行事だから、もう炎上しないだけです。
食以外でも、それは同じ。SNSでウソだという意見が大勢を占めれば、どんなジャンルだってダメージは少なくありません。石原さとみさんがドラマで着た服が、すぐに売れてしまいます。錦織圭選手は、試合の休憩中ウイダーインゼリーを食べていますし、ユニクロのウェアを着ています。それらはウソではないし、現実に買うことのできる商品です。乖離していません。
ウソかどうかの判定は、法的にどうかではなく、あくまで社会通念上が基準。しかもその社会通念はSNS上のものですから、変わって行くスピードも早いのです。
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